少年期[669]夕食後に解体しよう

「やっぱり人型で血気盛んな奴の相手は楽しいな」


オークやジェネラルの死体を解体しながら思わずそんなことを呟いた。

血の気が多いオークやその上位種など、大抵の冒険者からすればさっさと倒してしまいたい魔物だ。


だが、一部の戦闘凶に当てはまる者たちからすれば、ゼルートの言う通り戦いを楽しいと感じる敵である。


オーガの素材や衣服や防具の素材としても使える。

肉もそれなりに美味しいので、食用としても売れる。


ジェネラルの魔石は杖の玉としても利用価値が高いので、ゼルートは現在宝の山を解体している。


ただ、それを狙った魔物が当然現れる。

いくらゼルートが一流冒険者と変わりない解体スキルを持っていても、一瞬で終わらせることはできない。


しかしゼルートが身体強化を使用すれば、殆どのCランクの魔物は一撃で倒されてしまう。

現在の階層では稀にBランクの魔物が現れるが、ゼルートが解体している最中にはCランクのモンスターしか襲ってこなかった。


「さて……こいつらの死体は夕食を食べ終えてから解体するか」


それなりの数を解体し、そらに途中で倒した魔物の素材を解体するとそれなりに時間が取られるので、一旦アイテムバッグに死体を入れてから再出発。


なるべく早く降りて、エボルサーペントを倒して素材を手に入れる。

その考えは変わらない……が、道中で全く魔物とすれ違わないということはない。


罠であれば全て躱せるが、進路上に魔物がいるのは仕方ない。

ゼルートの脚力であれば跳んで躱すことも出来るが、それをしないのがゼルート。


「おっ、もしかしてロックリザードか?」


ロックドラゴンほど大きくはない。

だが、通常のロックリザードと比べて体が大きい巨体を持つ個体が目の前に現れた。


「ッ!!! ゴァァアアアアアアアアッ!!!!!!!」


表情が笑っている。

そして自分を見る眼が完全に狩人のそれ。


一度も手合わせしていないにもかかわらず、ロックリザードは自分が狩られる側だと認識してしまった。

だが、ドラゴンの末端として敵から逃げる気は毛頭ない。


地面に脚を叩きつけ、無数のロックランスを地面から生み出す。


「ほぅ、判断が速いな」


自分と眼があった瞬間に、速攻で攻撃を行った。

まだゼルートから戦意が漏れる前だったにもかかわらず、だ。


その判断の速さに感心しながらもゼルートはステップバックでロックランスを躱し、岩の槍が止まった隙を狙って拳に魔力を纏いながら砕いて前進。


ロックランスは地面からの攻撃とあって恐ろしい攻撃だったが、生え終わってしまえば丁度良いサンドバッグでしかない。

しかしロックランスだけがロックリザードの武器ではなく、本命は岩の槍で自身の姿を隠してから放つロックブレスだった。


鋭い岩と砂が混ざったブレスはロックランスを巻き込みながらゼルートに迫る。


(結構考えて戦うタイプなのか? 多分このロックリザードの中で定着してる攻撃なんだろうな)


ブレス上にあるロックランスは全てブレスに巻き込まれ、威力を増加させていた。

モロに食らうと少々厄介な攻撃と認識し、風の結界を展開して全ての岩、砂を弾き飛ばしながら近づく。


念のため三枚展開しておいたお陰で、ブレスがゼルートに届くことはなかった。

そしてブレスは延々に続く訳ではなく、どこかで必ず切れる。


その一瞬を狙ってゼルートはロックリザードの視界から消えて頭上に移動。


「ウィンドランス」


手に一本の風槍を握り、ロックリザードの脳を狙って投擲。


「ッ!! ……」


ウィンドランスによる一撃で痛みは感じたが、痛みはその一瞬のみ。

再生のスキルを持っていても、脳を失えば元通りになることはない。


「ロックリザードの素材か……それなりの素材で売れそうだな。てか、錬金獣のタイプとして人型と四足歩行の魔物タイプが一緒に動く様なやつを造るのもありか……ヤバいな、また造ってみたいタイプが増えた」


まだデスナイトの素材をメインにした錬金獣も素材が足りず、造れていない。


「とりあえず、このロックリザードは売らない方が良いな」


また一つ楽しみが増えたゼルートはニコニコと笑い、魔物に恐怖を与えながら五十層のボス部屋に進んでいた。

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