冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

少年期［５３５］逆に従者が面倒？

「そのダンジョンに行けば鉱石の方もなんとかなりそうだな」

「そうね。宝箱の中からは鉱石が入っていることも多かった気がするし……ホーリーパレスだけで何とかなりそうね」

下層の宝箱からはミスリルが発見されたという記録も残っているので、二人が考えている通りホーリーパレスだけでバジル・ラーガスからの依頼は達成出来る。

「ふっふっふ、中々楽しそうな戦いが出来そうだな」

ルウナはアレナの説明を聞いて闘志が湧き上がっていた。

事実、過去にゼルート達が護衛依頼で挑んだダンジョンに生息する魔物よりも強力な魔物が存在する。

ただ、前回の悪獣率いる魔物の集団の中で上位に位置する魔物より上等な奴がゴロゴロいるかといえば、そうではない。

「ゲイル達も楽しめそうな場所だし、やっぱり今回の依頼は受けて成功だったな」

「そうかもしれないわね。ゼルートにしては上手い交渉だったじゃない。喧嘩になるんじゃないかって少し心配だったけど」

「……相手の出方しだいでは喧嘩になってた可能性は十分にあるな。というか、主がまともな場合は従者がちょっと面倒な正確になってしまう傾向でもあるのか？」

今回ゴージャルで出会った二人の学生。

ゼルートが姉の件で対立した坊ちゃん貴族のイメージが少々染みついていたが、それを見事に払拭するほど礼儀正しかった。

だがその分、従者がゼルートのフランクな対応に噛みついてしまい、それを主が抑える。

それが今回のパターンであった。

「私はそこまで貴族の内側に詳しい訳じゃ無いからあれだけど……主の人格が正しければ正しいほど主人の事が誇らしく思うのでしょうね」

「そりゃそうだろうな。俺だって父さんのこと誇らしく思うし」

「……まぁ大体似た様な感覚でしょう。それに、その正確に加えて貴族の一員として上を向いて進もうとしている姿も従者にとっては誇らしい……というか魅力的に思えるんじゃない？」

「かもしれないな。ただ、その誇らしくて魅力的な存在の外面評価を下げるのはよろしく無いと思うけど」

（もしかしたらそんな従者たちは主人の事をアイドル的な存在で見てるのか？）

頑張ってる事を応援したいし、支えたい。しかし過剰にプライベートに干渉しようとは思わない。

だが、バカにするような態度を取る者、馴れ馴れしい相手には容赦しない。

もしそんな考えを持っているなら、少々悪い意味でアイドルオタクみたいだなとゼルートは思ってしまった。

「それはごもっともな事よね。でも、そこまで主人の事を誇らしく思っているからこそ、主人が貴族の子供という点を重く悪い意味で捉えてしってるのかもね」

「……つまりあれだな。貴族の子息や令嬢と同じで、そいつらに仕える執事やメイドにも面倒な奴らがいるという訳だな」

「大雑把に纏めてしまうとそういう感じだな」

ただゼルートは今回の依頼人が話が通じる人だったので、そこだけは有難かった。

もし仮にバジル・ラーガスがゼルートから強引に聖剣バールクスを奪う様なカスであれば、それ相応の仕返しとしてその場で四肢の骨をバキバキに折っていたかもしれない。

「一応聞いておくけどアレナ、そのダンジョンって俺達の戦力だけ十分だよな」

「……それは過去の私の様に他のパーティーと組んでボスに挑まなければならない、なんて事は無いという意味かしら」

「そういう意味だな」

「そう。それなら安心して。このパーティーなら特に心配する必要は無い。だって、ゼルートは闇魔法もそこそこ使えるのでしょ」

魔法に関してはオールマイティーな才を持っているゼルートは幅広く属性魔法を習得している。

「おう、勿論だ。相手から情報を奪うのはもちろん、相手に拷問を行うにも闇魔法は必要だからな」

低い声で笑いながら怪しい笑みを浮かべるゼルート。

（……本当に、今更だけでゼルートって敵対する相手には容赦無いわよね。例え相手が誰であっても）

最近は権力者相手に最低限は普通に接するという事を覚えたが、それでもその恐ろしさが消えたわけでは無い。

「それなら全く問題無しよ」

「そうか。それなら明日にでもホーリーパレスがある街へと向かうか」