少年期[534]見てみたいその姿

「とりあえず聖魔鋼のありかは分かった。俺達の戦力なら問題無い筈だ」


「そうだな。寧ろ丁度良いかもしれない」


「次は雷の魔力が宿った素材・・・・・・これに関しては楽に手に入る可能性があるけど……やっぱり無しだな」


雷竜帝ラガール、ラルの母親に頼めば爪ぐらいは特に問題無くゼルートに渡す。

ただ、バジル・ラーガスに雷竜帝の素材とバレるのが一番の問題だ。


雷竜帝の爪などは聖魔鋼の様に定期的に手に入れられるルートが決まっておらず、ラッキーティア並みに入手が困難。


その為、どうやってその爪を手に入れたのか知りたがるのは当然であり、バジル・ラーガスの剣に雷竜帝の爪が使われたと広まるの時間の問題。


(というか、バジル・ラーガスがラガールの素材が使われた剣を使いこなせるとは思えない。流石に無しだな)


バジル・ラーガスが才能にカマかけて努力を怠る愚者には見えない。

しかしゼルートの眼には天才という言葉が相応しい程の実力があるようには視えなかった。


「……ホーリーパレスに雷系の魔物っているか?」


「・・・・・・いた気がする。四十階層か五十階層のボスにエボルトサーペントって言う雷属性の蛇系の魔物がいたわね」


「エボルトサーペント……初めて聞く魔物だ。いったいどんな魔物なんだ?」


両親からの昔話の中に無かった魔物の名前。

いったいどんな魔物なのか、ゼルートの中の好奇心が疼く。


「えっと確か……思い出したわ」


思い出した瞬間、アレナの顔が再び暗くなる。


「け、結構厄介な魔物なのか?」


「本当に厄介よ。出現したばかりの時はBランクの魔物。名前はエボルサーペント。それで、出現初期のレベルなら、まぁ……そこまで警戒売る必要は無いの。雷と打撃と粘液だけ対策しておけば十分だから」


(それはそれで十分大変だと思うんだが)


雷と打撃に粘液。攻撃としては接近と遠距離に行動妨害の要素が含まれている。

そしてランクが高い蛇系の魔物ともなれば体全体を動かす速度とバランスが桁違い。


なのでBランクの、雷属性という数瞬とはいえ相手の動きを止める力を持っている魔物を倒すことは容易では無い。


「でも、そいつは相手を倒す……正確には殺すね。その度に異常な速度で強くなる。冒険者を四度も食べてしまえば力はAランクに到達すると言われているわ」


「なるほど、ねぇ……そりゃヤバいな」


(エボル、エヴォル・・・・・・エヴォリューションにもしかして繋がってるのか?)


エボルがエヴォリューションに繋がっているのか。

その推測は正しく、エボルサーペントは戦うごとに急激に成長する特徴を持っている。

自然界には滅多に現れない魔物だが、過去の成長し続けた一国を滅ぼしかけたという実話も存在する。


そしてホーリーパレスに存在するエボルサーペントも数回ほど成長し過ぎて多数のAランク冒険者が手を組んで倒す事態となった。


エボルサーペントがボスとして出現する階層は五十階層。

そこまで降りられる冒険者の質は必然的に高くなる。

ラームのような特殊なスキルを持っている訳では無いが、実力が高い冒険者を食べることで成長する。


(でもエボル、エボリューションって進化って意味だよな・・・・・・それじゃ、敵を喰らっていけば確実に進化が約束されてるのか?)


ゼルートが辿り着いた考えは正しい。

その進化後のエボルサーペントこそ、一国を壊滅まで追い詰めた魔物。

その実力はSランク相当まで上がる。


(……やべぇ。不謹慎だって解ってるけど、見てみたいな)


そう、確かに不謹慎な願いだ。

進化したエボルサーペントを見るためには犠牲が必要。


「ゼルート、口端が吊り上がってるわよ」


「え、マジで?」


「マジよ。どうせロクでもない事を考えていたんでしょ」


「おいおい、ロクでもないって決めつけるなよ。なぁ、ルウナ」


同意を求めるようにルウナの方に振り向くが、同意は得られず首を横に振っていた。


「いいや、今のゼルートの笑みは絶対にロクでもない事を考えていた。付け加えるなら悪い笑みだったからな」


「そ、そんな笑みだったか?」


自分の状態は案外自分では分からない。

その言葉は正しく、ゼルートは自分が好戦的な笑みを浮かべている事に全く気が付いていなかった。

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