少年期[751]そうはさせない
「ふむ、予想していたよりも強い実力を持っていたな」
ゼルートたちを襲撃しようとしていた盗賊を逆に襲撃。
そして軽い拷問をしてアジトの場所を聞き出し、生かすことなく斬殺。
ダッシュで聞きだしたアジトの元へ向かい、ゲイルは一人で何十人といる盗賊団を潰した。
(やはり盗賊団の中にもそれなりに強い者はいるのだな……その力をもっと考えて活かせばいいものを)
ゲイルは斬り殺した死体を見下ろしながら盗賊たちの愚かさを嘆くが、もう彼らはあの世に逝った。
疫病の原因などにならないよう、直ぐに地面に穴を掘って死体を埋めていく。
だが、作業中のゲイルの頭の中には盗賊が吐いたとある言葉がずっと残り続けていた。
「くそ、せっかくのチャンスだってのに、こんな化け物が遅いに来るなんてツイてねぇな!!!!」
いったい何がチャンスだったのか。
数秒ほど考えると、直ぐにその理由が頭の中に浮かんだ。
(そうか、そういうことか!!!! なるほど、確かに盗賊たちからすればチャンスといえる状況かもしれないな)
ゲイルは急いで自分と同じ従魔たちに念話を繋いだ。
『こちらゲイル、聞こえるか』
『えぇ、聞こえていますよ』
『聞こえてるよ!!!』
『あぁ、聞こえているぞ』
全員走りながら、もしくはモンスターと戦いながらゲイルの念話に応答した。
『今盗賊たちを討伐したのだが、盗賊たちに今回起こる戦争の日程がバレている可能性が高い』
『……盗賊たちにも情報網があると考えれば、バレていても不思議ではありませんね』
基本的に街中に入ることは出来ない盗賊たちだが、独自のルートで世間の情報を得ることは決して不可能ではない。
『えっと……つまり、どういうこと?』
『盗賊たちはこの機会を狙って、村や街を大胆に襲おうと考えている……そういうことか、ゲイル?』
『私の予想が正しければ、その可能性が高い。比較的レベルが低い盗賊団であっても、戦力が抜かれた村ぐらいは滅ぼせるだろう』
冒険者ギルドなどない村であっても、実力者がゼロというわけではない。
戦争が起こる際には、少しでも勝つために……戦果を挙げる為に戦力を補充したいと考えるのが常識。
よっぽど領主が暴君でなければ、その要請を断ることも出来るが……普通に考えれば、要請を断ったあとが怖い。
もしかしたら、万が一という可能性を考えてよっぽどの事情がない限りは、村の数少ない実力者は今回の戦争に参加する事になる。
『ふむ……それは確かによろしくないな』
道中、ガレンが治める領地を狙える距離にアジトを構えている盗賊団は全滅に成功したが、まだまだ他の地域では盗賊団が多く残っている。
『私としては、この機会を利用して派手に動こうとする盗賊たちを出来る限り潰しておきたいと思うのだが……三人はどう思う』
『戦争が行われる場所にゼルート様たちが着くまでの間であれば、盗賊狩りを楽しんでも良いかと思いますよ』
ラルにとって、いかに残虐な性格をしている盗賊たちであっても、所詮は狩りの対象。
絶対に立場が揺らぐことがない対象を相手に、狩りを行うのも悪い気分ではない。
『ん~~~~……盗賊団で悪い奴らだし、潰した方が良いって考えは賛成かな。うん!! 僕頑張るよ!!!』
盗賊を狩るのは正しい行い。
そう思っているラームにとって、ゲイルの提案を断る選択肢はない。
『俺もその案には賛成だ。だが、先にゼルートに相談しておいた方が良いのではないか』
戦力が薄くなっている機会を狙おうとしている盗賊を逆に狩るという行動は決して悪くない。
だが、ゲイルたちは現在戦争が行われる平原へと向かう最中。
ゼルートたちにモンスターや盗賊との戦闘で無駄な体力を消費させる訳にもいかない。
という訳で、まずは念話でゼルートに余裕がある内に盗賊どもを出来る限り潰しても良いか相談。
そしてゼルートがそんな素晴らしい提案を断るわけがなく、交代制でゲイル達はチャンスを狙う盗賊たちを逆に潰し続けた。
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