少年期[675]心を折りにきてる

(あっぶな。中々侮れないな)


斧が地面に叩きつけられたことによって爆風と土のブロックがゼルートに跳んでくるが、風を生み出して全て受け流す。


だが、一瞬視界が覆われたことで次のアクションを見逃すことになった。


「ッ! それは食らいたくない!!!!」


斧技、タイタンスレイヤー。

巨人をも葬り去る超高火力を誇る一撃。


体が大きい相手に食らわせるほど衝撃が大きくなる効果が上がるが、そんなものは関係無しに破壊力が半端ではない。


咄嗟に後宙に跳んで躱すことに成功したが、部屋がこの一撃で大きく揺れたのを確認した。


(今のはタイタンスレイヤーか。普通は俺みたいな人間の子供に使う様な技じゃないんだが……あのミノタウロス亜種にとってはそんなの関係無いか)


フィールドに立っている人間を全力で消すのみ。

それを実行するために暴れることを止めない。


だが、ゼルートもやられてばかりではなく風切り音を唸らせる斧を躱しながら斬撃を刻み、大きなステップで惑わしてから蹴りや拳を叩きこむ。


しかしタフなミノタウロス亜種には決して大ダメージにはならず、疾風迅雷を使わないゼルートと五分以上互角に渡り合った。


(こんなのがダンジョン内を徘徊していたら多くの死者が出ただろうな。高ランクの冒険者パーティーでも無事に倒せるかどうか……てか、タイタンスレイヤーの連続発動とか本当に恐ろしいことするなら)


戦いの中でどうしてもゼルートを殺したいミノタウロス亜種は一撃目のタイタンスレイヤーを囮にし、ゼルートがちょっと油断したところを狙って体を回転させながら遠心力を利用。


一撃目より断然威力が上がった二撃目のタイタンスレイヤーをぶち込もうとした。

しかしそこで本能的に不味いと感じたゼルートが本気で躱し、首と胴体がさよならせずに済んだ。


激しい攻防を繰り広げる両者だが、七分も経てば明らかに差が現れだした。

ゼルートは六連戦目だが、元々魔力量が莫大なのでまだそれなりに余裕はある。


それに対してミノタウロス亜種は元々種族的にあまり魔力量が多くないこともあり。七分も全力で戦い続ければ魔力がすっからかんになってしまう。


「……もう終わりだな」


スタミナに関してはモンスターなのでまだまだ暴れられるが、魔力が切れれば当然脱力感が襲って来る。

そして強化系のスキルが使えなくなり、ゼルートとの差が大きく開く。


ミノタウロス亜種との戦いも十分に楽しめたゼルートは素早いステップで斧撃を避け、跳んで……高威力の斬撃を飛ばした。

当初はそのまま首を斬り跳ばそうと考えていたが、ゼルートの考えを読んだミノタウロス亜種は地面にめり込んだ斧を捨ててステップバック。


しかし寸でのところでゼルートも反応し、Aランクの魔物であろうとスパッと斬れる斬撃を飛ばした。


首を斬撃で斬られたミノタウロス亜種の頭を首とズレながら地面に落ち、体も体幹を失ってそのまま倒れた。


「ふぅーーーーーー、かなり強敵だったな。一応魔力を回復させておくか」


自作の魔力回復ポーションを使用し、全回復。

怪我は負ってないないので通常のポーションは使わない。


(次が最後であってほしいな)


先程の戦いが六体目なので、七体目は確実に現れる。

一分後……七体目の魔物が姿を現す。


「……デカい蛇、だな」


紫の鱗を持つ大蛇……キングヴェノムサーペント。

こちらはAランクの大蛇。ただの大蛇ではなく、猛毒を持つ。

そこら辺の治癒師では解毒出来ない毒を使う。


鑑定でそれらを知ったゼルートは心の中で一言呟いた。


(……性格悪!!!!!)


連戦に続く連戦が行われ、ゼルートでなければ満身創痍になっていること間違いなし。

しかしこれがラストの敵だと信じて気力を振り絞る……すると現れた魔物は猛毒を持つ大蛇。


蛇ならではの読み辛い動きと猛毒による消えないダメージ。

咬みつかれれば牙から毒を体内に注入される。


そして鱗は当たり前だが堅い。

生半可な斬撃では鱗を切り裂くことは出来ない。


堅牢と猛毒、そして予測不能を兼ね備えた魔物が最後の敵……かもしれない。

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