少年期[683]乾坤一擲

「さぁ、行きましょう」


ボス部屋の中に入ると、中には一体のガルーダ。

そして四体のグリフォンが宙を飛んでいた。


「……あのガルーダ、どう考えても普通のガルーダじゃないわよね」


四つの翼を持ち、白い体毛を持つガルーダ。

メインのボスであり、Aランクの魔物。ホーリーガルーダ。


「あれは空中戦ができる私がお相手しましょう」


ドラゴン形態に戻り、獰猛な笑みを浮かべて闘志を溢れさせるラル。


Aランクの魔物であるホーリーガルーダと戦ってみたいと思っている者は数名いたが、相手は運悪く空を飛んでいる。

遠距離攻撃の攻撃手段は持っているものの、空中戦では向こうに分がある。


「……そうだな。今回の相手はラルが適任だ」


「うむ、それでは私たちは周りのグリフォンを相手しましょう」


全員が己の武器を抜刀し、敵も呼応するように襲い掛かる。


(グリフォンと一人で戦うって状況なのに、全く恐怖心がない……あの頃と比べて成長していると本当に思い知らされるわね)


ライオンの胴体と鷲の頭と翼を持つBランクの魔獣、グリフォン。

鳥獣種の中でも風のブレスや羽による攻撃だけではなく、物理攻撃が優れていて攻守に隙が少ない魔物。


元々Aランク冒険者だったアレナだが、当時はグリフォンを相手に一人で挑もうなど全く考えたことはない。

どうしようもない状況ならいざ知らず、そんな危機が迫っている状況ではない。


単に数が丁度なので一人一体ずつ相手をしよう。

そんな流れに対して特に反論することなく強化系のスキルを使用し、闇槍に魔力を込めていた。


「ふっ!!!!」


急降下しながら迫りくるグリフォンに闇の突きを連射。

一発二発目は的確に躱して避けるが、アレナの動きを読んだうえで突きのモーションから放つ刺突を食らってしまう。


しかしそこはBランクの魔物。

数発ぐらい被弾したところで、一撃必殺の攻撃でもない限り怯んで地面に墜落することはない。


風の魔力を纏い、くちばしに集中させる。

鋼鉄の大盾をも貫く死のくちばしと化した攻撃に対し、アレナは逃げずにどっしりと構えた。


「ブレイクスラスト!!!」


攻撃を行えば、動きを途中変更できない槍術のスキル技、ブレイクスラスト。

突きの動きを行った際に半径一メートルを範囲に一点五倍の威力を放つ技。


しかし衝撃を与える部分を絞ることによって、威力が強化される。

効力は最大三倍。


技術に優れたアレナは寸分狂わずグリフォンのくちばしを捉え、突進を止めた。


「ッ!! はぁぁああああああああッ!!!!!」


技術で一点を捉えてからは力勝負。

絶対にこのまま押し切ると言わんばかりの表情で一歩も引かない。


グリフォンの方もこのまま敵の武器ごと破壊して体を貫こうと、体に纏う風の量を増加。

その加速力に負けじとアレナも踏ん張る力を強める。


お互いに後退しない状況が数秒ほど続いたが、直ぐに拮抗は崩れた。


強化系のスキルや身に着けているマジックアイテムの効果もあり、グリフォンに押し負けることはなかった。

しかしグリフォンもスキル、突進や身体強化、風の魔力を纏ったりなどアレナに負けない強化で対抗したが、グリフォンの体や魔力……よりも先に、攻撃の要であるくちばしが限界を迎えた。


「ッ!!??」


くちばしに罅が入った瞬間、このまま圧し続ければ砕けると確信した。

そしてくちばしを刃先を話すために後方に下がろうとしたが……それが良くなかった。


アレナはブレイクスラストで迎撃しようと全力でくちばしを押していた。

互いに押し合っていたからこそ、お互いに動けない状況。


しかしグリフォンが押す力を緩めで下がれば、当然前に進もうとしていたアレナのブレイクスラストが勢い良く押し出され、結果として踏ん張る力が無くなったグリフォンのくちばしを貫き……そのまま頭部を貫いた。


「……グリフォンと力比べなんて我ながら馬鹿なことをしたと思ったけど、知能が低くて助かったわ」


渾身の一撃で倒したアレナはグリフォンの頭から流れる血が勿体ないので、ひとまずアイテムバッグの中に死体をしまった。

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