少年期[667]始まるまでの時間を考えれば……

オルガに素材と聖魔石を託した後、ゼルートは冒険者ギルドに戻ってエボルサーペントの素材を追加で依頼されていた貴族に渡すようギルドに頼んだ。


聖魔石はまだ依頼者である令息の元に届ける前だったので、ギリギリセーフだった。


「というわけで、明日からまたダンジョンに潜る」


用事を全て終わらせてから一同は集まり、昼食を食べていた。


「もう一度聖魔石を取りに行くのだな。ふふ……楽しくなってきた」


「相変わらずね、アレナ。でも、私のためにってことは……私も参加しないとあれよね」


聖魔石を手に入れる為には、六十階層のボスを倒す必要がある。

宝箱の中にあまり入っていない聖魔石だが、その点はラームの強奪によって既に解決している。


「俺はどっちでも良いと思うけど……アレナがそうした方が良いって思うなら、がっつりぶつかっても良いんじゃないか?」


「ふむ、それなら私とアレナだけで挑むか?」


「さすがにそれはちょっと危険じゃないかしら。前回は六人で戦ったから余裕を持って倒せたけど、六十階層のボスはもれなくどれもAランクの魔物よ。二人だけだとちょっと不安ね」


自分の聖剣を造るために聖魔石を取りに行く。

ならば自分もボス戦に参加しなければならないと思ったが、やはりルウナと二人だけで挑むのは不安が残る。


そもそもルウナとアレナもアタッカーなので、できれば一人後衛から援護してくれるメンバーがほしいところ。


「それならラルかラームに頼んだら良いんじゃないか? 俺はこの前のボス戦で満足してるし」


従魔の中にはもう一体、ゲイルもいるがルウナと同じくかなり接近戦に偏っている。

なので、遠距離からの援護にはあまり向いていない。


「そうね……なら、ラームに頼もうかしら」


「私はどちらでもいいが、アレナがそう言うならラームに頼むか」


「決まりだな。今回はアレナとルウナがメインでラームが後方から援護。そんで……ゲイルたちもがっつり戦いたいだろうから、もう一回六十階層のボスと戦うことになるだろうな」


「……改めて考えるとハードスケジュールね」


先日六十階層のボスを倒し、二日後には五十階層に戻って再び六十階層のボスを目指して超スピードで探索を行う。

そしてまた数日後にはダンジョンに潜り、従魔たちがメインで戦う。


(普通の冒険者からすればあり得ないスケジュールだろうな……でも、アレナはそう言いながらも慣れた表情だよな)


あり得ないスケジュールや戦いには慣れてしまったので、言葉に出せど表情には余裕な部分が見える。


「俺たちにとってはこれが普通だろ」


「それもそうね。でも、ゼルートとしてはデスナイトと戦いたい……じゃなくて、素材が欲しいんでしょ」


「できれば欲しいな。造りたい錬金獣がある。だけど、それは二回ボスを倒し終えてまだ時間があればの話だ」


それなりに自由に動けているので、ゼルートとしてはまず仲間の欲求や要件を満たすのを優先。

それが終わってまだ戦争までに時間があるならば、デスナイトを倒して素材を集めたいと考えている。


(隣国と戦争になるって噂はほぼ確実。ただ、絶対に戦争が起きると決まって直ぐに始まる訳じゃない……向こうが問答無用で攻めて来たら、それは単なる戦争じゃなくて侵略戦争だ。それが始まれば、どちらかの国が潰れるまで終わらない……まっ、仮に侵略戦争が始まっても負けるつもりはないけどな)


ゼルートの速さと突進力をもってすれば、一気に隣国の主都に突っ込むことも不可能ではない。


(戦争が始まると決まってから……おそらく数週間ぐらいか? それぐらいの猶予はあるだろ。それなら、戦争が始まる前にデスナイトの素材や魔石を必要な分だけ集めるのも不可能ではないか?)


楽しい趣味に必要な素材が集まると思うと、それはそれで楽しみであることに変わりない。


「そういえばゼルート、エボルサーペントの素材も令息様に送ったんでしょ」


「あぁ、雷の聖剣を造るには相応しい素材だからな」


「自分用はいらないの? それなりに貴重な素材よ」


武器の素材にしても、錬金獣を造るにしても貴重な素材……令息に全てを渡したわけではないが、個人的にはもう少し欲しいと思っていた。


「……それについてはちょっと考えるか」

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