少年期[671]転移の中でも珍しい

「はぁ……どこなんだ、ここは?」


転移された場所をぐるっと見渡す、魔物は一体もいない。

転移トラップでどこかに跳ばされた場合、全く違う階層に跳ばされる。


もしくは、今回ゼルートが転移された様な場所に飛ばされ、その空間に多数のモンスターがいる。

ランクが高いモンスターが待ち構えているという場合もある。


だが、今回ゼルートが引っ掛かってしまった罠は転移トラップの中でもかなり珍しい部類だった。


「ん? あれは確か……レッドゴブリンか?」


体の色が緑ではなく赤い色のゴブリン。

ゴブリンの中でも好戦的で殺気が強く放つゴブリン。


その威圧感に後退りしてしまう者もいるが、ゼルートにとってはただの珍しいゴブリン。


「ギギャッ!!!!」


「おっ!!」


しかしここ空間に現れるレッドゴブリンはただのレッドゴブリンではない。

レベル三十と非常に高く、当然身体強化などのスキルを有している。


そしてゼルートに襲い掛かる瞬間には全身に魔力を纏って強化。

更には槌術のスキルを有しているので、鉄の手斧を持って攻撃する際には腕力が強化されている。


油断していればベテランの冒険者でも手痛いダメージを食らってしまう。


「よっ、ふん」


「アギャッ!?」


振り下ろされる手斧を指で挟んで止め、頭を右手で掴む。


そのまま丁度良い握力で頭蓋骨を潰し、頭がぐちゃぐちゃにならない程度に殺すことが出来た。


「レベルはそれなりに高そうなレッドゴブリンだったけど、楽しい相手じゃなかったな。でも、ここってもしかして……」


一先ずレッドゴブリンの死体をアイテムバッグの中にしまい、どんな罠に引っ掛かったのかを考える。

するとレッドゴブリンを倒してから一分後、空間の中央に次はブレードラビットが現れた。


「やっぱりそうか。どうやらコロシアムタイプの転移トラップに引っ掛かったみたいだな」


ゼルートが引っ掛かったトラップは跳ばされた空間にランダムで三、五、七、十回連続で魔物が現れる……コロシアム。


帰還石を使っても出られない空間であり、ゼルートの空間魔法を使用して外に出ようとしても出られない。


出現するモンスターを倒せば、次にモンスターが現れるまでに一分間の時間があるので傷を癒したり魔力を回復することはできる。

ただ、スタミナを回復できる猶予はない。


そしてモンスターを倒すたび、次に現れるモンスターを倒す難易度が上がる。


しかし全てのモンスターを倒すことができれば、それ相応の報酬が入った宝箱を手に入る。

倒し終えれば一つだけあるドアの開き、跳ばされる前に場所に戻れるのだ。


ブレードラビットのランクはD。レベルは三十三。

地上に生息するブレードラビットと比べればレベルは高い。


こちらも油断していたら大怪我をする強さを持つが、いったい次はどんな魔物が現れるのか気になっていた。


「攻撃方法はさっきのレッドゴブリンと同じなんだな」


強化系のスキルを有しているので速さや力は増しているが、頭から生えているブレードを使って切り裂く。

ただ、ゼルートの反応速度を超えるにはまだまだスピードが足りない。


先程と同じ様に指で刃を掴み、今度は頭に魔力の衝撃波を加えて瞬殺。


「確か出現するモンスターの数が三回なら次で終わりか……どうせなら五回か七回ぐらいの設定なら良いんだけどな」


今の目的は五十層のボスであるエボルサーペントを倒して素材と魔石を手に入れる。

それが第一目標なので、あまりコロシアムに時間をかける気はない。


「……おっ、フォレストオークの上位種であるナイトとタンク、アーチャーにメイジか。そしてレベルは……全員三十七。倒す難易度はしっかり上がってるみたいだな」


ランクはDとブレードラビットと変わらないが、数は四。

そして冒険者のバランスが整ったパーティーを真似るような構成。


しかしもレベルは三十七と、ブレードラビットより四つ上がっている。


「あまり時間は掛けられないけど、これで終わらないことを祈りたいな」


今回は気持ちの良い一歩を踏み出し、ゼルートから仕掛けた。

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