少年期[728]難無くは難しい

「それはそうと、ホーリーパレスでどんな冒険をしたのか……教えてもらっても良いかしら。勿論、時間がなければまた今度でも良いわ」


シーリアスのような超絶美人にそのようなことを言われて断れる男はそういないが、ゼルートは下でアレナたちを待たせている。


正直なところ、話したいことも話せたので「それではまた今度、時間がある時に」と断っても良いのだが、適度に体を動かす時間があっても良いだろうという判断を下し、淹れてもらった紅茶をもう少し飲みたいという気持ちもあってホーリーパレスでの冒険について話し始めた。


シーリアスはホーリーパレスがいったいどんなダンジョンなのかは知っているが、ゼルートたちがどのように攻略したのかは大変気になる。


「……エボルサーペントを一人で倒すって、やっぱり非常識ね」


「まぁ……色々と出来るんで」


何も経験していない状態でもランクBの力を持つエボルサーペント。

そして激しい戦闘を経験する度に猛烈な勢いで進化する特殊な体質。


モンスターの中でも発見され次第、迅速に始末するべきモンスターと認定されている。

そんな凶悪な体質を持つモンスターが一段階進化したとしても、ゼルートにとっては良い遊び相手。


「そうね。魔法も武器も、体術も一流がそれ以上なのだからSランクまで進化しない限りは……悪獣を一人で倒したあなたなら、そこまで成長したエボルサーペントも一人で倒せそうね」


「ん~~~~~~……そう、かもしれませんね。エボルサーペントは悪獣と違って的が大きいので、スピードで攪乱しながら鋭い一撃を入れればなんとかなるかと」


「……否定しない辺り、本当にやれそうね」


エボルサーペントは進化すれば、当然スピードや筋力、耐久力も上昇する。

ゼルートが持つフロストグレイブやミスリルデフォルロッドであっても、体を切断するのは難しい。


しかしゼルートが過去に国王から貰った武器を使用すれば、一刀で戦いを終わらせることも不可能ではない。


「六十階層のボスを二度も倒したのも驚きだけど、一番はやっぱり……七回戦もあるコロシアムをクリアしたことね」


ゼルートには悪獣をソロで倒す力がある。

それはシーリアスも分かっているが、元冒険者のシーリアスからすればコロシアムの転移トラップに引っ掛かるのは、最悪とも言える状況。


七回戦もあればトップクラスの冒険者たちであってもクリアできず、殺されてしまう可能性が十分にある。


(レッドゴブリン、ブレードラビット、フォレストオークの上位種が四体。ヒポグリフが二体……ここまでなら中堅そうな冒険者でもなんとか出来るけど、そこからが恐ろしいのよね……準備万端な状況であっても、絶対に戦いたくない流れよ)


ヒポグリフ二体を倒し終えると、次は成長したサイクロプスが二体。

サイクロプス自体はCランクの魔物だが、成長すればBランク……魔力だけならばAランクに届く可能性がある。


そして巨人二体を倒し終えれば次は真紅の毛を持つミノタウロスの亜種。

その力はAランクであり、両刃の斧はマジックアイテム。


六十層のボスとしても登場してもおかしくない力を持っているが……ここまでで六回戦。

まだ最後の戦いが残っており、パワー系との連戦が続いた直後に状態異常系の攻撃を得意とするキングヴェノムサーペントを相手しなければならない。


(最悪の組み合わせだわ……もうそこで戦う気力をなくしてもおかしくない。でも……ゼルートはやっぱり嬉々として挑んだのかしら?)


大変な相手だったと口にしていたが、内心ではそう思っているのでは?

なんてシーリアスは思っているが、本人はなんて意地悪な組み合わせなんだと感じていた。


「自慢ではないですけど、ソロであんなトラップに引っ掛かれば自分以外だと生き残るのは難しいかと」


「その通りね。単体でも桁違いの力を持つ人物はいるけど……様々な点を考えて、ゼルートの様に難無くクリアする人物はいなさそうね」


こうして数十分ほどホーリーパレスでの出来事について語り、シーリアスと別れてアレナたちが待っている訓練場へと向かった。


すると、そこには見知った人物がルウナと模擬戦を行っていた。

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