少年期[670]跳び過ぎた

「よし、今日も一気に進むぞ!!」


朝食を食べ終えてから気合を入れ、五十層に向けて出発。

本日も軽快な足取りで進み、出会うモンスター全てを倒していく。


「おっ、ロックモンキーとロックコングか」


出発してから十分程度でDランクのロックモンキーとロックコングの集団に遭遇。

レベルは二十から三十後半と高く、ロックコングに関しては両こぶしに岩を纏って殴り掛かる。

体術のスキルを持っているので、一撃がシャレにならない威力を持っている。


(先にロックモンキーを潰すか)


反応できない速さでウィンドカッターを放ち、体に魔力を纏っていなかったロックモンキーの首はあっさり切り落とされ、残りのロックコングは一気に警戒心を高める。


(怒ったゴリラって意外と迫力あるよな)


ロックコングの中にはドラミングを行って自身の攻撃力を高める個体もいた。

ゼルートはひょいひょいっと軽快に避けるが、外れた拳が空を切る音は冒険者に恐怖を与える。

地面や壁にぶつかれば大きく陥没させ、抉る。


だが、そんなロックコングもゼルートに迫力があると思わせても、恐怖を与えることはない。


「俺も真似するか」


ロックコングと同じく岩を拳に纏い、ボクシングスタイルで攻めに転じる。

相手が自分たちと同じような装備で攻撃してもロックコングたちはたじろぐことなく果敢に攻める……が、ロックコングが拳に纏った岩の質と、ゼルートが拳に纏った拳の質が違った。


「あっ……まっ、そうなるか」


というわけで、お互いの拳がぶつかり合えばロックコングの岩が崩されてしまう。

岩のグローブは魔力が切れない限り何度でも生み出せるが、その間をゼルートが待つ理由はない。


(せめてBランクだったらオーガジェネラルぐらい楽しめたんだろうけどな)


一分少々は楽しんだので、相手の準備が整う前にどんどん攻めていく。

ゼルートのジャブが、ストレートが……ボディやフックが立て続けに決まり、魔力を纏っていてもロックコングの体内にタメージを与えていく。


(あの時戦ったオークキングみたいに岩の鎧とか生み出せるならもう少し戦況が変わったかもしれないけど、これだけ楽しめただけ十分か)


数体の猛攻を躱しながらカウンターを決め続け、最後は顔面を殴り潰して倒した。


楽しいボクシングの時間が終わり、解体を始めようとした瞬間……一体の魔物が漁夫の利を狙うかのようにゼルートを襲撃した。


だが、気配感知で警戒を怠っていなかったゼルートはその襲撃を後方に跳躍して避けた。


「気配がバレバレだっての」


ゼルートを狙った魔物はサンドワーム。

Cランクの巨大ミミズ。


主に砂漠や洞窟に生息する魔物。

階層を跨いで移動することはないが、洞窟タイプの階層では上下左右どこからでも襲ってくるのが厄介なところ。


体当たりや体を振り回した攻撃も厄介だが、ロックリザードのブレスほど威力は高くないが、砂のブレスを放つ。

体が大きく遠距離攻撃ができて地面を潜る。

ベテランの冒険者にとっても厄介な魔物だが、肉は柔らかくそれなりの味。血も錬金術の素材として使えるので需要がある魔物とされている。


だが、その見た目ゆえに焼いても肉を食べられない者が少々いる。


(ロックモンキーとロックコングを解体する前に先にあいつを仕留めないとな)


魔物の解体を行っている最中に他の魔物が襲ってくるなど、日常茶飯事。

こういった事態には慣れている……だが、ゼルートは少し警戒を怠っていた。


魔物に対して警戒は万全だったが、罠に関しての警戒を怠っており……後方に跳躍して着地した瞬間に罠が発動してしまった。


「げっ!! これは……」


足元に魔法陣が映し出され、ゼルートが即座に移動しようとする前に転移が行われた。


転移系トラップでゼルートがとばされた場所は広い広い空間。

明かりはあるが、空は無い。


「……クソがッ!!!!!!!!!」


ダンジョンで倒したモンスターを放っておけば、ダンジョンに吸収されてしまう。

つまり、先程ゼルートが倒したロックモンキーとロックコングは残念ながらダンジョンに吸収され……ゼルートの手には残らないのだ。


新作、スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす、の投稿を始めました。

是非読んでみてください。

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