少年期[645]元気良く一発
「いただきます」
ぐっすりと睡眠を取り、朝から豪華な朝食を食べていく。
料理が完成し、早速食べようとしたとき……一体の魔物が現れた。
「ブルルルルゥゥ……」
「おいおい、いきなりかよ。せめてご飯食べ終わるまで待って……くれないよな」
現れた魔物はワイルドグレーターボア。
ワイルドボアの上位種にあたる猪の魔物。
ランクはワイルドボアの一つ上でのCランク。
通常種と同様に突進、突進からのかち上げが得意。
全力ダッシュの威力だけなら、Bランクの魔物に匹敵する威力を持つ。
突進が得意な魔物特有の横からの攻撃に弱いという情報を吹き飛ばすかのように、毛皮がCランクの中でも堅い。
「私がやる。早く朝食を食べたいから全力で終わらせて来る」
「おう、解体は食べ終わってからやるから……とりあえずぶっ飛ばしちゃえ」
「了解!!!」
素の状態から身体強化、脚力強化、腕力強化、最近会得した剛力を同時使用。
自分たちに向かって殺す気で突進してきたワイルドグレーターボアのタイミングに合わせ、全力で右フックをぶちかました。
ルウナの全力フックが当たった瞬間、轟音がダンジョンに響いた。
「……ルウナ、ちょっとやり過ぎじゃない」
「そう、かもしれないな」
殴り飛ばされたワイルドグレーターボアは完全に頭部がやられ、殴られた箇所は綺麗に陥没していた。
(全力で殴ったって言葉に偽りはないかもしれないけど、綺麗な一撃だったな)
本当の意味でルウナの全力パンチが炸裂すれば、頭部は粉々に吹き飛んでいる。
しかし今ルウナに殴られたワイルドグレーターボアの頭部は綺麗なクレーターが生まれ、脳がグシャっと潰されたが、頭は綺麗に残っている。
(てか、中にダメージを浸透させることに意識を割き過ぎて、威力は壁にぶつかって響いたほどじゃないな)
それでもゼルートはルウナの一撃を褒めた。
今の攻撃は冒険者が目指す理想の攻撃だと言える。
(魔物の脳が欲しいとかそういう特殊な依頼内容じゃなきゃ、殆どの素材が綺麗な状態で手に入ったんだ。一本の牙は衝撃でボキっと折れてるけど……まぁ、それぐらいは許容範囲だよな)
あっさり一撃で倒されてしまった死体をアイテムバッグの中にしまい、今度こそ朝食を食べ始めた。
「ダンジョンの中なのだから当たり前だけど、朝から物騒ね」
「私としては綺麗に一撃ぶちかますことが出来たから、悪くない運動だったぞ。アレナも横からスパッと斬れただろ」
「斬れるか斬れないかでいえば斬れるけど……やっぱり朝からあんな魔物と戦うのは遠慮したいわよ」
朝から軽く運動するのは悪いと思っていない。
寧ろ鎮まった体を朝一で起こすのはあり。
ただ、せめて仲間内の模擬戦ぐらいにしておきたい。
(確かにワイルドグレーターボアぐらいなら一太刀で終わらせられるけど……というか、やっぱりルウナは魔物を冒険者らしい意味で倒すのが上手くなったわね。傷の有無で言えばロングソードを使う私よりも傷付けずに倒せるかも)
状況にもよるが、場合によっては冒険者歴がないがアレナよりも、素手での戦闘が得意なルウナが魔物を傷付けずに倒せることもある。
「そういえばワイルドグレーターボアの肉は食べたことがなかったような……アレナはあるか?」
「あるわよ。肉が厚くて少し噛み切りにくいけど、味は良い。その分厚さも味わいの一つね」
「なるほど……解体したら今夜の晩飯に食うのもありだな」
基本的に全員食べることに関しては欲があるので、朝食を食べている最中にもかかわらず腹の音が鳴った。
そんな気が抜けた状況に笑いながらも皿を空にし、六十階層のボスを目指して階層を降り続ける。
「ふむ、なんだか宝箱が五十一階層までよりも多く見つかっている気がするのだが……私の勘違いか?」
「ルウナ様の考えに同意ですね。何倍も多く発見してはいませんが、五十一階層までと比べれば確かに宝箱の発見数が多くなっているかと」
ルウナとラルの考えは正しく、五十一階層に突入してから宝箱の発見数は一点五倍ほど上がっていた。
「そうかもな……魔物の強さは確実に上がってるし、上手く進めずにゲットできないパーティーが増えたんじゃないか?」
考えなしに零したゼルートの言葉は意外と外れていなかった。
魔物の強さ、設置された罠の脅威もあって視界に宝箱が映っているにもかかわらず、手に入れられないという悔しい場面に遭遇してしまうパーティーも多い。
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