少年期[563]解体、解体

ゼルートの提案は実行出来れば懐に嬉しい案だが、血の匂いに惹かれてやって来る魔物などを考えれば不可能だ。


「俺達もせっかく倒したんだから魔物の素材や魔石は欲しいが、流石に無理だぜ」


「そうですよ。解体している間に他の魔物が寄ってくるので……現実的に不可能です」


八人共そこそこ長い間冒険者として活動しているので解体の腕は中々のものだが、やはり今解体を行うには危険性が高い。


「大丈夫だって。希少種のリザードマンや子供だけどドラゴンが、一般的には考えられない強さを持つスライムがいるんだ。この階層の魔物がやって来たとしても、問題無く倒せるよ」


ゲイル達の戦いぶりは八人共見ていた。

確かに強い。実力は自分達より上なのではと思ってしまう程に強い。


(というか……あのスライムは異常過ぎるだろ。リザードマンと違って、希少種とかそういう類なのか? ウォーターシールドとばんばん繰り出したり触手で串刺しにしてたが……殲滅力だけならBランクとAランクなのか?)


ゼルートが連れている従魔が強過ぎるという話も噂には含まれており、その中でも異常な強さを持つスライムは有名だ。


「……俺はゼルートの話を信じて解体しようと思うんだが、どうだ?」


デラックは自分のパーティーメンバー達の方を向いて相談するが、三人共ゲイル達の強さを信じて賛同する。


「そう、ですね。せっかく倒したのだから、少しぐらい持って帰りたいですね。僕はゼルート君の話に乗ろうと思うけど、皆はどうかな」


オーラスのパーティーメンバーもデラック達と同じくこの場で解体するのに賛成の意志を示す。


「そんじゃ、直ぐに解体を始めよう」


全員解体用の短剣やビンを取り出し、一斉に解体を始める。

魔物の死体は百以上は確実にあるが、十一人で解体を行っているので次々に魔物が分解されていく。


魔石、爪、牙、肉、脳、内臓、血。

売れる素材は多く、それらを分けながらも解体は順調に進んで行く。


「やはり血の匂いに惹かれてやって来るか」


その間に魔物が全く現れないという事はなく、解体が終わるまでに何体かの魔物は血の匂いに惹かれてゼルート達が解体している肉などを奪おうとする。


だが、それは見事にゲイル達に阻止される。

幸いにも少し前に戦ったサイクロプスの様なダンジョンイレギュラーと呼べる魔物が現れることはなかった。

ただ……実際にBランクの魔物が現れたとしても、全く問題無い程に護衛の戦力は揃っている。


そして血の匂いに惹かれてやって来た魔物はゲイル達によって瞬殺され、ついでにゲイル達の手によって解体される。


十一人が黙々と解体を続けること一時間半……ようやく全ての魔物の解体が終了した。


「ようやく終わったな」


「だな。にしても……本当にすまねぇな」


「別に良いよ。今回は依頼を受けてダンジョンに潜ってるんだし、そもそも金にそこまで困っていないから」


デラック達は自分達が倒した量よりも多い魔物の素材や魔石をゼルートに譲って貰った。

もちろん持って帰る量はしっかりと考えており、帰りの道中で邪魔にならない程度にアイテムバッグに入れ、巨大リュックに詰め込んだ。


「へぇ~~、依頼を……どんな依頼なんだい」


今話題の冒険者であるゼルート達が受けている依頼に興味を持ち、どんな内容なのかを尋ねる。

受けている依頼は指名依頼なので、簡単に内容をバラしてはならない。


なので、ゼルートは物凄くかいつまんで説明した。


「もっと下に降りないと手に入らない素材を探しに、ね」


「……そうか、そこはきっと僕達が辿り着けない場所なんだろうな」


「さぁ、それは解らないよ。五年後か十年後には辿り着けるかもしれない。諦めない限り、可能性がゼロになる事は無いと思うぞ」


諦めたらそこで試合終了、という名言に似た言葉をオーラスとデリック達に伝える。

まだ二人共二十代前半であり、己が持つ才能を開花させきった訳では無く、まだまだ成長する可能性を秘めている。


「そうか……それなら、諦めずにまだまだ頑張ってみるよ。そうだ、上に戻ったら是非声を掛けて欲しい。一杯奢るよ」


「俺達もだ! 一杯奢るからお前達の冒険譚を聞かせてくれよ!!」


「分った、地上で待っててくれ」


そこで三パーティーは別れ、ゼルート達はセーフティーポイントに向かい、そこで休息を取った。

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