少年期[688]本能的な行動

「へぇ~~~~、今回のボスはホーリーガルーダだったのか」


「ラルが一人で倒してくれたわ。私たちは周りのグリフォンと戦ってたの」


アレナたちが宿に戻ると、先に戻って仮眠を取っていたゼルートとタイミング良く合流。

時間が丁度良かったので、そのまま夕食に移る。


「どうだった、ラル」


「久しぶりに空中戦が楽しめました」


「はっはっは! そうか、そうか。それは良かった。確かに空中戦でラルが満足できるって相手は中々現れないからな」


ホーリーパレスに挑み始めてからは、空を飛ぶ魔物と戦う機会が格段に減った。

地上戦しかできない魔物と戦うのも悪くない。


だが、空中戦で暴れてこそドラゴン。

ボスとしてホーリーガルーダが現れたのは、ラルにとって非常に幸運と言える出来事だった。


「アレナもグリフォンが相手なら、結構楽しめたんじゃないのか?」


「そんな訳ないでしょ。地上戦の相手に……さらに言えば人型の魔物との戦いに慣れてたんだから、空の死神と戦うのに楽しむ余裕なんてなかったわよ」


自分がそれなりに強くなったと実感はしているが、やはりBランク以上の魔物と行う戦闘は油断出来ない。

しかも、相手は自分が自由に動けない空から攻撃してくる死神。


相応の実力を持つアレナであっても、油断して良い相手ではなかった……ルウナががっつり楽しんでいたが、そこはメンタルの違いというものだろう。


「そういえば、アレナはかなり早めに終わらせていたな。あの一撃……確かブレイクスラストだったか? 闇槍からあのスキル技を放てば、ホーリーガルーダであっても致命傷を与えられたんじゃないのか??」


チラ見ではあったが、ルウナはアレナが放ったブレイクスラストの威力をしっかりと見ていた。


「そうですね……あの威力なら、ホーリーガルーダの体を貫いていたと思いますよ」


ラルもルウナの言葉に賛同した。

仲間が褒めてくれるのは嬉しいが、問題はブレイクスラストを狂わずに放てるか否かだった。


「当たり前だけど、ホーリーガルーダはグリフォンより飛行速度が速い。それを考えると、ブレイクスラストを上手く当てられない可能性の方が高いのよ」


「ふ~~~~ん……アレナならなんだかんだで出来そうな気がするけど、相変わらずちょっと自己評価が低いよな」


「冷静に分析してるだけよ」


「そういうことにしておくか。ルウナはどうだった? 相手が空の死神なら結構楽しめたんじゃないか」


「うむ、まぁ……そうだな。それなりに楽しめたぞ」


楽しめたという感想に嘘はないが、少々言葉が濁った。


「……もしかして、ちょっと物足りなかったのか?」


「いや、そんなことはない。グリフォンとの戦いは非常に楽しめた。ホーリーリビングデットたちと比べてまた違う楽しさがあった。だが、その……あれだ。途中で予定が狂ってしまったのだ」


「狂った?」


どう予定が狂ったのか、ルウナはゼルートに詳しく説明した。


「はっはっはっはっは!!!! な、なるほどな。勢い余ってそのまま潰してしまったって訳か……まぁ、それは仕方ないな」


「本当はもう少し楽しませてもらうはずだったのだがな」


「しょうがないって。戦いを楽しむつもりだとしても、本能的には絶対に倒すって気持ちを持ちながら戦ってるんだ。チャンスがあったら思わず体が動いてしまうものだろ」


「……そうだな。そういうものかもしれない」


あの時の行動に納得はしたが、やはりもう少し楽しんでおけば良かったという思いが消えない。

グリフォンはそれなりに珍しいモンスターであり、ホーリーパレスの中でもあのボス部屋以外では滅多に現れない。


「ゲイルとラームも楽しめたか?」


「それなりに楽しめました。ただ……できれば次は、聖属性持ちのボスと戦いたいところですね」


「僕もゲイルと同じかな」


「二人ともやる気満々だな……時間的に、あと二回ぐらいは大丈夫か?」


「二回ぐらいなら大丈夫じゃないの? というか、私たちよりゼルートの方はどうだったの」


アレナたちは特に途中でトラブルが起こることなくボス部屋に辿り着けたので、これ以上話題になる話は持っていなかった。

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