少年期[708]相応しい素材
「……オルガさんはいったいどこに行ったんだ?」
「多分ですけど、魔物の素材や魔石が保管されている場所に行ったと思います。おそらく、師匠は火属性の素材に心当たりがあるのかもしれません」
エボルサーペントの素材の劣らない一品。
そう簡単に見つかりはしない……そして手に入れるのも難しいが、そこは街一番の鍛冶師。
長年鍛冶師を続けていることもあり、色々と伝手を持っている。
その伝手で手に入れた素材の中に、これならばエボルサーペントの牙に負けない。
そう思える一品が眠っていた。
ラムスの言う通り、オルガ素材や魔石を保管している場所に向かい、アレナの聖剣を造るに相応しい素材を持っていた。
「これであれば、エボルサーペントの牙に負けない素材だと思っているが……ゼルート、お主はどう思う」
厳重な箱の中に入っていた素材は複数の牙。
ゼルートは鑑定眼を有しているので、直ぐにどんな魔物の牙なのか視た。
「ブラスター、サーベル……」
魔物の名前を聞いたアレナの顔から一気に血の気が引いた。
ブラスターサーベル。ランクはBの虎系の魔物だが、エボルサーペント程ではないが敵の血肉を食らうことで徐々に成長する獰猛な虎。
火属性を持ち、爪や牙に炎を纏って攻撃するのも得意だが、最大の武器は炎噴による加速。
野性の獣からは考えられない技術力で器用に移動中に加速しながら攻撃を繰り出す。
更には接近戦だけではなく、口から炎のブレスを使って遠距離攻撃も行う。
広い範囲を焼き尽くすブレスと一点集中型のブレスを器用に使い分ける。
「オルガさん、これは……もしかして、Aランクまで力を身に着けたブラスターサーベルの牙ですか?」
「おっ! 良く分かったな。その通りだ……視て解ったのか?」
「はい、俺の鑑定眼は結構質が良いんで。ただ……なんとなく、視ずとも普通の物とは違うってオーラが漏れてる気がします」
「…………」
ゼルートと同じ感覚を感じ取ったアレナは言葉が出なかった。
ブラスターサーベルは獰猛ではあるが、意外と冷静な一面を持ち合わせている。
絶対に勝てない勝負だと分かった瞬間、脱兎の如く逃げ出すことは決して珍しくはない。
それ故に、あと一歩のところまで追い詰めたとしても取り逃がしてしまうという残念なケースは決して少なくない。
「アレナ、大丈夫か? ……お~~~い、アレナ。本当に大丈夫か??」
「はっ! だ、大丈夫よ。ちょっと出てきた素材に驚いただけ」
ルウナの声を聞いて我に返ったアレナ。
だが、未だに目の前にAランク相当の強さを持つブラスターサーベルの牙がある。
この現実がやや信じられなかった。
「十分過ぎますね。本当にこの牙を使ってくれるんですか」
「あぁ、勿論だ。エボルサーペントの牙に負けない火属性の素材となれば、これぐらい上等な素材でなければ務まらない」
オルガとしてはゼルートが良いと言ってくれるのであれば、必ずブラスターサーベルの牙を使うつもり。
弟子であるラムスも師匠の判断に文句はない。
しかしそんな中で、出来上がる聖剣の使い手となるアレナがやや放心状態となっていた。
「アレナも良いよな。火属性の素材はオルガさんが持ってきてくれたブラスターサーベルの牙でさ」
「え、えぇ……それは勿論、嬉しい話だと思ってるわ。でも、お金が……」
元はBランクだが、実質的な強さはAランク。
そして手に入りにくいという理由もあり、素材の価値がかなり高い。
「別にお金のことなんて気にしなくて良いぞ」
パーティーの収入源は基本的にゼルートが管理している。
勿論、アレナたちにも毎月小遣いというには多すぎる金を渡している。
それでも他のパーティーと比べて一度の冒険でモンスターと戦う回数が多く、全ての素材を持って帰ることが出来る。
オークションで貴重な素材を出品して手に入れた大金もあるので、例え高価な聖剣を造ってもらっても懐に大したダメージにはならない。
「オルガさん、白金貨三十枚でどうですか」
「ほぅ……悪くない金額だ。お主たちの方で聖魔石を用意してくれていることだし、その値段で構わん」
アレナが次に何かを言う前に値段の交渉は終わり、白金貨三十枚分を一括で支払った。
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