少年期[709]銀獅子からの誘い
「……おい、アレナ。本当に大丈夫か?」
「え、えぇ。大丈夫よ」
そう言いながらも、数日後に出来上がる聖剣のことを考えると、まだ完全に冷静にはなれない。
アレナも元はAランクの冒険者だったが、聖剣の属性に雷と火を加える。
そして素材には実質的にAランクの魔物の物を使うことが決定した。
加えて、聖剣の制作費用を頭に浮かべると……流石の元高ランク冒険者であっても、ちょっと贅沢過ぎるという思いが生まれる。
「アレナ、別に白金貨三十枚ぐらい、良い武器を造る為なら全然惜しくないからな」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
言葉は理解出来る。
質が高い武器を造るためには……質が高い武器を造るための素材費を考えれば、白金貨三十枚という値段は決して法外ではない。
寧ろ妥当な値段……から、少し値下げされている。
「アレナは俺の安全を想って、ミスリルデフォルロッドを装備して欲しいって言っただろ」
「そうね、確かに言ったわ」
その言葉に嘘偽りの気持ちはない。
「俺も同じだ。いつも魔物と戦ってる現状も戦場とあんまり変わらないかもしれないけど、戦争に参加すれば基本的に四方八方が敵だろ。だから、少しでも生き残れる確率が上がったら良いなって思ってる」
「ふふ、ゼルートらしい思いだな。私もアレナには是非、無事に戦争を戦い抜いて欲しいと思っている。無論、私もこれから起こる戦争で死ぬつもりは一切無い」
従魔三人も同意するように何度も頷く。
(ふぅ~~~~~~、もう身に染みて分かっていた筈なのに……本当に、良い人しかいなわね)
自分がかつて所属していたパーティーも人格的に優れている者しかいなかったが、それでもこのパーティーの優しさは心に染みる。
「分かった……ありがとう、ゼルート。出来上がった聖剣……存分に戦場で振るうわ」
「楽しみにしてるよ」
アレナの聖剣が出来上がるのは四日後。
その間、ゼルートはダンジョンに潜らずに過ごそうと決めた。
偶には街の外に出る依頼でも受けようか。
そう思っていると、滞在している宿に一つの手紙が届いた。
「ゼルートさん、手紙を預かっています」
「俺にですか? ありがとうございます」
部屋に戻ったゼルートは封を開け、手紙を読み始めた。
「…………ふ~~~~ん」
「ゼルート、いったい誰からの手紙なの? ご両親?」
「いや、銀獅子の皇のクランマスター……オーラスからの手紙だ」
「「ッ!!??」」
アレナだけではなく、隣で聞き耳を立てていたルウナも目を見開いて驚いた。
全く知らない相手ではない。
少し前に銀獅子の皇の下っ端がアレナに絡んで返り討ちにされ、その馬鹿共が貴族の令息ということもあり、少々問題となった。
「えっ、なんで銀獅子の皇のクランマスターが……も、もしかして知らないうちに問題を起こしてた、とか?」
「いや、そんなことはないから安心してくれ」
仮に本気で殺し合うのであれば銀獅子の皇がそう戦力で挑んだとしても、本気のゼルートたちに敵うことはない。
ただ、クランという組織を自分たちの手でつくり上げた銀獅子の皇の権力はバカに出来ない。
ゼルートも売られた喧嘩は買う主義だが、あまり厄介な状態になるのは避けたい。
しかし向こうもゼルートに喧嘩を売るような真似をすれば、痛手では済まないダメージを食らうのは解っている。
「単純に戦争が始まる前に、飯でも食べないかって誘いだ」
「そ、そうなのね」
「別に変なことしようとしてるって感じじゃない……少なくとも、文面上はな」
冒険者として確かな実力は持っており、損得勘定が出来る人間だとゼルートは認識している。
一度魔法に関してだが、力の差はハッキリと示した。
それもあり、オーラスがバカな真似をする可能性は低いと判断。
料理は全てオーラスが奢ると記されているので、誘いを承諾。
ゼルートは早速返事の手紙を書き始めた。
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