少年期[527]さぁ……参加しよう
「さて……そろそろ始まり、か」
会場の席が殆ど埋まり、オークション開始の時刻が近づく。
そして今回のオークションの司会者が現れ、拡声器のマジックアイテムを使用してオークション開始の挨拶を行う。
『皆様、本日はオークションにご参加いただき誠にありがとうございます。本当は少々話さなければならない内容がありますが……堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。皆さま!!! 軍資金の準備は宜しいでしょうかッ!!?? 今からッ、オークションを開始させていただきますッ!!!!!』
司会者の堅苦しい挨拶を抜きにしたオークション開始の宣言が行われたことで客達のテンションは一気に上がる。
それと同時に参加者達の声が会場内に響き渡る。
「……耳を塞いでおいて良かった」
「気持ちが高ぶってしまう気持ちは解らなくはないけど、やっぱり耳に悪いわね」
ゼルート達は心こそ少々ドキドキしており、これから始まるオークションに対して楽しみな気持ちはある。
だが、周囲の参加者と同じようなテンションまで一気に引きあがる程の関心は持っていなかった。
『先ずはBランク冒険者のガーガルアが使用していた愛剣、グラッドジーザスッ!!! 落札額は金貨二十枚からスタートです!!!!』
(金貨が二十枚、日本円にして二千万円……やっぱり高いなと思うけど、それでも安いなと思ってしまっている部分もある。……俺の金銭感覚絶対に麻痺してるよな)
落札額が金貨二十枚。つまりここからまだまだ参加者たちが落札額を上げていく。
そして少し前に引退したBランク冒険者、ガーガルアの愛剣グラッドジーザスは金貨五十七枚で落札された。
(なぜそこまでして自分が使わないかもしれない武器に金を掛けるのか……もしかしたら臣下に与える為に落札するのかもしれないが、そうで無いなら何故そこまで大金を払おうのか分かるけど理解は出来ないな)
オークションはテンポ良く進んで行き、出品物がどんどん買い取られていく。
そんな中でゼルートの気を引く出品物が現れた。
『続いての商品は紅蓮竜の牙に爪、魔石のセットです!!! 限りなくSランクに近いAランクと言われる紅蓮竜の三セット、落札額は金貨三百枚からスタートです!!!!!!!』
「三百十!!!」
「三百十五だ!!!!」
「三百二十五ッ!!!!!」
少しづつではあるが、値は五百から一千万のスパンで上昇し続ける。
そしてそれを眺めているゼルートの口端が上がっているのアレナは見てしまった。
「……はぁーーーー、ゼルート。あなたがいなければ稼がない大金なのだから、自由に使って良いのよ」
「そうか? それなら……遠慮無く使わせて貰おうか。三百七十!!!!」
三百五十から追加で二十の上乗せ。
その値段を叫んだのは誰なのか、聞いたことが無い声の人物に多くの者達がそちらに振り替える。
多くの視線がゼルートに集まるが、気分がようやく高まり始めたゼルートはその視線を全く気にしていなかった。
「さ、三百七十五!!!」
「三百九十五ッ!!!!」
ゼルートに対抗しようと他の貴族や商人達が落札額を上げていくが、直ぐにゼルートがそれを上書きしてしまう。
そんな事が何度も繰り返すが、紅蓮竜の牙に爪に魔石の三セット以外にも大金を使う価値の出品物がある。
そう思った者達が次々と落札を諦めていく。
「五百五十ッ!!!!!」
そして遂にゼルートの落札額に上書きをしようという者が現れなくなる。
「金貨五百五十枚ッ!!! まだ時間は十分にありますが他に落札者はいませんか? ・・・・・・それでは六十二番様が紅蓮竜の牙、爪、魔石の三セットを金貨五百五十枚で落札です!!!!」
本日最高額での落札に参加者達のテンションは更に上がり、ゼルートと競い合った参加者たちは敬意を表して拍手を送る者もいれば悔しさを抑えることが出来ず、ゼルートを睨みつける者もいた。
金貨五百五十枚という日本円にして五億五千万円を使ったゼルートだが、今回の買い物はまだまだ終わらない。
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