少年期[749]同じ道を辿る?

ゼルートは実家に帰ってきてから戦争に出発するまで、殆どの時間をアレナたちや騎士たちとの戦闘訓練に時間を費やしていた。


偶にセラスと遊ばなければ泣かれてしまうので、戦闘訓練以外のことも行う……が、セラスもゼルートたちが行っている訓練に興味津々なので、結局遊びといっても内容としては魔力を使った訓練だった。


(レイリア姉さんも子供の頃から少しやんちゃというか、戦いに興味を持ってたけど……完全にレイリア姉さんと同じルートを進みそうだな)


ゼルートにとっては可愛い可愛い妹であることに変わりはない。

だが、将来的にそこら辺の男より断然強くなってしまう可能性を秘めている。


(そういえば、あと四年後になればセラスも俺やレイリア姉さん、クライレット兄さんと同じく王都で行われるパーティーに参加するんだよな)


ゼルートにとってはもう六年ほど前の話であり、今は懐かしい記憶となっている。


パーティーの際に他家の令息と少々揉めてしまい、結果的には一対三で変則的な決闘を行うことになった。

その決闘では相手の攻撃を一度も食らうことなく攻め続け、最後は男の第二の命である金〇に攻撃を当てて終わらせた。


(ふふ、懐かしいな~~~~。父さんや母さんを馬鹿にされたことに関しては頭にきたけど、あんなバカ令息三人を倒すだけでとんでもない財産が手に入ったんだし、美味しい決闘ではあったよな)


まさか自分たちの令息が負けると思っていなかった親たちの絶望した顔を思い出し、小さく噴き出してしまった。


「? どうしたの、ゼル兄様」


「いや、少し思い出し笑いしただけだよ」


「ふ~~~~ん……そんなに面白かったの??」


「まぁ、そうだね…………うん、面白かったと言えば面白かったよ」


両親を馬鹿にされたことに関しては面白くないが、バカ令息たちをボコボコにしたことと、本当に全てを失った令息の暴走を止めなかったバカ当主たちの絶望した顔を見れたことに関しては非常に面白かった。


(冒険者の息子なんだから子供でもある程度強いかもしれない、ってことぐらいは考えられると思うんだけどな……いや、さすがに七歳の子供がそこまで考えるのは無理か。でも当主たちならそこら辺の可能性は予想出来ると思うが……貴族の血統こそが最強!! とでも思ってたのか?)


今となっては知る由もない。


(というか、もしかしなくてもセラスも俺たちと同じ道を通ることになるのか?)


ここでゼルートはその可能性が頭に浮かんだ。

セラスは紛れもなくガレンとレミアの娘。

つまり……冒険者の娘なのだ。


(その可能性は十分ありそうな……でも、戦争で父さんがある程度活躍すれば爵位がワンランク上がるのは確実だよな。それに…………俺は一応がっつり暴れる予定だから、悪獣の件と合わせて不本意ではあるが、爵位を受け取るかもしれない)


ゼルートにとっては心底望んでおらず、不本意だが今までの功績を考えれば爵位を授与されるのは間違いない。


(爵位を貰うにしても騎士ぐらいが有難いんだけどな。騎士の爵位を持ってる冒険者ならちらほらいるらしいし……まぁ、俺がいくらそんなことを考えても決定するのは国お偉いさんたちなんだけどさ)


いくら活躍した本人のゼルートが爵位を受け取りたくないと言っても、国にも面子というものがある。

国を救ったといっても過言ではない活躍をした者には、それなりの褒美を与える。


そうしなければ、後々他方面から色々と言われる可能性があるので、是非ともゼルートにはしっかりと褒美というなの爵位を受け取ってもらわなければならない。


(父さんが男爵になってから子爵になって、俺が男爵になれば……セラスが俺やクライレット兄さん、レイリア姉さんみたいに面倒な連中に絡まれることはないか?)


絡まれる可能性は確かに低くなるかもしれないが……上二人が他家の子供をボコボコにしたにも拘わらず絡まれたゼルートは、やはりその時になってみないと分からないなと心底思った。

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