少年期[689]死の可能性が変わる
「俺か? 俺は……あれだ、転移トラップに引っ掛かった」
「「「「「…………」」」」」
いきなり五人とも食事の手を止め、表情が固まってしまった。
ゼルートの超人っぷりを知っているので、まさか転移トラップに引っ掛かったとは一ミリも想像していなかった。
「……えっ、ゼルート。大丈夫だったの?」
転移トラップに引っ掛かると、碌な事にならない。
それはダンジョンに潜る冒険者であれば、誰もが知っている常識。
転移トラップはそもそも中層から下層以降の階層にしか出現しないトラップ。
下の階層を目指そうと思っていたが、中途半端な位置に跳ばされる。
魔物の巣や魔物が大量に存在する部屋に転移され、全ての魔物を倒さないと出られなくなる。
十層以上跳ばされ、遭遇した魔物が自分たちの実力でない力を持ち、出会った瞬間に殺される。
兎に角、転移トラップに引っ掛かっれば大半は死ぬ。
そんな結末が待っているトラップの中でも冒険者が選ぶ、嫌い内トラップベスト五には入る。
ゼルートの実力が圧倒的なのは知っているが、感知力も並ではない。
基本的にトラップに引っ掛かることはなく、今までダンジョン攻略を進めてきた。
なので、今無事に一緒に夕食を食べているということは、特に問題はなかったというのは分かる。
しかし転移先で何が起こったのか、それだけは五人とも興味津々だった。
「転移された場所は鍵が掛かってる部屋だったんだよ。跳ばされて少し経つと、まずはレベル三十のレッドゴブリンが現れたんだ」
「まずは? ……ゼルート、あなたが跳ばされた場所ってまさかコロシアム、なの?」
「お、さすがアレナ。回答が早いな。そうなんだよ、俺が引っ掛かった転移トラップはコロシアムタイプだったんだよ。ロックモンキーとロックコングを倒し終えてからサンドワームに狙われてさ」
アレナの頭には後半の転移トラップに引っ掛かった理由は、全く入ってこなかった。
転移トラップの中でも他と比べて、内容によって生還できるか否かが大きく変わる。
それがコロシアム。
「……ねぇ、いったい何回戦タイプのコロシアムだったの」
「えっと……確か七回戦だったな」
「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」
アレナやルウナだけではなく、ゼルートの言葉に耳を澄ましていた者たちも驚き、思わず食事の手を止めてしまう。
エールを仲間の顔に吹き出してしまう者もいた。
「は、はっはっは!!! さすがゼルートだ。やはり、色々と持っているな」
「ある意味、ってところね。七回戦っていったら、普通は絶望する回数よ」
部屋に出現する魔物の強さは、回数が上がるごとに強さも当然上がっていく。
七回戦ともなれば、Aランククラスの魔物が現れてもおかしくない。
「ゼルート、レッドゴブリンの次は何が現れたんだ」
ルウナは後の六体、いったいどんな魔物が現れたのか興味津々だった。
そしてそれはルウナだけではなく、ゲイルたちも同じ。
「二回戦目はブレードラビット。レベルは……三十ちょいだな。三回戦目はフォレストオークナイト、タンク、アーチャー、メイジだった」
「構成がしっかりとしてるパターンね。レベルは三十後半ってところかしら」
「そんな感じだったと思う。ここまでそんなに強いとは感じなかったけど、四回戦目のヒポグリフ二体はちょっと強い……というか、面倒に感じたな」
「ほぅ、ゼルートがそう言うならそれなりに戦える個体だったのだろうな」
総合的に見ればルウナがボス部屋で戦た空の死神、ヒポグリフの上位互換であるグリフォンの方が強いのだが、その二体に対してルウナの興味は確実に強くなった。
「レベルは四十で……まぁ、あれだな。二体が同時に放ったストームブリンガー厄介だった。普通の冒険者がまともに食らえば、容易に切り裂かれること間違いないだろうな」
まるで自分は普通ではないという言い方。
だが、決してその表現は間違っていないので、アレナたちはそこに関しては全くツッコまなかった。
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