少年期[533]素材はどこで手に入るのか

ギルドの中へと入ったゼルート達は直ぐに受付嬢に呼ばれ、バジル・ラーガスからの指名依頼が届いている事を伝えられる。


「報酬は白金貨二枚と金貨五十枚と破格ですが、その・・・・・・依頼内容が曖昧かと」


「あぁ……まぁ、確かに曖昧ですね」


バジル・ラーガスからの依頼内容は報酬額に見合う素材と記されており、どの様な素材が欲しいとは書かれていない。


(依頼内容がこれだと受付嬢も完全に受けた方が良いですよとは勧められないよな。白金貨二枚と金貨五十枚分に見合う素材ねぇ……ははっ、集め甲斐がありそうじゃん)


高ランクの冒険者であっても少々躊躇う依頼内容だが、ゼルートとしては寧ろテンションが上がる依頼内容。

ルウナもゼルートと同じく楽しそうな冒険が待っていると思い、ワクワクしている。


ただアレナだけ少々不安な気持ちがあった。


(あの学生の様子からしてゼルートが持ってきた素材に文句は言わなさそうだけど、白金貨三枚と五十枚を息子に渡す親なのだから伯爵ぐらいの地位はありそうだけど……いや、寧ろゼルートが子供の頃に起こした事件を知ってるでしょうし、下手に文句を付けてくるような真似はしないでしょう)


ゼルートだから問題は無い、最終的にそういう結論に至った。


「でも、向こうとは依頼が来る前に約束していたので大丈夫ですよ」


「そ、そうなのですか? それならこちらの指名依頼を受理しておきますね」


「お願いします」


手続きを終わらせたゼルート達はギルドから出ず、聖剣を造るのに必要な情報を集める。


(……重要なのは聖魔鋼とそれに見合う鉱石。おれとバジル・ラーガスは雷魔法のスキルを持っていたから、ある程度の強さを持つ雷属性の魔物の素材を集めれば大丈夫か)


その三つを集めればバジル・ラーガスが求める聖剣に見合う物が造れる。

そしてそれらの素材が手に入る可能性がある場所に関してはゴージャルからそこそこの距離がある。


ただ、ゼルート達の移動速を考えれば大して気にする必要は無い。

問題があるとすれば、聖魔鋼が比較的手に入りやすい場所だった。


「ダンジョン……ホーリーパレス」


「懐かしい名前ね。昔何度か潜ったことがあるわ」


元Aランク冒険者時代、アレナは聖魔鋼が比較的手に入りやすいホーリーパレスに挑んだことがある。

ただ、ダンジョンの中に生息する魔物の強さが他のダンジョンと比べて桁違いに高く、階層は今のところ六十五階層まで確認されているが、最下層は今のところ確認されていない。


「かなり難易度が高いダンジョンよ。確か六十階層の魔物を倒した時に聖魔鋼が宝箱に入ってるのよね」


「アレナは生で手に入れたことがあるのか?」


「一度だけね。でも、私が過去に所属したパーティーだけじゃ無くて他のパーティーと連合して倒したのよ。丁度今回みたいに貴族からの依頼だったかしら? 六十階層のボスは……光属性の魔物だった筈よ」


「光属性の魔物、か……Aランクだよな?」


「そうね。ただ、出現するボスが一定してないのよ。光属性の魔物がランダムで出現するの」


アレナの言葉に二人は驚き固まってしまう。

光属性を持つという特徴は変わらない。しかし魔物の種族は毎回異なる。


光属性を持つという事は、闇魔法で攻撃を行うか闇属性が付与されている武器で攻撃を行うという事で対抗出来るが、地上で戦う魔物なのか。それとも空中に飛んで戦う魔物なのか。もしくは接近戦が得意なのか遠距離戦が得意なのか。


魔物の形態や特徴によって攻略方法は変わる。


(なるほどな。アレナの様子からしてボスが変わる周期は一定じゃ無いだろう。一つのパーティーで相手をするには荷が重すぎるな)


魔物によっては複数の下位種を同時に相手しなければならない。


「まっ、俺達ならなんとかなるだろ。ただ、問題はそのボスを倒したとしても絶対に聖魔鋼が手に入る訳じゃ無いって事だよな」


「そういう事よ。依頼完了までの期間が長かったからなんとかなったけど……あれは本当に地獄だったわね」


死んだような目をしながら過去の記憶を思い出すアレナ。

だが、今自分が所属しているパーティーの戦力を思い出し、徐々に生気が戻って来きた。

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