少年期[612]そもそも見た目が怖い

ゼルートが楽しそうに笑っているのを見ても、リビングデットジェネラルの落ち着き具合は変わらない。


お互いに身体強化を使い、武器に魔力を纏わせ……まずはゼルートが先に仕掛けた。


「よっ、ふん、ほいっ!!」


「…………」


小さい体からは信じられない力で斬撃を繰り返しているが、リビングデットジェネラルは長剣と盾を上手く使って連撃を流している。


(へぇ~~、意外と流すのが上手いな)


まだまだゼルートは本気を出していない。

出していないが、それでも受け流しが上手いという印象を受けた。


それはゲイルも同じ印象を持っていた。


(もしかして結構戦闘経験がある感じ? それともジェネラルとして生まれたかお陰で既に持っていた戦闘センス? どちらにしても、そこそこ楽しめそうだな)


今の攻撃速度では戦況が動かない。

そう確信したゼルートは少々ギアを上げる。


斬撃の速度が上がり、拳や蹴りの速度も上がった。

それだけではなく、一撃の重さも上がっているが……それでもジェネラルは攻撃を全て流しす。


繰り返された流れに再度驚かさる。


「……マジか」


ギアを上げてから数十秒は攻撃を続けているが、どれもまともにクリーンヒットしない。

ゼルートとしては一撃ぐらい良い感じに決まるだろうと思って攻撃していたのだが……綺麗に流されてしまう。


何かスキルを使っている訳ではない。

ただ単純に技術を使って攻撃を流され、クリーンヒットしない。


だが……ジェネラルは中々反撃に出れない状態が続いている。

今のところミスなく攻撃を流せているが、反撃に出るかどうか……中々決められない。


ジェネラルもまだ完全にギアを上げてはいないが、相手の余裕な表情を見ていると中々勝負に出られない。

しかしリビングデットジェネラルにはスタミナという概念がない。


体が動く限り、永遠にトップギアで動き続けられる。

勿論魔力は有限だが、体力に関しては人が及ぶ領域ではない。


いくら鍛えているゼルートでも、リビングデット系の魔物と体力勝負をすれば、いつかは負ける。


「おっと!! いきなり仕掛けてきたか」


呪法のスキルを有しているジェネラルは長剣に呪力を纏わせ、反撃を行う。


今のところ刃に魔力を纏っていれば長剣が砕けることはないが、ジェネラルが最大まで呪力を高めれば、今ゼルートが使っている長剣はいとも簡単に腐ってしまう。


(……直接食らったら面倒なタイプの攻撃だな。今のところは治癒速度が遅くなる……もしくは一定以上の回復力を持つ魔法でなければ、傷を癒すことが出来ないってところか……やっぱり呪力って恐ろしいな)


ゼルートは過去に創造のギフトを使って解呪のスキルを得ているが、モンスターや人から食らう呪いは聖魔法、もしくはスキルレベルの高い光や闇魔法、後は専用のポーションを使うか解呪のスキルを使用しなければ治らない。


ただでさえ光や闇魔法を習得している冒険者少ないのに、聖魔法や解呪のスキルを有している冒険者もっと少ない。

呪力による攻撃は冒険者が嫌う攻撃ベストスリーには入る……かもしれない。


「……直ぐ治せるけど、怖いことに変わりはないから一応変えておくか」


長剣に纏う魔力を通常の魔力から光に魔力に変え、ジェネラルの呪力に対抗する。

リビングデット系の魔物にとって光の魔力は有毒だが……臆さずに攻め続ける。


片手で斬撃を繰り出し、もう片手でゼルートの攻撃を受け流す。

盾にも呪力が纏われているので、光の斬撃を受けてもそう簡単に壊れない。


(呪力の斬撃に呪いの飛斬、そしてシールドタックル……うん、恐ろしや~恐ろしや~って感じだ。呪力って目に見えて怖いんだよな。効果云々の前に見た目が怖い……まっ、俺も使えるんだけどさ)


ゼルートの才能やセンスと関係無しに、チートという名の創造を使うことで呪力を扱えるようになる。

だが、あまりモンスターとの戦いで使おうとは思わない。


(解呪するのってちょっと時間掛かるし……それに、一回呪いに掛かった物を解呪したからって食べる気にはならないしな)


勿論リビングデット系の魔物は食べない。

しかし魔物の中には食べられる個体が多いので、普段の戦闘ではあまり使おうと思わない。


そしてなんだかんだで攻防戦が三分ほど続き、ゼルートはもう一段ギアを上げた。

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