少年期[754]倒した後の問題

「盗賊団というのは本当にどこにでもいるのだな」


新たに盗賊団を見つければ、即座にアジトに突入してフルボッコ。


偶々外に出ていた数人を逃してしまうことはあるが、大抵はゲイルたちに全員潰されている。


(数は多いのだから、もう少し頭を使って戦えば良いのだが……いや、そんなことを考えられるのであれば、盗賊などにはならないか)


ごもっともな感想だった。

普段はアジトにいる盗賊たちを全滅させ、溜め込んでいるお宝を回収すれば、また直ぐに別の盗賊団を探し始める。


それが今回の流れだが、ゲイルは死体を地面に埋めた後……小さくため息を吐きながら、盗賊たちが集まっていた場所とは違う場所に向かった。


「……やはりいたか」


気配感知で多数の気配を感じ取ったところ、盗賊たちとは違う気配を感じた。

最初はそれを無視して盗賊の殲滅を優先し、結果的にロングソード一般で盗賊たちを斬り捨てた。


ただ、今回は盗賊たちを倒し終えた後にやらなければいけないことが残っている。


『すまない。盗賊は倒し終えたが、少し仕事が残っている』


『分かりました。こちらは任せてください』


『助かる』


ゲイルたちは盗賊潰しとゼルートたちの護衛を交代で行っている。

だが、状況が状況だけにゲイルは直ぐに後退することが出来なかった。


その理由が……ゲイルの目の前にあった。


「「「「ヒっ!!??」」」」


(……これが普通の反応なのだろうな)


ゲイルは盗賊が溜め込んでいた物を回収した後、盗賊たちに囚われている者たちの元に向かった。


囚われていた者たちは皆女性。

女性たちにとって盗賊は勿論怖い存在だが、魔物も怖い存在に変わりない。


「落ち着いてくれ。私は……そうだな、知性のあるリザードマン、と言っておこう」


自分で言っておいて若干恥ずかしいところがあるが、それ以外の表現が出来なかった。


「ひ、人の言葉を……リザードマン、が」


「そうだ、私は人の言葉を喋ることが出来るリザードマンだ。その認識で十分だ……それと、このアジトにいる盗賊は全て私が倒した」


「えっ!!!! そ、それは……本当、ですか」


「あぁ、勿論だ。もう、奴らの存在に怯える必要はない。奴らは既に地面に埋めている」


ゲイルがもう怖がる存在はいないと伝えると、女性と子供たちは一斉に泣き出した。


「ッ……」


突然泣き出す女性と子供たちをどうすれば良いか分からない。

分からないが、下手な事を言う場面ではないと思い、泣き止むまで待つことにした。


そして五分後、ようやく泣き声と涙が止まった。


「あ、あの……すいませんでした」


「うむ、君達が謝る必要はない。そうだな……まずは食事を取るべきだな」


囚われていた者たちが全員やせ細っている訳ではないが、それでも見るからに体力が落ちているが分かり、ゼルートお手製のマジックバッグから食材を取り出して、手際良く料理を作っていく。


「「「「「…………」」」」」


女性と子供たちはその手際の良さに圧倒されていた。

そもそも魔物が……リザードマンが人の言葉を話すことにさえ、十分驚かされた。


だが、それ以上に驚かされる内容が目の前で行われてる。


(ま、魔物って料理出来たのかしら?)


(夢じゃ……ないのよね)


(す、凄い!!!)


あまりにも驚き過ぎて、ゲイルの料理が終わるまで誰一人として言葉を発することが出来なかった。


「さぁ、ゆっくり食べてくれ。あまりがっつり食べると胃が驚くかもしれない」


「は、はい! ありがとうございます」


餓死寸前という訳ではないが、それでもゲイルが作った料理を目の前にすれば嫌でもお腹が空いてしまう。

少し多めに用意された料理はあっさりと平らげられた。


(よっぽど腹が空いていたようだな……腹は膨れても、直ぐに動けないだろうな)


ゲイルとしてはなるべく早くここから近い村か街に女性たちを送りたいが、今の女性たちには森を軽快に走る体力はない。

ある程度動けるようになるまで、一時間ほど休息の時間を取ることにした。

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