少年期[566]終幕が近い……筈
アレナの闘争心が久しぶりに昂っているところで、ゼルートは一つ疑問を抱いていた。
(ランドリザードとリビングデットナイト、二体が協力して襲い掛かってくるのは確かに脅威だ。ランドリザードのブレスは正直鬱陶しいし)
ランドリザードは砂のブレスと岩のブレスを使い分けるのだが、ゼルートにとって砂のブレスがかなり面倒だと感じている。
(単純に砂ってのが面倒だ、威力はブレスによる風圧ぐらいだが……避けるか風の魔力で弾かないと目が死ぬ)
ゼルート程レベルが高い者でなくとも、砂のブレスを食らってもダメージはあまり喰らわない。
しかし魔力の盾やその他の方法でガードしなければ視界が潰されてしまう。
(その隙に岩のブレスを一点集中させて放つが、リビングデットナイトが遠距離攻撃を行う……そこそこ考えられた攻撃だよな。というか、良く見るとリビングデットナイトの鎧が少し茶色いんだよな……だから土属性の斬撃とか突きを放ってきたのか)
今更気付いた内容だが、横をチラッと見ればアレナとラームが戦っているフレイムリザードの上に乗るリビングデットナイトの鎧も少々赤い。
(これって……もしかしてBランクに片足を突っ込んでるか? 二体セットならば完全に突っ込んでる筈だ。でも三十階層で……いや、別に三十階層のボスなら普通か?)
己が他よりも強いため、ゼルートの強さに対する考えは少々麻痺していた。
だが、ホーリーパレスの難易度を考えれば三十階層のイレギュラーボスの強さは不思議では無い。
(強い事は強いんだろうけど……こいつら、先にどっちから殺してしまえば力は半減だよな。てか、そもそも降りることは出来ないのか?)
戦闘が始まってからリビングデットナイトはリザードの上位種から一度も降りていない。
ゼルートがほんの少しスピードを上げ、ランドリザードの援護が及ばない角度からリビングデットナイトに攻撃を行っても騎獣の背からは下りず、あくまで跨ったまま対処する。
(素早い戦闘状況に対応するために体が騎獣から離れないようにするという技術はある。だけど、それは常時行うものか? 良く解らないな)
ただ、このダンジョンに来てサイクロプス以外に強いと思えた相手。
しかも連帯と技術を持っている。
戦いを楽しむにはこれ以上無い相手。
なのでゼルートは今目の前の二体との戦いを全力で楽しむ。
しかし隣で戦っているアレナにはそんな思いは無い。
確かに闘争心は昂っているが、それでもこの戦いを楽しもうという気持ちは無い。
「アレナ、そろそろ終わらせる?」
「そうね……次、ブレスが来たら対応してくれるかしら? その一瞬で終わらせるわ」
「了解、任せて!!」
久しぶりに鈍っていた体が良くほぐれた。
なのでフレイムリザードとリビングデットナイトにはもう用は無い。
そして直ぐにアレナの狙いたいタイミングが訪れ、フレイムリザードは二体の敵に向かって一点集中タイプのブレスを放つ。
(本当に技術はあるわね。私達以外の冒険者が相手なら大した時間も掛からず殺してしまいそうね)
Cランクの冒険者パーティーが相手でも、選択肢をミスすればパーティーが壊滅する可能性は十分にある。
幸いなのはこのボス部屋で帰還石が使える事だろう。
「ふーーーーッ!!!」
ラームはフレイムリザードと同じく水のブレスを繰り出し、一点集中タイプのブレスを完全に相殺する。
「まずはリビングデットナイトね」
一瞬の隙に背後へと回り込み、アレナはリビングデットナイトが反応出来ないスピードで魔力を纏った長剣を振り下ろす。
(これでまずは一体。あとはフレイムリザードのみ)
リビングデットナイトは骨が砕かれても簡単に死なない魔物だが、砕かれた衝撃でほんの少しの間だが動きは止まってしまう。
その瞬間を狙って魔石を無理矢理取り除けば動きは止まり、絶命する。
アレナはその動きを何度も行ったことがあるので、特に問題は無い……筈だった。
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