少年期[528]容赦なくお落す

出品物の競り落とし合いで相手より高い金額を提示し、競り落とす。

その感覚を気に入ったゼルートは自分が欲しいと思った品、アレナやゲイル達が欲しいと思った品を結果的に全て落とした。


湯水のように白金貨が消えていくが、ゼルートにとってそれは大した痛手では無い。

元から黒曜金貨十枚以上持っているという事もあるが、なにより今回のオークションのメインを張れる程の商品をゼルートは出品している。


それが競り落とされる額を考えれば……ゼルートが今回オークションで使った金額などすべて返ってくると言っても過言では無い。

寧ろ大量のおつりが返ってくる。


「ゼルート……あなた今日幾ら使ったの?」


「えっと……分らん。白金貨五十枚近くは使ったんじゃ無いのか?」


ゼルートが落札した品はどれもそこそこ価値が高い物から超価値のある物なので、当然落札するには大量の金が必要になる。


「はぁ~~~~……私も欲しい商品があってそれを落札して貰った手前、あまり強くは言えないけどちょっと使い過ぎじゃない?」


「まぁ……確かにそうかもな」


現在ゼルート達は一旦昼食を挟んでからの再回答いう事で、オークション会場の近くのカフェでのんびりと昼食を取っている。


そんな中、アレナ以外は自分が欲しいと思った物をゼルートが競り落としてくれたのでご機嫌な様子。

しかしアレナだけは嬉しい気持ちと、お金を使い過ぎなのではという気持ちがある。


「でもさ、結局は白金貨百枚ぐらいの話だ。どうってことないだろ」


「普通はどうってことあるのよ。ゼルートの総資産を考えれば大した金額では無いのかもしれないけど、それでもあれよ……今回の一件でかなり目立ったはずよ」


「あぁ~~~、それはそうかもな。今更だけどかなり視線が集まってたのは覚えている」


オークションの最中は出品物を競り落とすのに夢中ではあったが、それでも自分に対して多くの視線が向いていたのを覚えている。


「でもさ、あれじゃん。俺達が狙ってた商品って基本的に戦う人が使う様なマジックアイテムばかりだから必要な金額は大したこと無いじゃん……多分」


「十分大したことあるわよ。全く……多分、今回のオークションが終わったら貴族か商人から声を掛けられると思うわよ」


「なんで? ……もしかして面子的な問題か?」


「それもあるでしょうけど、本当にその商品が欲しかった者にはそれなりの思いがある筈よ。だからオークションが終わった後に声を掛けてくる人がいる可能性は十分にあると思うの。それに対して、ゼルートはどう対処するつもり?」


アレナがゼルートに伝えた内容は嘘や脅しでは無く、普通に起こりえる事。

だが、その接触によってゼルートの立場が不利になるかといえば、そんなことは無い。


オークションに関しては競り落とした者こそが勝者、獲得者。

しっかりと金を準備していなかった方が悪い、それが常識である。


「どうって言われても……金を持っていない人達が悪いんだろ」


「そうね、それは間違って無いわ。でも……いえ、しょうもない抵抗はゼルートにとって痛くも痒くもないものね」


「そうだな。程度の低い暗殺者とか大した労力を使う事無く終わるし」


オークションでは競り落とした者が勝者で獲得者。

その考えは間違っていないのだが、オークションの外に出てしまっては何が起こってもオークションの主催側は責任を持てない。


なので競り負けた逆恨みとして命を狙われたといても、それは総資金でこそ買っていたといても、権力では負けていたという事になる。


死人に口なしという事で商品によっぽどの仕掛けをしていなければ犯人が見つかることは無い。


(ゼルートを殺せる暗殺者なんて……この世にいるのかしら? ある程度戦える人はいるでしょうけど、殺すのは……絶対に無理よね)


真っ向勝負も奇襲もゼルートには無意味。

それがアレナの出した結論であり、もうゼルートの競り合いに口を出す気は完全に消えた。

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