少年期[753]無理矢理片っ端から

「てかよぉ……なんであの従魔たちがいないんだ?」


ガンツはゼルートたちと合流してから約一時間後、ようやくゼルートの傍にゲイルたちがいないことに気が付いた。


「あぁ、ゲイルたちか。なんか、俺らを襲おうとした盗賊たちをぶっ潰して、更にそのアジトを潰した時に、どうやら盗賊たちが今回の戦争が起こる日を把握してたらしいんだよ」


「……なるほどな。盗賊には盗賊の情報網があるし、知っててもおかしくないか」


ゼルートがぶっ飛んでいるなら、付き従う従魔がぶっ飛んでいるのも当然だと思っているので、従魔たちが独断で盗賊を潰し、アジトまで潰したことに関しては特に驚かない。


盗賊が戦争開始の日時を知っている事に関しても、ある程度納得出来る。


「だから、ゲイルたちは俺たちがバレアール平原に着くまで、盗賊団のアジトを出来るだけ潰し回ってるんだよ」


「そ、そうなのか……いや、結構それは大変というか無茶というか……さすがにゼルートの従魔たちでも厳しいんじゃないか?」


戦力としては申し分ないのは分かっている。

だが、盗賊団は一つの国にそれなりの数が存在しているが、それでも何の情報もなしに見つけるのは非常に難しい。


(多分、事前にどの辺りに噂の盗賊団がいるとか、そんな情報一切集めてないよな。そういう情報を集める様には思えないし)


ガンツの考えている通り、ゼルートは道中で襲ってくるかもしれない盗賊の情報などを調べることはない。

自分たちを襲ってきたのであれば、返り討ちにして闇魔法でアジトの場所を吐かせる。


そしてアジトへと向かい、盗賊たちを全滅。

アジトの場所を吐いたら生かしてやると伝えた下っ端も、勿論潰す。


「基本的に俺たちの護衛? を交代しながら行ってるから、全ての盗賊団を潰したりは出来ないだろうな。でも、今は完全に俺たちより速いスピードで動き回ってるから、無理じゃないと思うぞ」


バルスたちと合流したゼルートたちは簡易トラックから降りて、予定通り歩きながらバレアール平原へと向かっている。


「そりゃ並の冒険者より圧倒的に早く動けると思うけどよ、それでもそう簡単に盗賊団のアジトを見つけるなんて無理じゃないか?」


「ん~~~~~~……いや、いけると思うぞ。気配感知で最大範囲を一瞬だけ調べて、また直ぐに移動。そしてもう一度気配感知で最大範囲を調べる。これを繰り返していけば、一か所に固まってる奴らを見つけられるだろ」


「あ、あぁ~~~……う、うん。そう、かもしれないな」


ゼルートが言いたい事は分かる。

言葉の内容もある程度は理解出来るが……それが実行出来るのであれば、ますますゼルートの従魔もぶっ飛んでると思ってしまう。


(気配感知を最大範囲に広げて調べるって言うけど、多分俺たちとは比べ物にならない範囲を調べられるんだろうな……だとしたら、そんな無茶な方法で片っ端から盗賊団のアジトを調べて潰すことも出来るな)


ゲイルたちは丸一日動き続けても問題無いスタミナがあるので、タイムリミットが来るまでずっと盗賊狩りを行える。


腹が減れば近くにいるモンスターを狩り、焼いて調味料を振りかけて食べているので、腹が減って動けなくなる心配もない。


「ったく。そんなぶっ飛んでる話を聞くと、ゼルートの従魔たちがいるだけで戦争に勝てるんじゃないかって思えてくるな」


「いや~~、それはさすがに無理じゃないか? 皆強いとは思うけど、向こうだってそれなりに戦力を用意して来るから……ゲイルたちだけだとちょっとな」


「でもよ、ゼルートの従魔たちはAランクの魔物より上って話を聞いたことがあるぜ。Bランクのゴブリンキングを一人で倒しちまうんだし、結構マジだろ」


「それはマジだと思うぞ。まぁ……並みの冒険者や兵士だったら、紙切れみたいにボロカスにやられるのは間違いないな」


ただ、ゼルートたちの狙いは紙きれを狙うことではないので、あっさりと戦争が終わるか否か……その時にならなければ分からない。

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