少年期[750]並走しながら討伐
そして遂に出発の日がやって来た。
ガレンたちと一緒に戦争が行われる平原、バレアールに向かう。
「……ゼルート、お前たちは普段からこうやって移動してるのか?」
「普段からという訳ではありませんよ。ただ、今回はなるべく戦争まで体力を残しておいた方が良いと思ったので」
現在、ガレンたちはゼルートがサンドクリエイトで生み出した簡易トラックに乗って移動中。
当たり前だが一つのトラックだけでは全員を移動させることが出来ないので、何台ものトラックを遠隔操作で動かしている。
「す、すげぇなこれ」
「おいおい、土魔法ってこんなこと出来たのか??」
「ふ、不可能じゃないと思うけど、相当な技術力と魔力量がなければ無理よ」
今回の戦争にはガレンが治める領地に滞在している冒険者達も参加する。
戦争に参加した冒険者たちもガレンたち同様に、馬車を使わずに移動する方法に心底驚かされていた。
体を動かすべき時まで、休ませておくのは非常に重要。
街から街へ移動することが多い冒険者たちにとって、ゼルートの移動方法は是非とも覚えたいところ。
(この簡易トラック?? というのを生み出すことは出来るかもしれないが、長時間移動しても崩れず……いや、やはりそもそも長時間移動できるかが怪しいな)
簡易トラックの操作方法をミスしないのも大事だが、そもそも長時間移動し続けられるのか。
そして途中でモンスターや盗賊と遭遇した時に、反撃する余力が残っているのか。
魔法使いは敵と戦う上で、非常に重要な戦力。
いざ戦わなければいけない時に、戦う力が残っていないとなれば本末転倒だった。
「これがあるから馬車は必要ないと言ったんだな」
「確かにこれがあれば馬車は必要なさそうね。流石ゼルートだわ!!!」
「……母さん、恥ずかしいんで他の人がいる前で抱き着かないでください」
大勢の人がいる前で母親に抱き着かれる。
精神年齢的に「さっさと離れろよババァ!!!」といった感じで反応することはないが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「えぇ~~~、良いじゃない。本当にゼルートは凄いんだから!」
「褒めてくれるのは嬉しいですけど、それとこれとはまた別です」
「はっはっは!! レミア、ゼルートもこう言ってるんだから一旦離してやれ」
「は~~~~い……それにしても、街を出発してからあまりモンスターが襲ってこないわね」
朝から出発してまだ昼休憩前なので、偶々魔物と遭遇していないだけかもしれない。
だが、あまりにも魔物の気配を感じない。
(いや、一瞬ではあるが近くに寄ってきてはいるんだよな……もしかして、そういうことなのか?)
ガレンは自分の予想が合っているのか、ゼルートに尋ねた。
「なぁ、ゼルート。もしかしてブラッソたちが傍にいないのは寄って来る魔物を事前に倒してるからか?」
「はい、そうです。この人数なら魔物が襲い掛かってきても大丈夫だと思いますけど、それでも無駄な戦闘を避けることに越したことはないと思って」
決してゲイルやブラッソたちが積極的に体を動かしたいといった理由から、ゼルートたちを襲うとする者たちを狩っているわけではない。
(ブラッソたちが俺たちに接近する前にモンスターを狩ってくれているなら、本当に俺たちが敵と戦うのは戦争が始まってからになりそうだな)
ブラッソとは何度も模擬戦を行っており、その実力の高さは身に染みて分かっている。
ゲイルたちおの強さも重々承知しているので、一切心配していない。
ただ、このままブラッソたちに全てを任せていれば、戦争が始まるまでに殆ど体を動かさないという状況になってしまうので、昼飯や夕食を食べた後には必ず全員体を動かすことを決定。
「……ゼルート、何やら悲鳴が聞こえて気がしたんだが」
昼食を食べ終えて体を動かし終えた後、再び簡易トラックに乗って出発。
すると数十分後にはモンスターの悲鳴ではなく、人の悲鳴がガレンの耳に入った。
「多分、ゲイルたちが盗賊と遭遇したんだと思います。もしかしたら、そのままアジトを潰すかもしれませんね」
その辺りの裁量はゲイルたちに任せているので、ゼルートは盗賊たちのアジトがどうなるかまでは知らなかった。
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