少年期[611]比べれば強いが、足りない

ゼルート達とリビングデットナイト騎士団の戦闘が始まった。


数は騎士団の方が十一と上だが、質は圧倒的にゼルート達の方が上回っている。

だが、リビングデットナイトの力はジェネラルの統率によって引き上げられていた。


よって、ゼルート達の手加減を加えた一撃では破壊されない。


……ぶっ飛ばされはするが、その命が簡単に砕けることはない。


「おぉっ!? 意外と堅くなってるんだな」


「ほぉ~~……ちょっとは楽しめるかもしれないな」


「そう? 身体能力はそこそこ、技術も素人よりは上。プロの一歩手前……直ぐに終わるでしょ」


「アレナが強気なのは珍しいな」


相手の戦力を冷静に対処し、確実に仕留める。

そんなイメージを持っているゼルートとしては意外な発言。


「さっさと終わらせたいと思っているだけよ」


「アレナ殿らしい。ただ……やはりこの程度の相手ではあまり楽しめそうにはありませんな」


風の魔力を纏ったゲイルの長剣がガードしている長剣ごとリビングデットナイトを斬り裂く。


「貫通力、速度、回転を強化したらそうでもないね……穴だらけにして分断させちゃえば良いか」


少々触手を調整すれば問題無いと解かったラームは横一列に触手を連続で放った。

超苦戦的な攻撃……確かに速いが、全力で躱そうと思えば躱せるかもしれないが……急に足が動かなくなった。


足を見るとラームの触手が絡んで、動きを止めていた。

地面を通して動きを拘束していたので、絡まるまで気付くことが出来なず……そのまま鋭利な触手によって貫かれ、体が上下に分断されてしまう。


「平均的に能力は高い……でも、私と戦うには少々パワーが足りませんね」


ゲイル、ラーム、ラル。

この三体の中で一番パワーがあるのはラルなのだ。


今は人の姿で戦っており、外見からは全く怪力を有している様には思えないが、中身は立派なドラゴン。


リビングデットナイト程度では、その怪力を受け止めることは出来ず……結果、潰されてしまう。


「まぁ……一般的なリビングデットナイトと比べれば実力は上がっているが、あまり良い壁でないな」


まだまだ成長期のルウナからすれば、目の前の敵は良い運動相手にすらならない。

もう少し身体能力を上げ、技術を磨いてから出直してこい!! といったところ。


火の魔力を四肢に纏わずとも、ただの魔力を纏えば容易にその体を貫く。


「ふんっ!!! ……残りはあいつか」


手に持つ長剣を蹴り飛ばし、渾身の踵落しをぶち込むと……勢い余って床までバキバキに砕いてしまった。


「四つにも斬り裂けば……十分よね」


鎧の中で浮いている魔石を斬り裂かず、体を四つに斬り裂けば流石のリビングデットナイトも動けない。

中にはあまり細かく斬り刻まれていなければ、斬られた部分と本体がくっつくこともあるが、今回倒した個体にその様な能力はなかった。


「ほいっ! よっと……これが一番楽というか、手っ取り早いよな」


リビングデットナイトの動きを読み、魔石の位置までの障害物が亡くなった瞬間を狙って貫手を放つ。

そして鎧を貫き、魔石を無理矢理引っこ抜く。


すると糸が切れた操り人形の様にリビングデットナイトの動きが止まる。


「これで、ナイトは全部終わりか……群れの長は大体最後の最後まで高みの見物だよなぁ……でも、ここの魔物は逃げようとしないから良いよな」


地上の野性は、よっぽど自分の強さにプライドを持っているか、もしくは絶対に逃げられない状況だと思った場合を除いて……群れの長は状況が不利になれば逃げる。


だが、ダンジョンの魔物は大概逃げようとはしない。

一度食って掛かれば……襲うとすれば、最後まで襲う。


「私はパス」


「私はどちらでも、って感じです」


「う~~~ん……僕も、今回はいいかな」


「むぅ……それなら、こいつの相手はゼルートに譲ろう」


「ゼルート様が望むのなら、お譲りしますが……どう致しますか?」


珍しく全員がゼルートにそこそこ強い奴との戦闘を譲ると申し出た。

ゼルートとしてはラル同じく、どちらでも良いのだが……全員が譲ってくれるという状況は珍しかったので、一人でジェネラルに挑むことにした。


「よし、それじゃあ戦るわ。待たせて悪いな……お互いに満足出来るように死合おうぜ」

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