少年期[578]近寄りたくない存在?
「全く……今すぐにでもSランクになれるんじゃないか?」
「なれたとしても、なる気は無い。そう言っただろ」
「そうだったな……しかし、そんな強者である坊主が俺の店に何の用だ? お前さんレベルの冒険者ならこの店に置いてある武器や防具よりも立派なもんを持ってるだろ」
この店に置いてある商品のレベルは決して低くない。
平均よりは確実だ。
だが、ゼルートが持っている武器や防具と比べれば確かにランクは下がる。
「そうだな。でも……こうやって武器や防具を見てると楽しいっていうか落ち着くというか……とりあえず飽きないんだよ」
「……はっはっは!! 子供のくせに珍しい趣味だな」
「自分でもそう思うよ。でも、やっぱり飽きないよ」
それは店主も解る。
ゼルートの武器を見る目をみれば……どれだけ楽しんでいるのか、満足しているのかが解るのだ。
(Sランクのモンスターを倒してしまう冒険者なんて基本的に変人だろうと思っていたが……まさかこんな子供で変わった趣味を持っているとはなぁ……いやはや、今日は本当に幸運な日だ)
神という存在がもしいるならば、感謝しようと思えた。
そこで店主は一つ気になっていた事をゼルートに尋ねた。
「そういってくれると嬉しいよ。ところでお前さん、女はいないのか?」
「女って……恋人って事か?」
「そうだよ。坊主の戦いに関する武勇伝は聞くが、女に関する武勇伝はあまり聞かないからな」
真の強者には必然と、異性が寄ってくる。
英雄色を好むという言葉もある。
ゼルートの実力は英雄と呼ばれる存在となんら違いは無い。
寧ろ上回っている可能性だってある。
そんな超雄に女が集まらない? そんな事はあり得ない。
ゼルートの見た目がスーパーブサイクだったり、異臭を放っている訳でも無い。
今は子供だが、これから成長すればイケメンと呼ばれる部類になるであろう容姿を持っている。
そして性格もいたってまともな常識人だ。誰が相手でも喧嘩を売ってきた相手を潰そうとするところ以外は。
(Sランクモンスターを一人で倒す様な実力者だ。貴族の娘から求婚されてもおかしくない存在だと思うのだが……もしかしたら色恋に関しては奥手なのか?)
真実としては、興味が無い訳ではない。
ただ、今は色恋よりも冒険が一番……と思いながらも男女の行為には興味津々の童貞だ。
「……なんて言うか、興味はあるんだけど今は仲間と冒険してるのが一番楽しいんだよな。ほら、恋人とかできたら動きが制限されるかもしれないだろ」
「そりゃ相手によってはそうかもな」
仮に貴族の娘と恋人になれば、それはそれで面倒事が押し寄せてくるかもしれない。
ただ……現在ゼルートの名声を知っていても、自分の娘をゼルートの嫁に送ろうと考える親は少ない。
なぜなら……ゼルートやその兄と姉が残した逸話がまだ残っているからだ。
今となっては五、六年も前の話だが……実際にその戦いを観ていた者達は思った。
なんなんだこの怪物はと。
「それに……昔ちょっと色々とあってな。俺が貴族から好かれることはあんまり無いと思うぞ」
「大きな喧嘩でもしたのか?」
ゼルートの実力は本物だ。そう信じている店主はゼルートが戦いで負けるとは思っていない。
「まぁ……喧嘩といえば喧嘩だな。結構派手な喧嘩だった気がするけど」
三つの家を潰したので派手という言葉だけでは済まない。
ただ、ゼルートにとってはその程度の喧嘩だった。
「勿論それには勝った。でも、その一件を覚えている者がいたら、俺を避けるのは当然だろう。それを周りに知らせれば、他の貴族も関わろうとはしなくなる」
「……そんなに派手な喧嘩をしたのか」
「とはいっても、もう五、六年も昔の話だ。けど……そんな俺がこうやって冒険者として暴れ回ってるんだから、余計に関わりたく無いって思ってる貴族が増えてるかもな」
実際にはそんな話はでたらめだと思っている者や、その功績に嫉妬している者いる。
しかしゼルートが考えている通り、基本的には関わりたくないと思っている者も多くいる。
「さて、見たい物は見れた。じゃあな、おっちゃん」
「おう」
武器を買わない客は冷やかしなんじゃないかと思ってしまうのが職人の仕方ない部分だが、店主は武器や防具を買わなかったゼルートに嫌悪感は持たなかった。
(久しぶりに完成された本物を見たな。……いや、年齢を考えればまだだまだこれから成長する原石、なのかもな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます