少年期[549]何故忠告が無いのか
「探索の目的はなんだ?」
「ちょっと貴族からの依頼を受けてね。下まで降りる」
「……ギルドカードを見せてくれ」
「ほい」
ゼルート達の順番になり、ダンジョンに潜る冒険者を確認しているギルドの職員からの問いに答え、ギルドカードを見せる。
探索の目的を答えたゼルートを小さく笑う者がいた。
ゼルートの様な見た目の冒険者が貴族からの依頼など頼まれる筈が無い。なに見栄を張っているのか。
そんな事を考えている者が大半だった。
「ッ……なるほど、君だったが。大丈夫だとは思うが、気を付けて潜ってくれ」
「うっす」
職員の態度を見て多くの冒険者の頭の上にはてなマークが浮かぶ。
そこは「お前達が下層に潜るのはまだ早い」って叱るところだろと、大体がそう思っていた。
「さて、行くぞ」
ゼルートの声と同時に六人がダンジョンの中へと入って行く。
「なぁ、なんであいつらを止めに行かなかったんだよ」
ゼルート達の後ろにいた冒険者達が自分の番となったのだが、疑問に感じていたことを速攻でギルド職員に尋ねる。
「……冒険者の情報を公開するつもりはない」
「いやいやいや、そういう話じゃ無いだろ。あのガキ共、確かに大人はいたが、それでも下層に潜れば絶対に死ぬぞ」
特に善意で言っているつもりは無い。ただ、真実を淡々と述べているだけ。
というより、単純にゼルート達が自分達が潜ることが出来ない階層を潜ることが許可されてたのが気に入らない。
実際には許可など必要無いのだが、この街で活動する冒険者の情報を頭に入れているギルド職員は実力が見合わない冒険者が潜ろうとすれば忠告する。
だが、ゼルート達にはそれが無かった。
それが他の冒険者達がイラつく原因だった。
「はぁーーーーー……これだけは教えておいてやる。死にたくなかったら、あのパーティーには喧嘩を売らない事だ」
「……あの大人二人組にか?」
「いいや、全員にだ」
「ッ!!! おい、俺達がそんなに弱いってのか! 嘗めてんじゃねぇーーぞッ!!!!」
男が激怒するのも仕方がなかった。
男のパーティーはBランクに近いCランクだと言われており、後一年以内には昇格試験を受けられるのではと噂されている。
そんな自分達がパーティーの大半が子供のパーティーに怯えろと言われ、納得出来る筈が無い。
事実、ギルド職員に凄んでいる男だけでなく、他のパーティーメンバーも不機嫌が表情に現れている。
「別に嘗めてなどいない。お前らの実績は知っている。ただ……冒険者として終わりたくなければ馬鹿な真似は考えるな。喧嘩を挑んでどうなっても俺は知らん」
これ以上後ろの冒険者達を待たせればブーイングが飛んで来るので、その場はそれ以上怒りを出さずにダンジョンへと入った男達。
ただ、その怒りが収まった訳では無い。
(絶対に正式な手順を踏んでぶっ飛ばしてやる!!!!)
ゼルートに対しての怒りや嫉妬が爆発しそうではあるが、冒険者としての道を外れてはならないと解っており、その辺りは冷静な判断が下せていた。
そして先にダンジョンに潜っていたゼルート達は……ギルドから買い取った地図を頼りに、走りながら下の階層に続く階段を目指していた。
ダンジョン内は岩の洞窟といった感じになっており、周囲の壁が自然発光しているので進むのに支障は無い。
「……今のところ全く問題無しだな」
ダッシュで階層を降り続けてきたゼルート達は一旦六階層で休息を取っていた。
基本的に魔物は無視、すれ違う魔物だけを倒してどんどん前へ進んで行くスタイル。
途中に罠もあったのだが、ゼルートとアレナが戦闘で進んでいるので罠に引っ掛かる心配はゼロ。
結果、ゼルート達は全くの無傷で六階層へと降りてこられた。
「まだ上層だから魔物は弱いし、トラップも面倒なものが無い」
「裏を返せば面白みが無いということだがな」
そこそこバトルジャンキーなルウナにとっては今のところつまらないダンジョン探索。
ただ、どこも上層にはルウナが満足出来る魔物は基本的に存在しない。
そいて宝箱の中身もしょぼいものしか入っていない。
「楽しみはこれから、といったところですな」
「ゲイルの言う通り。中層に入ってからはバトルもお宝も楽しめるようになってくるだろ」
勿論依頼された素材の回収も大事だが、ゼルート達はそこら辺もしっかりと楽しむつもりだった。
(お宝は確かに楽しみだけど、バトルはそこまで望んで無いのよね)
……約一名を除いて。
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祝書籍化!!
今月の下旬にアルファポリス文庫から冒険がしたい創造スキル持ちの転生者が単行本になって発売されました!
本日家に実物が届きましたが・・・本当に嬉しくて涙が出そうになりました。
ゼルートやゲイル達をみことあけみ様が書いてくれました!!
是非彼らの活躍を読んで頂けると幸いです。
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