少年期[668]闘争心が熱く燃え上がる

オルガにガレンの聖剣制作を頼んだ翌日、ゼルートたちは早速ホーリーパレスに乗り込む。


だが、ゼルートは四十一階層に転移。

アレナたちは五十一階層に転移して二手に分かれた。


「一人で冒険するのは久しぶりだな」


エボルサーペントの素材がもっと欲しいので、ゼルートは一人だけエボルサーペントに挑もうと決めた。


「さて……さっさと下に降りるか」


一度五十階層まで降りたことがあるので空間魔法で転移することが可能だが、万が一同業者に見られたらという可能性を考慮し、ゼルートは身体強化を使いながら一気に階層を下って行った。


当然、途中で魔物とすれ違うことはあるが、どの魔物も魔力を纏ったゼルートの拳一発でノックアウト。


(あんまり手加減しないと、この辺りの魔物を直ぐに死ぬな。でも、今は手加減して戦いを楽しむ暇はないしな)


さっさと五十階層に降り、エボルサーペントを倒して素材を手に入れたい。

ゼルートとしては、ランクA状態のエボルサーペントの素材が欲しい。


だが、それはよろしくない願いなのは分かっている。


(エボルサーペントの基本ランクはBランクだからな……別にBランクの素材も十分高級品だけど、やっぱり手に入れるなら強い素材が欲しいからな……その為に同業者に生贄となってくれ、なんて言えないけど)


エボルサーペントは強敵と戦い、勝つたびに急激に強くなる。

五十層のボスに挑むような冒険者の中にヘタレや弱者はいない。


全員が強者と呼べる者たちだが、当然……ボスであるエボルサーペントも強者の部類に当てはまる魔物。

Bランクのパーティーが全滅。もしくは命からがら転移石を使って地上に逃げることは珍しくない。


「ッ!! グゥオオオァァァアアアアッ!!!!」


「オーガの群れにオーガジェネラルか……しょうがない、ちょっと相手してやるか」


戦いに喜びを感じるオーガはゼルートの強さに気付くことはなく、身体強化と腕力強化を同時使用し、更には部分的に魔力を纏って強化しながら襲い掛かる。


(手加減しなかったらワンパンで終わる奴らが多いが、それでもこの辺りの階層になればやっぱりそれなりに戦える奴が多いな……うん、やっぱりダンジョンは楽しい場所だ)


オーガの中には武器を持っている者もおり、スキル技を使ってゼルートを殺そうとする者もいた。

他には腕や脚に属性魔力を纏う個体もいた。


それがゼルートの闘争心を一層熱くさせる。


「はっはっは!!!!! 良いぞ良いぞ!! もっと殺す気で掛かって来いっ!!!!!」


平凡な冒険者であれば十体以上のオーガに殺気を全力で飛ばされれば失禁する可能性がる。

それほどの恐怖を浴びながらも、ゼルートの笑顔が消えることはない。


少々凶悪な笑みを浮かべながらオーガの攻撃に自分の攻撃をぶつけていく。


そしてそれなりのレベルと技術を持っていても所詮はオーガ。

二分もすれば残りはオーガジェネラルただ一体だけとなっていた。


「こいつらの解体もしないといけないし、お前と遊ぶのは三十秒ぐらいにしておくか」


「ッ……グァアアアッ!!!!」


オーガジェネラルは全身に荒々しい魔力を纏い、身体強化に加えて剛腕のスキルを使って腕力を底上げ。

両手に持つオーガジェネラルの大剣を振り回し、全力でゼルートを殺しに掛かる。


「おぉ~~、凄い風切り音だな。何もせず食らったら俺でも吹き飛ばされそうだ」


そんな事を言いながらもゼルートはアイテムリングから取り出したダマスカス鋼の大剣に魔力を纏って斬り合っている。

負けじとオーガジェネラルは大剣に火の魔力を纏うが、その瞬間にゼルートは水の魔力を纏って対抗。


斬り合う中でスキル技を使って攻めようとするが、ほぼ同じタイミングでゼルートも同じ技を放つ。

ゼルートとオーガジェネラルの大剣がぶつかり合うたびにダンジョン内に轟音が鳴り響く。


強者と強者がぶつかり合う戦いを観るのが好きな者であれば、永遠に観ていたいと思える剣戟だが……元々目標があるゼルートは丁度三十秒を過ぎたところでスピードのを一段階上げ、オーガジェネラルの視界から消えた。


戦う気から狩る気に変わったゼルートの速度に反応することは出来ず、気付いたときには視界が暗転していた。

そして二度と景色が戻ることはなかった。

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