少年期[687]とりあえず、それなりの物で
ボス部屋の魔物を全て倒したアレナたちは宝箱と魔物の死体を回収し、そのまま六十一階層を探索……することはなく、一旦地上へと戻った。
元々今回の探索では六十階層以降を探索する予定はなかったが、それでもルウナやゲイルは惜しいという表情をしていた。
(全く、今回は時間的に六十階層以降をゆっくり探索するのは難しいでしょうけど、戦争が終わればまたいくらでも時間があるのだから、その時にじっくり探索できるのに)
多少なりとも、まだ全ての階層を探索し終えていないダンジョンを攻略するというのは、アレナも冒険者として気になっている。
しかしそれよりも、現在は始まるまであまり時間がない隣国との戦争に意識を向けなければならない。
「なぁ、アレナ。次はいつダンジョンに潜る?」
「……宝箱の中に聖魔石が入っていなかったら、一日休んでからまた直ぐにダンジョンに向かうことになるわね」
「おぉ~~~、それは良い……いや、良くないな。一先ず聖魔石はアレナの為に欲しい」
現在、ドワーフの鍛冶師であるオルガにはガレンの聖剣を制作してもらっている。
そしてガレン専用の聖剣の製作が終われば、次はアレナ専用の聖剣制作を頼む。
聖剣の制作には、どうしても聖魔石という貴重な鉱石が必要になる。
アレナとしては現在腰に体験しているミスリル製のロングソードで十分に満足しているのだが、パーティーのリーダーであるゼルートが必要だと言ってくれたこともあり、有難く受け取ることにした。
「ふふ、ありがと。でも……まだ時期的に五十一階層から六十階層まで降りる時間はあるでしょうね。ルウナ、あなたも聖魔石を使って手甲と脚甲を造ってもらったらどう?」
「私のか? ん~~~~、私は今の武器で満足している……それに、素手で戦うことの方が多い」
ロングソードは使えるが、アレナの方が技量は上。
短剣も使えるが、二刀流の扱いはゼルートの方が勝っている。
腕が鈍らないようにダンジョン探索中では素手だけではなく、武器を使って戦うこともあるので、ほんの少しずつではあるが腕は上がっている。
ただ、アレナやゼルートの父であるガレンの様に優秀な武器の中でも、更に飛び抜けた武器を持とうとは思わない。
「私も同じようなことを思っていたわ。これ以上高性能な武器を持つのは、身の丈に合わない……でも、せっかくゼルートがこの街一番の鍛冶師に頼んで造ってくれるのだから、有難く受け取ろうと思ったの」
「アレナには十分受け取る資格があるだろう。しかし、私はアレナやゼルート……ゲイルと比べれば、武器を扱う腕はまだまだだ」
ルウナが述べた三人は確かに武器の扱いに関しては秀でている。
ラルは生まれた時から己の五体、全てが武器の状態だったので心得はあるものの、ルウナより腕は下。
ラームも本来であればルウナよりも武器の扱いは上手くないのだが、強奪によって多数の魔物や盗賊たちのスキルを吸収した結果、技術はほぼ一人前の腕に達していた。
「ロングソードや短剣、刀とかはそうかもしれないけど、ルウナのメイン武器が素手なのは知ってるわ。それを補助する為の武器……というよりも防具かしら? 何はともあれ、手甲や脚甲を身に着けるだけでだいぶ戦力は変わる筈よ」
「まぁ、それはそうかもしれないが……だからといって、いきなり聖魔石の様な高級素材を使った物を装備するのは気が引ける」
「その気持ちは解らなくもなあいけど……とりあえず、戦争が始まる前にそれなりの手甲と脚甲を装備して、一回ダンジョンで試してみたらどう?」
「……そうだな。明日が休息なら、街の武器屋を回って探してみるか」
やはり、いきなり聖魔石を使った手甲と脚甲を装備する気にはならないが、一先ず新しい武器にもなる防具を翌日買いに行くと決めた。
それなりの品質となれば、値段もかなり高くなる。
しかしゼルートから定期的に小遣いをもらっており、今回の探索で得た素材や魔石は自由にギルドで売って構わないので、焦ってゼルートに金を借りる必要は全くない。
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