少年期[674]受けた命が中々達成できない
視界から一瞬にして消えた。
だが、成長したサイクロプス二体はゼルートが高速で動く線だけは見えていた。
自分たちの後ろに回り込んだと瞬時に判断し、後ろに向く。
「あとワンアクション遅かったな」
「「ッ!!!」」
疾風迅雷を使ってスピードアップした直後、敵の後方に回り込んで即座に風の斬撃を放っていた。
これでもかというイメージと魔力を込めた斬撃は一切の抵抗を受けることなく、その首を斬り落とした。
後ろを向いたまでは良かったが、顔は後ろを向いた状態で首は地面に落ち、遅れて体も地面に倒れ伏した。
「戦闘技術と身体能力は高かったが、予想が足りなかったな」
ゼルートは一瞬にして背後に回り込んだ。
それはサイクロプスもギリギリ目で追えた……そこで後ろを向くという選択肢を取ったのが良くない。
急所に斬撃が来ると予測し、体を屈める。
もしくは頭と首、そして心臓と魔石の位置に集中して魔力を集める。
そのように対処すれば、助かる可能性はあった。
「まっ、そこら辺は実戦を何度も経験してる魔物じゃないと無理か」
未来予知などのスキルを習得していない限り、実戦を何度も経験していない魔物が瞬時に細かい判断をするのは難しい。
「五体目が出たからあと多分二体か……さてさて、何が出るやら」
ヒポグリフ二体、そして成長したサイクロプス二体は戦っていたそれなりに楽しいと感じたので、次はどんな魔物が出てくるのかワクワクしてしまう。
だが、先程開幕一戦で轟斬を放ったサイクロプスが頭に残っており、冷静さが残っている。
「今度は……ミノタウロスか。というか、多分普通のミノタウロスじゃないよな」
「グゥォォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!」
部屋に現れた真紅の毛を持つミノタウロスは部屋を割ってしまうかのような声量で雄叫びを上げた。
「なになに……うんうん、どうやらミノタウロス亜種みたいだ、な!!!!」
油断してるいるような表情をしながらも、ミノタウロスの動きはしっかりと把握しており、開幕一線の斬撃は華麗に避けた。
(斧……にしては長く、刃の部分がそこまで大きくないな。一撃必殺用の斧じゃなく、手数や振り回しやすさを選んだ斧か)
ゼルートが考えている通り、ミノタウロス亜種が扱う斧は振り回しやすさを優先したもの。
速度上昇の効果が付与されており、疾風迅雷を一旦消したゼルートとそれなりに良い勝負ができている。
ミノタウロスは本来Bランクの魔物だが、亜種のランクはA。
力と速さも並ではない。
真正面からはぶつかりたくない。
そう思う前衛が殆だが、そんな脅威のミノタウロス亜種とゼルートは大剣を使って楽しそうな……ではなく、戦闘凶の様な笑みを浮かべながら斬り合っていた。
「はっはっは!!!! 良いぞ、テンションが上がって来たぞッ!!!!!!」
サイクロプスとの戦いでもテンションが上がっていたが、更に爆上がり。
ミノタウロス亜種の斧とゼルートの大剣がぶつかり合う度に剣戟が室内に響き渡る。
一般的な洞窟であれば戦う時の衝撃波や音で崩れてもおかしくないが、ここはダンジョン。
そういった攻撃で崩れることはない・
ただ、刃が地面に向けられたら当然斬れ、そして刺さる。
いずれ回復するが、直ぐではない。
一人と一体が戦いを始めてから部屋は更にボロボロにるのだが……ゼルートとミノタウロス亜種には関係無い。
お互いから一瞬たりとも目を離さず、至高の時間を楽しむ。
もっとも、楽しんでいるのはゼルートだけ。
ミノタウロス亜種がダンジョンから受けた命は敵を殺すこと。
その為に全力でゼルートを殺しに掛かっているが、対象は全く殺せない。
それどころか笑みを浮かべながら己と斬り合っている。
そんな状況を楽しめる訳がなく、咆哮を上げて突進。
体重と勢いを乗せ、ゼルートに当る……よりも少し手前で振り下ろした。
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