少年期[651]困った時はジャンケン
「……あらら、あれってデスナイト、じゃないか?」
「もしかしてなくてもデスナイトで合ってるわよ。今日一日で騎士系の魔物と何体遭遇するのかしら」
五十一階層から六十階層では騎士系の魔物が出現する割合は高いが、デスナイトは滅多に遭遇しない。
「確かBランクのモンスターだったよな」
「そうね。でも、実力的にはAランクでもおかしくないと私は思ってる」
リビングデット系のモンスターと同じく、鎧の中は空洞。
しかし、デスナイトはしっかり兜まである。
(実力はAランクでもおかしくない、か……なら、ホーリーリビングデットジェネラルより強いのは当然か)
予想外といえば予想外の事態。
滅多に遭遇しない魔物なので、普通のパーティーなら動揺してしまうだろう。
だが、ゼルートたちはいたって冷静。
「それで、誰が戦うの? 私は戦わないけど」
「あれ? そこは戦う気満々になるところじゃないのか」
Bランクぐらいの敵にビビる必要はない。
例えAランクの魔物が不意に現れたとしても、自分たちなら余裕で勝てる。
それはアレナも再認識して完全にインプットした。
だが、それとこれとは話が別だった。
「私はさっきのホーリーリビングデットの軍団を相手に十分暴れたわ。だからあいつと戦おうなんて思わない」
「……なら仕方ないな。俺はさっきジェネラルと一対一で戦ったし……なら、他の四人からいくか。一応聞くけど、デスナイトと戦いたい人」
一応残り四人に尋ねると、全員が手を上げた。
(だよなぁ~~~~)
こうなることは解っていた。解っていて一応訊いた。
こうなった場合、決める方法はただ一つ。
「よし、お前らジャンケンで誰がデスナイトと戦うか決めろ」
この世界にジャンケンという勝負は存在しないが、四人はゼルートから教えてもらっている。
直ぐにジャンケンを始め、デスナイトと戦う者を決める。
その間……デスナイトは全くゼルートたちを攻めようとしない。
(デスナイトって物騒な名前なのに、相手グループの中からまだ誰が自分と戦う決まっていなければ、手を出さないのか。デスナイト……直訳すれば死の騎士だよな。騎士道精神がまだ残ってるってことか)
ゼルートの考えはまさにその通りであり、デスナイトはルウナたちの中から誰が自分た戦うのか決まっていないからこそ、むやみに手を出そうとしない。
「ふぅーーーー、なんとか勝てました。この勝負、少しの間ですが、楽しませていただく」
ジャンケンの勝者はゲイル。
ゲイルが戦意に満ち溢れた表情をしながら前に出ると、一瞬でデスナイトの纏う空気が暗く冷たいものに変わった。
「むぅ……やはり戦いたいな」
「ジャンケンに負けてしまったのだから仕方ありません」
「はぁーーー……もう一体くらいデスナイト現れないかなぁ~~」
なんとも恐ろしいセリフをサラッと吐く。
(同業者が聞いたら卒倒しそうなシチュエーションね)
常識だが、冒険者のランクとモンスターのランクはイコールではない。
BランクのモンスターをBランク冒険者が一人で倒すのは基本的に不可能。
そもそもの身体能力が違うので、特殊なスキルやギフト、もしくは高威力な攻撃を持っていなければソロで倒すのはゼロパーセントに近いのだが……このパーティーにはその例に当てはまらない例外しかいない。
「さぁ……短い時間ではあるが、存分に斬り合おう」
「…………」
お互いに剣を抜き……斬り合う前から魔力を纏った。
(雷の魔力と闇の魔力……属性の相性は関係無い。ただ、デスナイトの件はグリムリッパ―との鎌と同じ効果がある筈だ)
本場の死神には及ばないが、生命力を狩る効果が付与された鎌を持つ小さな死神。
小さいとはいっても、体格は一般的な大人ぐらいはある立派な魔物。
一斬りで数年、何十年と持っていかれることはない。
ただ……致命傷を食らえればそれぐらいの生命力を奪われることある。
「ゲイル、あまり……いや、基本的に相手の斬撃は食らうなよ」
「承知!!」
強敵と戦えることに喜びを感じている。
しかし、ゼルートの言葉が聞こえないほど興奮してはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます