少年期[711]確かに笑える
「失礼しま~~~す」
「おう、ようやく来たな。ほれ、さっさと座って食べようや」
「ゴチになります」
個室に入ると、既にオーラスが椅子に座っており、テーブルの上には熱々の料理が置かれていた。
(……うま! やっぱり高級料理店が出す料理はどれも基本的に美味いよな。一皿の量が少ないのがちょっと難点だけど、今日はこいつの奢り。好きなだけ駄目させてもらおう)
朝食は普通に食べたゼルートだが、基本的に体に見合わない大食い。
冒険者として活動している者なら当たり前かもしれないが、数時間前に食事を取っていたとしても目の前の料理の美味しさを考えれば、いくらでも腹に入る。
「それで、何か用があるから誘ってきたんだろ」
「よう分かっとるな。まっ、別にそんな堅苦しい話をしたいわけやないんや」
「ふ~~~~ん……なら、いったいどんな話がしたいんだ?」
先日、銀獅子の皇に所属する下っ端が起こした問題で事を構える形にはなったが、オーラスは元々ゼルートとガチでぶつかろうとは考えていなかった。
ただ……悪獣をソロで倒したような猛者が、あまり力では解決できない問題に直面すればどうするのか……そういった部分に興味があった。
その結果、やはりこの冒険者とは絶対に敵対しない方が良いという教訓を得た。
事を構えかけた結果、それなりの金などを渡すことになったが、銀獅子の皇の資金力を考えればそこまで痛いダメージではない。
「……お前さん、今度の戦争にはガッツリ参加するんやろ」
「あぁ、勿論だ。ガッツリ参加するつもりだけど……それがどうかしたか??」
「いや、お前さんがこちら側として戦争に参加してくれるのは非常に心強いと感じるんや」
この言葉に嘘偽りはなかった。
オーラスはまだゼルートがガチで戦っているところを見たことはないが、それでも自分がタイマンで勝てるとは思っていない。
強いというのは視れば解かる。
だが、その底を感じ取るところが出来ない……なんとも恐ろしい存在だと認識している。
「けどなぁ……その勢いが仲間内でぶつかるんちゃうかと、ちょっと心配なんや」
「……俺の心配をしてくれるんだな」
「そりゃそうやろ。同じ冒険者なんやしな……まっ、なんかあった時に恩が売れたら嬉しいなって思いはあるけどな」
ゼルートに本心を隠しても無駄だというのは解っているので、考えていることをぶっちゃけて話す。
そんな態度がゼルートは嫌いではなく、笑って対応する。
「はっはっは! だろうな、あんたはそういう奴だ。でもな……俺は利益や見栄だけ考えてる馬鹿に負けるつもりはねぇよ。てか、俺だって一応貴族の一員だしな」
仲間の為に、家族の為に。
あまり面倒事になるのは避けた方が良いよな……なんて大人の考えを持つようにはなった。
五歳の頃みたいに、誰が相手でも喧嘩上等!!!!
そんな気迫を前面に押し出すのではなく、話し合いで解決出来る部分はそうやって解決したいと思っている。
現に、銀獅子の皇と対峙した時も若干脅迫という形に近かったかもしれないが、話し合いで問題を解決した。
「そういえばそうやったな……ぶはっ!! お前さんが当時やったことを思い出したら、思い出し笑いしてもうた」
「当時って……あぁ、あれか。まぁ…………確かに思い返せば、笑っちまうような出来事だったかもな」
今思えば、結構危ない出来事だったと思える。
あの場に国の象徴である国王がいたからこそ、賭け通りにことは進んだ。
(あそこに国王様が居なかったら……なんやかんやであの三貴族はのらりくらりと逃げてたかもしれないな)
所詮は子供が起こした喧嘩だと言って逃げられたかもしれない。
それを考えれば、もう一度あの場にいた国王陛下に感謝したい。
「それを覚えてんなら、俺がバカな連中に潰されないってことぐらい、解るだろ」
「……かもな。けどな、お前さんも冒険者になってから色々な人と出会ったやろ」
「そりゃ冒険者として活動してれば、色んな連中に出会うだ、ろ…………おい、そうなるかもって言いてぇのか」
たったそれだけの言葉で、オーラスがこの先起こるかもしれない件を理解してしまった。
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