少年期[684]完全に捉える

「これで終わりだよ!!!」


「ッ!!!!」


ラームと対峙したグリフォンは現在の状況が全く信じられなかった。

目の前の小さな子供にフェザーラッシュ、鋭いくちばしによる死の刺突。


堅い鱗や鋼鉄の盾を砕き、引き裂く凶悪な爪。

その全てが目の前の敵にことごとく打ち砕かれ、躱され、止められた。


先程ホーリーパレスに生まれたばかりのグリフォンだが、自分が生まれながらの強者だと自覚している。


それは自他ともに認める内容だ。

高ランクの冒険者であってもグリフォンは強敵だと認識している。


そんなグリフォンが放つ風のブレスすら、ラームには一切通ることはない。

大半の魔力を使い、溜め込んでから放つまで待ち、同じ攻撃で相殺。


自分が自信をもって強いといえる攻撃をあっさりと防いだ。


なんなんだこの生物は。

そう思ってしまうのも仕方ないだろう。


ただ、ダンジョン内でボス部屋に生まれたばかりのグリフォンとゼルートと出会ってから本格的に強くなろうと努力し始めてた特異なスライム、ラームとではどう頑張っても埋められない差が広がっていた。


しかしそんな事実は関係無い。

ボス部屋に生まれた魔物として、侵入者を排除するのが魔物の使命。


空中に一旦非難したグリフォンは最速で風の魔力を纏い、突貫。

空中で十分な加速を得てからの状態から行われた突撃は、アレナに仕掛けたグリフォンの突撃速度を大きく上回っていた。


だが……そんな渾身の一撃も体から無数の触手を生やし、羽や胴体に足などに巻き付かれ、易々と止められた。

突進の衝撃で数メートルほど押し込んだとはいえ、ダメージは全く与えていない。


予想してたよりも突進の威力が高かったことにラームは驚いていたが、それだけで恐怖心などは全く感じていない。


体に絡められた触手は全く離れない。

風の魔力を利用して切り裂こうとしたが、逃れられることは出来なかった。


元々グリフォンを相手にあまり遊ぶつもりがなく、口から圧縮した水のレーザーを放ち、額を貫いた。


「ふふん!!! 良い感じに倒せたぞ!!!」


素材や魔石を傷付けずに額を貫き、脳をも貫いたことでグリフォンは生命活動が停止。

グリフォンから放つ攻撃を躱すか防ぐ、もしくは相殺していたので体に傷は殆どない。


ちょいっと弄れば、剝製として飾られるほど良い状態で倒すことに成功した。


「ふむ……攻撃の威力は中々。だが、戦い方は今一つといったところか」


ラームと違い、ゲイルはグリフォンとの戦いを一通り楽しんでいた。

フェザーラッシュは降りかかる鋭い羽を切り落とし、移動速度が威力に加算された凶悪な蹴りには斬撃で対抗。


風のブレスには雷のブレスで迎撃し、ダメージを与える。

片翼を硬質化させた一撃には驚かされたが、ロングソードに魔力を纏えばさほど脅威には感じない。


自分に向けられる攻撃を全て捌き、受け止めていく。

傍から見れば余裕で退屈そうに見えるかもしれないが、油断して良い攻撃はどれ一つとしてない。


迎撃する力や体勢を間違えれば、後方に吹き飛ばされてしまう。

ただ、一分弱の間に何度も攻撃は繰り返され、ゲイルはその全てを見切った。


(ラルが戦っているホーリーガルーダであればまた隠し玉を持っていそうだが、このグリフォンはもう手札切れだろう……これ以上、戦う意味はないな)


今回のボス戦において、もう楽しめる要素は一つもない。

そう判断したゲイルの行動は速かった。


「雷光一閃」


グリフォンの視界からゲイルの姿が消えた。

すると首が熱い……そう感じた瞬間、視界が反転。


自分の首が斬られた。

そう認識した瞬間には瞼が降り始め、体が地面に倒れた。


「悪くない敵だったが……どうせなら、ホーリーリビングデットジェネラルやデスナイトなどの方が歯応えがあったな」


身体能力だけではなく、技術まで兼ね備えた強敵。

ゲイルとしてはそういった相手の方が好みだった。


「このダンジョンにはもう少しの間潜る。それを考えればまた強者と戦える時が来るだろう」

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