少年期[548]睨みで退かせる

韋駄天のベーザルと少々対立した夜、ゼルート達は金に余裕があるのでいつも通り少しランクの高い宿に泊まった。

そして夕食を美味い飯を腹一杯になるまで食べ、風呂に入って就寝。


その翌日、ゼルート達は朝食を食べると早速ダンジョンへと向かう。


「階層が深くなるにつれて光属性の魔物が増えてくるのだけど……ゼルートがいれば問題無さそうね」


「……いや、どうだろうな? 確かに俺は闇魔法を使えるけど、襲ってくる魔物の両次第では結構めんどくさいんじゃないか?」


「それもそうね。一応光属性を持つ魔物用の武器を買っておいた方が良いかも」


魔法の才に溢れるゼルートは問題無く闇魔法が使える。

普段は相手の精神を弄ったりする事にしか使っていないが、勿論攻撃魔法も放つ事が出来る。


だが、ゼルートの仲間であるアレナ達も魔法の才は一般人に比べればあるが、ラームを除いて闇魔法を使えない。

しかしそのラームも闇魔法のスキルレベルはそこまで高くない。


雑魚を消すには適しているが、強敵を倒すには少々威力に欠ける。


「まっ、初っ端の階層から光属性のモンスターが現れることは無いんだろ。それなら最初から用意する必要は無いだろ」


なるべく早く聖魔鋼を手に入れたいゼルート達だが、そこまで直ぐに手に入るとは思っていない。

いや、正確には一発で聖魔鋼が手に入る可能性が高い方法がある。


だが……流石にゼルートはそれを実行しようとは思わなかった。


「僕の力を使えばサラッと手に入るかもしれないのに」


「そりゃあなぁ……ラームの力を使えばサラッと手に入るかもしれないけど、流石にそれをああいう場所以外で使うのはな」


ゼルートとしてはカジノで他人から運を奪ってしまう事に抵抗は無い。

ただ、ダンジョンで探索している冒険者や街中の人から運を奪うのは気が引ける。


「……ねぇ、思ったのだけどそれは魔物相手にも通じるの?」


「どうなんだろ? 試したこと無いから分からないや。でも、多分出来るんじゃないかな?」


「可能性はあるかもな。でも、奪ったものがいつまで続くのか……そしていつ発動するのか、それは解らない。というか、ダンジョン内ではそれが作用する件がしょっちゅう起きるだろ。だから難しいと思うんだよ、結局」


「なるほどねぇ~~~。とりあえず、今回の探索では一旦考えるのを止めといて良いかもしれないわね」


「う~~~~ん……分かった!!!」


運はどういった場面で発動するのか、それは本当にゼルートも解らない。

ラームは運を奪うことは出来るが、運を操ることが出来る訳じゃ無い。


(ここばかりは何回もトライするしかないよな)


そしてダンジョンに入る為に並んでいる冒険者達の列にゼルートも並び、順番を待つ。

特に時間が掛かる訳では無いが、無駄にプライドが高い冒険者はここでイライラする者が多い。


ただ、ギルドとしてもダンジョンに潜っている冒険者の名前と目的は確認しておきたい。

その記録のお陰で救出された冒険者も極稀にだがいる。


列に並んだゼルート達だが、やはり周囲の冒険者達から視線が寄せられる。

異色の面子であり、大半が美女美少女で構成されている。


ゲイルは厳つい顔をしているが、それでもイケメンの部類に入る。

そしてゼルートとラームの子供組も容姿が高い部類。

なので全員が容姿を集める原因を持っている。


冒険者の中にはアレナやルウナをナンパしたいと考えている冒険者がやはりいるが、そんな輩に対してゲイルが厳しい視線を送る。

すると面白い程に下心がある冒険者達は顔を明後日の方向に向く。


「相変わらず二人は人気だな」


そんな視線にパーティーのリーダーであるゼルートも気が付いており、その視線が向けられている二人も気付いていた。


「若い頃は多少の優越感? みたいな感覚はあったけど、今は鬱陶しいだけね」


「アレナに同感だ。どうせ全て下心でしかないだろ」


「まぁ~~~……基本的にはそうだろうな」


まだまだ若い冒険者、ルーキー達には二人に恋心と憧れが混ざったような感情を持つ場合もある。


「でも、そろそろ俺達の番だ。その視線も感じなくなる」

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