少年期[673]おそろしい連携
「おっ、今度はサイクロプスか……ん? なんか雰囲気が違う様な」
六戦目の敵として現れた魔物に違和感を感じていると、問答無用で一体のサイクロプスが殴り掛かって来た。
「うおっ!? えっ? かなり早くないか?」
避けることは出来た。
ただ、少々ヤバいと感じて直ぐに身体強化を使用し、魔力を纏った。
「どう考えても普通のサイクロプスじゃないよな」
片方は立派な大剣を持ち、もう片方のサイクロプスは手甲と脚甲を身に着けている。
もしやと思って鑑定眼を使用してステータスを除く。
(お、おぉ~~~~~……マジか。いやでもサイクロプスなのにこれだけ身体能力が高いってことはそうだよな)
六戦目の敵として現れた二体のサイクロプスは成長しており、一般的なサイクロプスとは身体能力がまるで違う。
ゼルートだからこそ最初の一撃をサラッと躱せたが、反応が鈍い者であれば一撃をモロに食らっていた可能性が高い。
(いきなり成長した魔物が現れるか……そりゃどういった魔物が現れたのかプレートみたいなのが現れないから、鑑定で覗かないと分からないもんだけど……はっきり言って不意打ち過ぎるだろ)
二体とも当然最初から敵を殺す気全開で強化系のスキルを使用し、更に大剣使いは武器に火を纏い、体術使いは拳と脚に雷を纏っていた。
二体が身に着ける大剣や手甲、脚甲も一般レベルのものではなくどちらもランク五の一級品。
当然装備品にも身体強化系の効果が付与されているので、二体の攻撃はAランクモンスターにも届く。
(この連携が取れた動きも厄介だな。完全にコンビで敵を倒すための動きだ。サイクロプスの耐久力を考えれば、多少の攻撃を受けても問題無さそうだし……確実に一人ずつ潰していく作戦なのかも)
一人を集中して狙われれば、高ランクの冒険者であっても捌くのが困難なコンビネーションが途切れない。
連携のスキルを持っている二体はお互い次どう動くのかを完全に理解しているので、先読みしているのではないかと疑うほど隙が無い。
(本当に絶え間ない連撃って感じだな)
強化系のスキルを使えば十分に差が生まれるので上手く避けているが、残りの魔力量を気にしないサイクロプスたちの戦い方について恐ろしいと感じていた。
嘘ではない。
完全に人外と思われても仕方ないゼルートでも恐ろしいと感じることはある。
「グオオオォォォオオオオッ!!!!」
上段から断撃は火を纏い、地面に罅を入れず切り裂く。
この一撃でどれだけの威力が込められているのか、プロなら嫌でも理解してしまう。
断撃は技の性質上、全てを断つ。
勿論、使用者の力量によって斬れない物は存在するが、断つことに特化した技。
故に高威力の攻撃魔法を繰り出されても、たった一刀で斬り伏せてしまうことができる。
それを躱したと思えば、今度はもう片方のサイクロプスがクライムシュートを放つ。
下から上に蹴り上げる。
ただ単純な蹴りと終われるかもしれないが、サイクロプスの力であれば地面を抉りながら蹴り上げられるので、距離を間違えれば一気に天井まで飛んでいき、激突。
一歩間違えればその一撃だけで殺されてしまう。
下からの攻撃ということもあって防ぐのが難しく、後ろに跳んで躱すのベスト。
ただし、地面を抉って蹴り上げた場合は砂や石が飛んでくるのでそこにも注意しなければならない。
(属性の魔力を操る分、触れては面倒な点が多いから厄介というか面倒というか……普通だったら疲れる相手だな)
冒険者とは基本的に役割分担をする為に、それぞれが違う長所を持ったバランスの良いパーティーを組む。
上手く分断して戦うことが出来るかもしれないが、それはそれで前衛の負担が増えて後衛は把握しなければいけない状況が増える。
(本当はもっと戦ってたいけど、そろそろ終わらせないとな)
成長したサイクロプスの登場に驚き、その戦力に恐ろしいと感じたが、結局は数分ほど同じく火と雷の魔力を纏いながらバチバチ戦っていた。
もっと戦っていたいという気持ちもあるが、これ以上ここで時間を使うわけにはいかない。
「疾風迅雷」
速度で更に差を広げるため、切り札の一つを使用して背後に回った。
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