少年期[564]後悔する前に、消す
「はぁーーー・・・・・・」
「なに黄昏ているのよ」
セーフティーポイントへとやって来たゼルート達は飯を食べ終え、それぞれが休息を取っている。
そんな中でゼルートは中々眠くなれず、一人テントの外に出て黄昏ていたが、同じくテントから出てきたアレナに声を掛けられる。
「いや、別に。ただ……当たり前だけど、俺に関わってくる冒険者の中にもまともな人はいるんだなぁ~~、って思っただけだ」
「ふふ、確かに当たり前の事だけど……ゼルートが冒険者になってからの人生を考えると、大半の人達が面倒な相手だったものね」
「そういう事だ。俺が負けん気が強いってのもあるが、韋駄天のベーザルやダンジョン内に入る前に突っ掛かって来た冒険者……本当に、俺に絡んでくるアホが多い」
休日にゼルートに嫉妬や劣等の感情を抱いて絡んで来た冒険者の数も含めれば、既に五十を超えている。
「でも、ここ最近は絡んで来た相手を完全にぶちのめしてから身に着けている道具を奪ったりしなくなったわよね」
「あぁ~~~~、確かにそうかもな。でも韋駄天のベーザルは結構良い装備を身に着けてたし、もっとボコボコにして装備を奪っても良かったかもなぁ……でも、ギルドの中で他にも多くの冒険者がいたいし……やらなくて良かったか?」
「えぇ、その方が賢明よ。というか、普通に絡んで来た冒険者の身ぐるみを剥がすのは基本的に止めてよね」
「ふっふっふ、それは無理なお願いだな。俺やお前達に延々と絡んでくる糞共は俺にとって魔物と変わらない! だから倒した後はしっかりと身に着けている物を剥ぎ取らせてもらう!!!」
セーフティーポイントには他の冒険者達も休んでいるのだが、ゼルート達があのゼルートではと噂している者もいる。
そんな中でゼルートが自分に絡んでくる冒険者は倒して武器等を剥ぎ取ってしまうと断言し、それを聞いて背筋に悪感が走る。
ゼルートは軽い表情で言っているが、その声からはとても冗談で言っているとは思えない。
覇王戦鬼、ある意味その名に相応しいのではと思う者もいた。
そういった容赦の無い部分を考えると、鬼という言葉はゼルートにピッタリだろう。
「……まったく、他にも同業者がいるというのに、あなたは……」
「覇王戦鬼と意味分らん二つ名が出回ってるんだ。それなら俺が過去にクソみたいな理由で絡んで来た冒険者が返り討ちにあって、身ぐるみを剥がされたって話も噂の中に入っている筈だ。だから全く問題無いだろ!!!」
「……ちょっと否定出来ないのが残念ね。でも、あんまりそんな事をしてると、敵を増やすことになるわよ」
アレナの言葉は事実であり、まだ冒険者になって一年そこそこしか経っていないのに圧倒的な実力を持ち、Dランクでは到底稼げない程の財を得ている。
そして身に着けている武器、奥の手として隠している武器。どれもルーキーが持てる物では無い。
ある程度実力があり、相手の実力を認められるデリックやオーラスの様な冒険者は敵対感情を持たないが、それでも中途半端な実力を持ちながらプライドだけは一丁前。
そういった連中はゼルートの事を心底嫌っている。
だが、直接ゼルートをぶちのめすことは実力差的に不可能な話だ。
そしてそれだけでは無く、ゼルートの傍にいるメンバーに関しても中途半端な実力では絶対に勝つことが出来ない。
「そうだなぁ・・・・・・そう奴らをしっかりと消せるようにしておかないとな」
(……め、目がマジね)
冒険者達が怒鳴る時、酔っぱらってる時に殺すや消すなどの暴言を吐くことはあるが、実際本人のそれを実行する度胸は殆ど無い。
だが……今のゼルートにはそれを本当に行おうという意思が目に宿っている。
「ぜ、ゼルート。ほどほどにしておきなさいよ」
「分かってるよ。でも……お前やルウナ、ゲイル達の身に何かあってからあの時こうしてれば良かったなんて後悔したくないんだよ。だから……そうなる前に潰した方が良い連中は潰しておくに限る」
鬼の目にも涙というセリフだが、内容が恐ろし過ぎると周囲の冒険者達は声に出さずに思った。
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