少年期[672]さぁ、次々
ナイトとタンクにアーチャーとメイジ。
とてもバランスの取れた構成。
レベルは三十七とかなり高く、ベテランの冒険者であっても苦戦するであろうレベル。
だが、ゼルートからすれば少し前に戦ったオーガの軍団と大差ない。
つまり……少し本気を出せば十秒と掛からず死合は終了。
全員ゼルートの速度に反応する前に首を刎ねられ、剣を振るう前に……矢や魔法を放つ前にフォレストオークたちの視界はブラックアウトしてしまった。
「さて、さっさと回収しないとな」
次のモンスターが現れるまで時間は一分。
あまりのんびりはしてられない。
「……クリア報酬の宝箱とか出てこないし、次のモンスターが現れるってことだよな」
どんなモンスターが現れるかそわそわしながら待っていると、二体のヒポグリフが現れた。
「おっ、今度はヒポグリフか……しかもレベルは四十。おわっ!!」
じっくりステータスを視ているからといって、攻撃を行わないほどヒポグリフは甘くない。
フェザーレインを放ち、無数の鋭い羽がゼルートを襲う。
反射神経で無理張り躱した後もしっかりと追って来る。
更に、ヒポグリフは風の魔力を使用してフェザーレインの速度を上げている。
頑丈な盾でも時間が経てば徐々に穴が空き始める猛撃に対し、ゼルートはファイヤーウォールで完全ガード。
一枚ではなく三枚展開しているので、頑丈なヒポグリフの羽も風の恩恵虚しく燃え尽きてしまう。
しかし攻撃はそれだけでは終わらず、今度は無数のウィンドボールが放たれる。
「っ!! 完全に俺を狙えてるな」
無数のウィンドボールはファイヤーウォールにぶつかることはなく、火の壁を避けてゼルートにぶつかろうとする。
「これは、これで! 楽しい、な!!」
両拳と両脚に魔力を纏い、向かって来るウィンドボールを次々に破壊していく。
「「ッ!!??」」
さすがにその光景にはヒポグリフも驚きを隠せなかった。
地面以外のあらゆる方向から攻めて来るウィンドボールを一発も食らうことなく破壊……そんな風に対処されるとは思っていなかったが、それだけが手札ではない。
二体は自身の体に特大ウィンドランスを纏い、自らを風の槍と化して突撃。
「わぉ、それはびっくりだ」
今度はゼルートがヒポグリフの攻撃に驚かされた。
一点の威力や貫通力に限れば、Bランクモンスターの一撃に届く。
だが、まだまだゼルートの反応速度と力を超えるには色々と不足していた。
「よっ!!」
左右からやってきたヒポグリフのくちばしは手に風の魔力を纏いながら掴み、一瞬で回転を止めてしまった。
「よっこら、しょっ!!!!!」
そのまま二体をぶん投げ、途中で体勢を整えることができずに壁に激突。
しかし死には至らず、まだ戦闘は続行可能。
「しまった、あのまま無理矢理首を折っとけば良かったな」
反射的に投げてしまい、その結果二体はまだまだ動ける。
だが、壁に投げつけられたダメージは残っているので、余裕があるわけではない。
「……それは強力だな」
この一戦の為だけに用意されたヒポグリフが魔力の残量などを気にする筈がなく、風魔法……スキルレベル読んで習得出来る魔法、ストームブリンカーを二体同時に放った。
嵐を圧縮して放たれ、しかもそれが二つ重なったことで敵を木っ端みじんに切り裂くミキサーが完成した。
「俺も同じことしよっと」
右手と左手。両方からストームブリンガーを放ち、ヒポグリフが放ったのとは逆回転のものをぶつけた。
ぶつかり合った二つの嵐は霧散し、その結果を読んでいたゼルートはいつの間にかヒポグリフの直ぐ傍まで走っており、手刀で二体の首を折った。
「……よし、死んだみたいだな」
死んだことを確認してからアイテムバッグの中に入れ、次の敵を待つ。
次で五体目なので、これで終わるかもしれない。
二体のヒポグリフとそれなりに面白い戦いができたので、次で終わっても良いなと思い始めていた。
(次で終わりなのか……それとも最初の希望通り、七ラウンド目までモンスターが現れるのか……まっ、どちらにしろ楽しいことに変わりないか)
こんな罠だったら自分から踏んで転移されるのもありだと思い始めたゼルートの前に、二体のサイクロプスが現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます