少年期[666]直ぐに集める

「おう、お前さんがゼルートか」


「あぁ、俺がゼルートだ。あんたがオルガさん……だよな?」


「俺がオルガだ。待たせちまって悪かったな」


「いや、大したことない」


リバーシを使って時間を潰していたので、三十分ぐらいであればあっという間に過ぎたように感じた。


「そうか……見た目はまだガキのくせに、恐ろしい力を隠し持ってんな」


見た目が純粋なドワーフなのにそれなりに身長があり、ごつい体格をしているオルガには言われたくない。

そう思ったが、口には出さなかった。


「評価してくれるのは嬉しいよ」


「お前さんの実力を素直に評価できない奴はただの馬鹿だ。そんで、ドルント。お前がいるってことは、俺はゼルートに何かを造れば良いのか?」


「おう、その通りじゃ。こやつは六十階層のボスを倒し、運良く聖魔石を手に入れたんじゃ。とびっきり量が多いやつをな」


「ほぅ……なるほど、それは確かに運が良いな」


ゼルートの実力を大体把握したオルガはゼルートとその仲間たちがならば、六十階層のボスであっても余裕を持って倒せると分かっている。

その件に関して運が良かったとは思っていない。


だが、ドルントのテンションが上がるほどの量がある聖魔石を手に入れた。

それは個人の実力ではどうにもならないステータス……運が良くなければ手に入らない。


「それで、俺はお前さんの聖剣を造れば良いのか?」


「いや、俺はちょっと前に参加したオークションで雷の聖剣を手に入れた。だから、俺じゃなくて俺の父さんの聖剣を造ってほしい」


「お前さんの親父さんの聖剣か……ちなみに親父さんはどれぐらい強いんだ」


オルガにとって、高性能の武器を造るのであれば、ある程度使い手の力量も知っておきたい。


「父さんは元Aランク冒険者だ。今も毎日ブラッドオーガと模擬戦してるだろうから、実力は落ちてない筈だ」


「……ブラッドオーガってのがどんなオーガかは知らねぇが、強いモンスターってのはなんとなく解る。そんな奴と毎日模擬戦してるんだったら、信用出来る使い手だな……分かった、お前の親父さん専用の聖剣、造ってやろうじゃねぇか」


「ありがと。それじゃ、使えそうな素材も渡すよ」


「それはありがてぇな。ちょっと場所を変えようか」


工房の中へと入り、広いテーブルの上にゼルートはガレンの聖剣を造る為にまずは聖魔石のインゴットを置き、使えそうな素材と魔石を並べていった。


「……おい、お前さんのアイテムリングはいったいどうなってるんだ?」


「まぁ……そこは企業秘密ってことで」


「冒険者なら話したくないことの一つや二つあって当たり前か。余計な検索をして悪かった。にしても……随分と良い素材や魔石が揃ってるな」


テーブルの上には一流の鍛冶師であるオルガも少々驚く素材と魔石が揃っていた。


「ちょっと前にダンジョンから溢れ出したモンスターの大群と戦ったんだよ」


「……あぁ、あれか。お前さんが悪獣を一人で倒した切っ掛けになった件か」


「そ、そうだな。その件で俺を含め仲間たちも多くのモンスターを倒したから、それなりに材料は揃ってるんだ」


「そういうことか。納得がいった。それで、親父さんが一番得意な属性は風だったな」


一緒に使う素材や魔石によって、聖剣の属性も当然変わってくる。

オルガは真剣な表情でテーブルに置かれた素材と魔石と睨めっこしながら、約十分ほど考え込んだ。


そして最高の聖剣を造るための材料を選び終わり、残った素材と魔石はアイテムリングの中に入れる。


「ゼルート、この日までには完成してほしいって期限はあるか」


「そろそろ隣国との戦争が始まると思うから、二週間いないには出来上がってくれてると嬉しい」


「二週間いないか。それだけあれば十分だ」


「あっ、それと出来ればもう一本造ってほしいと思ってるんだ」


「ん? まだ聖魔石が余ってるのか?」


二週間以内にもう一本聖剣を造ることは可能なので、アルガとしては金さえ払ってくれれば問題はない。


「いや、明日からまた潜って六十階層のボスを倒しに行く。そこでもう一度聖魔石を手に入れたら、俺のパーティーメンバーの聖剣を造ってほしいんだ」


「お前さんのパーティーメンバーの聖剣か……まっ、信用できる使い手だとは思うが、一応一目視させてくれ」


「分かった。材料が揃ったら連れてくる」


「おう。とりあえず一本目の聖剣ができあがるのを待っててくれ」


オーダーメイドの聖剣ということで、前金を渡してからゼルートとドルントは鍛冶場から出て行った。

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