少年期[663]そんなシンプルな感じの方が良いかも
「うぅ……皆がそう思ってくれてるのは嬉しいけど、聖剣を造るには聖魔石の量が足りないでしょ」
「それはそうだな」
依頼分の聖魔石をギルドに渡し、もう一本分はガレンの聖剣を造る材料にする。
余った分で造れるのは短剣一本分。
これではロングソードの聖剣を造ることは出来ない。
「でも、それなら更に調達すれば良いだろ。依頼は達成したようなもんだ。後は……戦争が始まるまで潜れば良い。三日もあれば最下層まで辿り着けるしな」
途中で遭遇する魔物との戦闘を下げれば、先日よりも速いペースで階層を降りれる。
そしてラームが同じように魔物から運を奪えば、再び聖魔石が手に入る可能性が上がる。
「ふむ、賛成ですね。次のボス戦はもう少し戦う人数を絞った方がいいかと思います」
「ゲイルの意見に賛成だな。六人で戦ったらあっという間に終わってしまう」
やや話が変わってきた。
先のボス戦では、ボス戦というには早く終わり過ぎた。
それを不満に感じていた組がもう一度ボスと戦いと言い始めた。
「ほら、俺らの大半は血気盛んだし……もう少しボス戦をクリアしとかないと満足しそうにないだろ」
「……ふっ、ふふふ。確かにそうみたいね……分った、ゼルート、私の為に聖剣を一本造ってもらってもいいかしら」
「勿論だ。んじゃ、とりあえず冒険者ギルドの方に行こう。それと今日と明日は休憩だ」
ガレンの聖剣を造るために、一旦鍛冶ギルドによってから鍛冶師の元にいかなければならない。
それと、本人たちはまだまだ暴れたりないと感じている部分はあるが、十分な休息は必要。
戦争が始まるまで何をするかが決定し、まずは冒険者ギルドで依頼達成を報告して聖魔石を預ける。
それが終わればアイテムバッグに入ってる魔物の素材の買取を頼み、換金してから夕食の時間。
ダンジョンから無事に戻ってきたことと、六十階層のボスを倒して目的の物を手に入れたお祝いということで、高級レストランに入り、店員が少々引くほどの量を食べた。
主にラームとラルは店員や周囲の客達からその小さな体のどこにそんな入るのかと、強い疑問を持つ目を向けられていたが、本人たちは気にせずテーブルに置かれた料理をマイペースに食べ続けた。
そして風呂に入り終えたゼルートたちはダンジョンでの疲れを取り除くようにベッドに入ると、直ぐに眠りについた。
翌日、早めに寝たお陰で丁度良い時間に起きることに成功。
朝食を食べ終え、着替えたら直ぐに鍛冶ギルドにゼルートは一人で向かった。
「おう、来たか」
「ドルントさん、もしかして朝からずっと待ってたのか?」
「そんな訳あるかい。そろそろ来るかと思って待っておったんじゃ。聖魔石は持っとるな」
「あぁ、ちゃんと持ってるぞ」
「よし、それじゃついて来い」
言われるがままについて行くが、途中は沈黙が支配……することはなく、ドルントの方から喋りかけてきた。
「そういえばお前さん、そろそろ起こるであろう戦争に参加するんじゃったな」
「おう、参加するぞ。冒険者だしな」
「……その辺りは騎士や兵士、傭兵の仕事じゃと思うのだが……とりあえず参加するんじゃな」
「決定事項だ」
よっぽどの問題が起きない限り、隣国との戦争には参加する。
それはゼルートの……ゼルートのパーティーにとって決定事項だった。
「お前さんの様な怪物が戦争に参加すれば、勝ったも当然じゃろうな」
「怪物、ね……戦鬼覇王よりもそんな単純な二つ名の方が良いかもな」
「戦鬼覇王というのが、お前さんの二つ名なのか?」
「いや、まだ確定じゃない。他人が生み出した二つ名候補らしい」
「ふむ……良いのではないか? 実際にお前さんが戦う姿を見たことはないが、その名に相応しい戦いをしたのだろう」
ダンジョンから溢れ出した魔物の大群との戦闘を思い出すと……確かに戦鬼覇王という名に相応しい活躍をしたかもしれないと思ってしまった。
だが、本人としては少々恥ずかしいと感じる二つ名だった。
「そうかもしれないけど……とりあえず俺の二つ名は置いといて、戦争ではちゃんと暴れて隣国をボコボコにするつもりだ」
「そうかそうか、頼もしい限りじゃ。だが……ゼルート、お前さんは戦争に参加した際にもしかしたら貴族と少々揉めるかもしれんな」
まさかの予言に盛り上がっていたゼルートの気分は一瞬で鎮火された。
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