少年期[652]造ってみたい

「ふむ、とても良い死合であった」


戦闘開始から約五分後、結果は当然……ゲイルの勝ち。

ただ、ゲイルはデスナイトとの戦いを得てとても満足そうな顔になっていた。


(さすが死の騎士、デスナイトといったところか。Bランクとは思えない剣技……特に急所を狙った攻撃の鋭さは異常だった。だが、故に読みやすかったな)


デスナイトの剣技は七割方急所を狙った攻撃を行う。

それが理解出来れば、断然対処しやすくなる。


ただ、闇魔法と剣技を駆使した遠距離攻撃も行えるので距離を取れても油断出来ず、至近距離で遠距離攻撃を放つこともある。


加えて、打撃戦も不得意ではない。

武器と武器がぶつかり合う膠着状態から蹴りを入れられる場合もあり、吹き飛ばされる冒険者は少なくない。


(動きは多少読みやすかったが、それでも先程戦ったホーリーリビングデットの軍団より数段が殺気が上だった。そういった点を考えれば、また戦いたいと思える魔物だな)


ここでデスナイトと死合を行えたことに感謝しつつ、真っ二つに切断された死体をゼルートの元に運ぶ。


「お待たせしました、ゼルート殿」


「お疲れ様、ゲイル。楽しかったか」


「えぇ、とても楽しめました。Bランクとは思えない実力を持っていました」


「俺も戦い観ててそれは思った……こいつ、使えそうだな」


ゲイルとデスナイトとの死合は全て観ていた。

同じ感想を持ち、自分が先程戦ったホーリーリビングデットジェネラルよりも強いと確信を持って言える。


そんなデスナイトの死体は綺麗に一刀両断されているが、綺麗な状態が保たれている。

そして魔石も無事……この状況を見て、久しぶりに造ってみたいと思った。


「もう二、三体ぐらいデスナイトが現れてくれたら良いんだけどな」


「ゲイルと良い勝負してたし、ゼルートも戦いたくなって当然よね」


「いや、まぁそういった感情もあるけどさ……こいつの素材を使って、錬金獣を造ってみたいと思ってさ」


錬金獣、それはゼルートが錬金術によって通常の錬金術師たちが造りだすゴーレムよりも超高性能な存在。

ゼルートの独特な制作方法により、従来のゴーレムとは大きく異なる存在……それが錬金獣。


既にゼルートは幾つもの錬金獣を持っており、実家にも警備代わりに十六体の錬金獣がガレンの手と足になって動いている。


「錬金獣て、あの私たちの仕事を奪いそうなほど高性能な存在よね」


「いや、別に奪いはしないって。それに基本的に錬金獣は頼まれても造るつもりはないし」


「基本的にってことは、例外があるんでしょ」


「……そりゃ俺の気を引く様な物を報酬として差し出されたらなぁ……造るかもしれない。でも、造るのは一体。せいぜい数体程度の話だ」


「けど、国から大量に造ってくれって頼まれたらどうするのよ」


国から大量生産の申し出。

それが絶対に起きないとは断言出来ない。


(俺の錬金獣を見れば、もしかしたら国からそんな依頼が来るかもしれないな。でも、国王だって馬鹿じゃないんだから、錬金獣の大量生産なんて頼まないと思うんだけどな)


錬金獣が大量生産されれば、兵士や騎士、冒険者の仕事が奪われてしまう。

そんなことになれば、当然「錬金獣なんて存在は抹殺すべきだっ!!!!」なんて考えを持つ者が現れてもおかしくない。


一応貴族の一員ではあるが、ゼルートの職業は冒険者。

あまり同業者の仕事を奪う様な存在を広めようとは思わない。


「受けないな、そんな依頼。国王様も馬鹿じゃないだろうから、戦闘職の仕事を奪う様な真似はしないだろ」


「……それもそうね。ところで、どんな錬金獣を造るつもりなの」


「単純にデスナイトを強化した個体を造ろうかなと考えてる。ただ、武器は二刀流。もう少し他の魔物の素材も欲しいから、細かい部分は考えてないけど……とりあえず接近戦に特化した錬金獣だな」


「デスナイト単体でも十分強いのに、そこに改良を加えるのね……どんな改良を加えるのか知らないけど、絶対にBランクの域は超えるでしょ」


「そうだな。確実にAランクの魔物たちの域に達すると思う」


まだまだどういった錬金獣にするのか細かく定まっていないが、生前のデスナイトには出来ない技術を取り入れようと考えていた。

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