少年期[727]許可は貰った
「まぁ……そうかもしれませんね。以後気を付けます」
「そうしてくれると嬉しいわ」
気を付けようと思ったのは嘘ではない。
だが、ゼルートは個人的にこれから他の冒険者と全く衝突しないのはあり得ないと思っていた。
結果的に自分が勝つと分かっていても挑発されればウザいと感じ、ムカつく。
そして冒険者というのは血の気が多い者が多く、そしてプライドが高い者も多い。
「それで、今日ここに来たのは手紙に書かれていた戦争のことに関してで合ってる?」
「えぇ、その通りです」
ゼルートは少し前にシーリアスに一つの手紙を送っていた。
内容はそこまで機密性があるものではなく、単に参加する組織を変えたいという話だった。
「既に話はバルスにも通してるわ。バルスもその件に関しては納得してる。ただ……開戦直後に放つあれはどうするの?」
「特大魔法に関しては放てるなら放とうと思ってますけど……どうしますか?」
開幕直後にゼルートとラルたちが力を合わせ、軍隊を殲滅させるような攻撃魔法を開戦直後に放とうと、少し前にシーリアスと話し合っていた。
「あなたのお父さん……ガレンたちとは途中でバルスと合流するって話が出てるそうだから、そのままバルスの意見として上に進言することは可能だと思うわ」
「なるほど。それなら大丈夫そうですね」
ガレンは冒険者から男爵に成り上がった猛者だが、それでも爵位は男爵。
政治や戦争の中ではあまり発言権は強くない。
だが、バルスは辺境伯ということもあり、上の爵位を持つ者であっても無視できない力を持っている。
「それと……放つ魔法に関してなんですけど、やっぱり少し抑えた方が良いですか?」
「……それは貴族の馬鹿たちが自分たちの手柄がどうたらこうたらと騒がないように、ということで合ってるわよね」
「そういうことですね。この前話した時は俺とゲイル、ラルとラームの力を合わせて魔法で一掃しようかと思ってたんですけど……それだとやっぱり大半の敵を俺たちだけで倒してしまうかもしれないんで、威力をちょっと落として拡散するタイプの魔法にしようかと考えてます」
戦争において、強力な魔法を使うことは決して悪ではない。
しかし使う者の立場によっては、後々面倒なことに巻き込まれる可能性がある。
冒険者になりたての頃と比べて多少丸くなったゼルートは、そんな面倒事を回避するためであれば、開戦直後に放つ魔法を弄ることなど苦ではない。
当初は巨大なドラゴンを模した攻撃魔法で敵を一掃しようと考えていたが、多数のワイバーンを流星群の様にして攻撃しようという風に今のところ考えている。
「そういう感じに変えるのね。敵に大ダメージを与えることに関してはあまり強く否定することは出来ないでしょうし……うん、そういった感じの攻撃なら大丈夫そうね」
開戦直後に放つ特大魔法に関してはこれで大丈夫。
だが、シーリアスの中ではまだ解決していない問題が残っている。
「それじゃあゼルート、とりあえずランクをCに上げましょうか」
「そ、そんなにサクッと上げて良いんですか」
「良いに決まってるでしょ。六十階層もあるダンジョンを攻略したパーティーのランクが未だにDってのがおかしいのよ」
「ま、まぁそれはそうですね」
どの階層に出現する魔物も弱いというある意味とんでもないダンジョンではなく、順当に強さが上がっていくダンジョンを現在確認されている最下層のボスを倒し、攻略している。
そんなことが出来るパーティーは最低でもBランク以上のパーティー。
Aランクのパーティーであっても死の危険性は十分にあるダンジョンを、ゼルートたちは短期間で攻略した。
いきなりBランクやAランクまで上げるのはシーリアスの力でも難しいが、Cランクまでであれば今すぐ昇格させることができる。
「開戦直後に魔法をぶっ放す件に関しても、あなたのランクが上がれば少しは通りやすくなるはずよ」
「……でも、反対する人は必ずいますよね。そういった相手は……自分なりに対処しても良いですよね」
「えぇ、死なない程度であれば自由にやって構わないわ」
死なない程度であれば好きなように対処して良い。
その許可をシーリアスから貰ったゼルートは心が軽くなったと感じた。
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