少年期[567]代償が伴う
「なっ!?」
背後に回ったアレナの一撃はリビングデットナイトの剣によって防がれてしまう。
(今完全にこっちを見ていなかった。気配感知で私の動きに気付いてた? でも、気付いてたとしても私の動きに反応出来る訳が無い)
事前にリビングデットナイトの反応速度を把握していたアレナにとって、今の一撃は必ず当たる筈だった。
にも拘わらず、アレナの攻撃は見事に防がれてしまった。
「どういうことかしら? まだ使っていないスキルでも発動した?」
「……アレナ、なんかあいつらの様子がおかしい……一つに、なった? って感じがする」
「一つになった……ということは、もしかしてソウルコネクトでも発動したのかしら?」
ソウルコネクト、容易に習得出来るスキルでは無い。
確かな信頼関係を築いた者同士、もしくは従魔とその主人が稀に得られるスキルだ。
人々はそれをレアスキルと呼んでいるが、その内容は決してメリットだけのものでは無い。
自分達の命を繋げることで身体能力の上昇、魔力量が増加される……だが、その代償としてお互いの命がリンクする。
つまり……片方が死ねばもう片方も死に至る。
まさに一蓮托生という事になる。
(魔力量が一時的に増えるとしても、その魔力が尽きれば効果を失い、更に大量のスタミナが削られる)
魔力が切れた瞬間、その代償として動けない状況に追い込まれる場合もある……ギャンブル性のあるスキル、それがソウルコネクト。
一気に攻撃が苛烈するリビングデットナイトとフレイムリザード。
ただ、力や速さが増してもアレナには後ろにラームという頼りになり過ぎる援護が付いている。
なので遠距離攻撃に関して直撃する心配は無い。
物理攻撃に関してもスピードはまだアレナの方が上なので、一撃も当たっていない。
だが……それでも、二体の攻撃は楽観視出来る内容では無い。
(これが三十階層のボスの攻撃!? もう裏ボス的な存在でも良いんじゃないかしら。この強さは……完全にBランクの上位……もしかしてAランク? いや、それは無いか)
客観的にソウルコネクトを使用したリビングデットナイトとフレイムリザードの実力はAランクには届いていない。
しかし、並みの冒険者では敵わないのは確実。
ゼルート達がこの四体に出会っていなければ多くの犠牲者が出ていたのは間違いない。
(でも……これで本当に鈍っていた体がほぐれそうね)
相手が十分に全力を出して殺す価値があると解ったアレナから今まで以上の殺気と敵意が溢れ出す。
「ふぅーーー……倒す」
そう一言告げ、アレナは目にも止まらぬ速さで敵を斬り刻み始める。
後方でその姿を見ていたアレナは思わず感嘆の声を漏らす。
それ程までにアレナの動きは速く、攻撃の斬れ味は凄まじく、二体が魔力切れでダウンする前に体力を削っていく。
そして遂にはリビングデットナイトの手からは剣が弾かれ、攻撃手段はフレイムリザードしか持っていないという状況まで追い詰める。
「そろそろ、終わりで良いわよね」
ダンジョンの魔物には基本的に生への執念は無い。
心にあるのは……冒険者や騎士、ダンジョンへの侵入者を殺すという殺意のみ。
いよいよ魔力も尽きかけるという状態でも二体は諦めることは無く、最後のブレスに移ろうとする。
ただ・・・・・・アレナはゼルートやルウナ、ゲイルほどお人好しでは無い。
「ウィンドスラスト」
通常のウィンドスラストとは比べ物にならない程の魔力を込め、放たれた風の刺突はフレイムリザードだけでは無く、リビングデットの心臓部すら抉りぬいた。
「よっ、と」
そして二体の動きが完全に止まった瞬間にリビングデットナイトの魔石をもぎ取り、ラームの元へと戻った。
「これで私達の戦いは終わりね」
「……アレナ~、僕がいなくても問題無かったんじゃないの?」
「そんな事無いわよ。ラームがいなかったらあの雨の様な遠距離攻撃に手を焼いてたわよ」
「そう? まぁ、勝ったから良いんだけどさ」
結果的にはリビングデットナイトとフレイムリザードのコンビを倒せたが、やはりラームは今回の戦いで自分が援護しなくてもアレナは一人で勝てたのではと思ってしまう。
強者であるラームがそう考えてしまう程、今日のアレナはキレキレに動けていた。
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