少年期[552]殺さずに苦しめる
「ゼルート、一つ聞いておきたいのだけど……ダンジョンの中で同業者が襲ってきたらどうするの?」
夕食を食べ終え、マジックアイテムのテントに入ってのんびり過ごしていたところで、一応聞いておきたかった事をアレナはゼルートに尋ねた。
「どうするって……やっぱり殺すだろ」
ダンジョンの中で死んだ者は、冒険者や騎士など関係無いしにダンジョンが吸収してしまう。
なので、ダンジョン内で誰かを殺したとしても証拠が残らない。
過去にゼルートは自分に恨みを持っている冒険者に襲われ、逆に地獄を見せてから殺した。
その後、特にギルドの職員に何かを言われることは無かった。
「そうだぞアレナ。襲ってきたのなら、殺されても文句は無いだろ」
「いや、勿論それはそうなのだけど……仮にあのパーティーが襲ってきたらって思うとね」
「あのパーティー……あぁ、韋駄天のベーザルがリーダーのパーティーか」
頭の中は既にダンジョン探索で埋まっていたため、思い出すのに少々時間が掛かった。
「魔法使いの人は冷静なタイプの人だったから問題無いだろ」
パーティーのリーダーはベーザルであっても、パーティーのブレインはその魔法使いだとゼルートは思っている。
(……仮にベーザルと仲間の男がとち狂って俺達に何か害を為そうとしても、自分達の手を使いはしないだろ。暗殺者を送ってきたらそいつらから情報を奪ってぶっ潰すけどさ)
ベーザルはお人好しが過ぎて少々面倒な人間。仲間の男はパーティーメンバーを大事にしているのは分るが、熱くなると目の前が見えなくなるタイプだと予想している。
ただ、仮にもその二人はBランクの冒険者。
自分達の過去の……これからのキャリアを潰すほど愚かな考えを持っている様には思えない、というのがゼルートの見解。
「確かに魔法使いの女は冷静だったな。しかし他の面子がそのまま黙っているかは解らないぞ。真の馬鹿は仲間が協力しないなら勝手に一人で暴走するような奴らだ」
「ルウナの言う通りよ。自分達の手を使うのは分らないけど、何か仕掛けてくる可能性は否定出来ない」
「……そうだな。その可能性は無いとは断言出来無いだろうな。でも、しょうもない理由で襲い掛かって来る相手に俺は容赦しないぞ」
自分の手を使わない場合、襲ってきた者を脅す。もしくは、無理矢理記憶を探れば誰が自分達の殺害依頼を頼んだか解る。
ゼルートを襲えば、逆に襲われる可能性の方が圧倒的に高い。
だが、それは一般的にはあまり知られていないので、ベーザルもゼルートの凶暴性を知らない。
「でしょうね、それは解ってる。ただ私が言ってるのは仮にベーザルを殺せば、真っ先に疑われるのは私達よ」
「……ギルドでの一件を知ってる連中はそう思うかもな」
「そうでしょう。だから、殺すのは控えておいた方が良いと思うのよ」
アレナが言いたい事も解かる。
今後の冒険者生活を考えれば、同業者殺しなど不名誉な噂が付き纏うのは宜しくない。
そこでゼルートは一分ほど頭を悩ませた。
(地獄を見せてから殺す、そうするって決めてたけど地上の一件を考えると……とりあえず地獄を見せるのは決定だ。ダンジョンで本人達が襲ってくれば……装備だけ奪って気絶させておこう)
階層によるが、ベーザル達ほどの実力が合っても、装備無しでは生還出来ない階層が絞られる。
(もし他人に頼る様なら……装備を全て奪うのは勿論だが・・・・・・はっはっは、良い案を思い付いた!!!!!)
その時、ゼルートは自分が悪い笑みを浮かべていると自覚していた。
「ゼルート、恐ろしい笑みを浮かべてるわよ」
「それぐらい分かってる。ただ、殺さないで良い感じに潰す方法を思い付いたんだよ」
その方法は中々にえげつない内容であり、回復魔法を基本的に傷を治す魔法だが……そこにゼルートが創造でしょうしょう弄れば、間違った状態のまま治してしまう事も可能なのだ。
(次から殺してしまうと面倒な相手にはそういう手を使おう)
ーーーーーーーーーーーーー
熱が出て死んでました。投稿遅れてすみません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます