少年期[718]タダで渡すつもり

「よう、ラムス。オルガさんはいるか?」


「おはようございます、ゼルートさん。こちらへどうぞ」


約束の日となり、ゼルートは前と同じくアレナたちとオルガの鍛冶場へ訪れた。


「おう、来たか。約束の品だ」


「おぉ~~~~~、これが……ほら、アレナ。お前の聖剣だぞ!!」


「え、えぇ。そうなのよ、ね……」


テーブルの上に置かれている聖剣は間違いなく、アレナ専用の聖剣。


「火と雷の聖剣、サンレイズだ。詳しいことは……ゼルートに聞いてくれ」


「えっと……ホルガストに負けず劣らず凄いな、これ」


ランクは七。使用者の身体能力を強化し、更に魔力を消費することで切れ味を強化。

強化魔法が二つあり、一つはバーンエッジ。

刀身に一定時間炎を纏い、使用者の腕力を強化。


二つ目はライトニングムーブ。

刀身に一定時間雷を纏い、直線の移動速度を強化。


加えて、火と雷の魔力を使う際の消費魔力を半減。


専用技……一刀崩滅

斬られた対象は発火し、最終的に灰となる。


「って感じだな」


「……本当に、私が使って良いのかしら」


有難く受け取る。

そう決めていたが、いざ出来上がった聖剣の性能を知ると自分が本当に使って良いのか、不安になってしまう。


だが、仲間であるゼルートやルウナはアレナの腕がサンレイズを扱うのに相応しくないとは一ミリも思っていない。


「アレナ、そういうのはなしだぜ。俺がこいつを使うかどうかって時も同じ流れだっただろ」


現在指輪の状態としてゼルートの指に収まっているミスリルデフォルロッド。

ゼルートとしては今のところフロストグレイブがあるので、切り札的な武器は必要ないと思っていた。


しかし、二人の思いに推されてミスリルデフォルロッドを身に着けることに決めた。


「うっ……た、確かにそうね」


「俺から見ても、嬢ちゃんはこいつを扱うのに相応しい腕があると思うぞ」


凄腕の鍛冶師であるオルガからも認められ、涙が出そうになるのを堪えてサンレイズを手に取る。


「……大事に、使わせてもらうわ」


「別にそんな大事にしなくても良いんじゃないか? 武器は実戦で使ってなんぼだし」


「ゼルートの言う通りだ。武器はいずれ壊れる……それまで存分に振るってくれれば鍛冶師として本望だ」


二人の言葉を胸に刻み、自身の切り札としてこれから共に生きようと決めた。


白金貨三十枚という対価を払い、一振りの聖剣を手に入れた。

あまり戦いに関して解っていない物からすれば高過ぎるのではと思うかもしれないが、ゼルートにとっては全く惜しい買い物ではない。


「まぁ……あれだ、心配せんでも大丈夫だと思うが、あまり油断するなよ。戦場は全方位から敵が来る」


「えぇ、勿論油断はしませんよ。敵側の兵士や冒険者には容赦しませんし」


「ふん、容赦しないか。やはり敵側の奴らが少し可哀そうに思えるな」


「……かもしれませんね。ただ、戦争に参加するってことは死ぬ可能性十分ってことじゃないですか。それを考えれば、戦死は結局仕方ないって結果……だと思いますよ」


騎士や兵士という役職に就職すれば、戦争の際に参加しなければならないのは当然。

冒険者や傭兵も参加するのであれば当然、死というリスクは着いて回る。


二人と別れたゼルートは宿に帰ると、兄と姉の為に造る錬金獣の性能や必要な素材を考え始め、翌日に必要な素材を取りに行く為に数日間だけダンジョンに潜った。


必要な素材が揃い、翌日からは起きてる時間を殆ど錬金獣造りに使い、二日掛けてトップファイブに入る錬金獣を完成させた。


どう考えても性能や珍しさなどを考えればアレナやガレンの聖剣よりも高値が付く一品だが、ゼルートはこれらをクライレットとレイリアに売るのではなくタダで渡すと決めていた。

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