少年期[526]浮いては……いる
ゼルート達が捕獲依頼と討伐依頼を受けたその翌日、ゲイル達も人の姿となってオークション会場に入る。
「ふぅーーーー、相変わらずこういう硬い服は苦手だ」
「そうかしら? 慣れればそうでもないわよ」
「私はゼルートの考えと一緒だ。何と言うか……単純に似合わないし動きづらい気がする」
以前かった正装を身に着けて三人は指定された椅子へと座り、開始の合図までのんびりと待っている。
「私はそこまで窮屈には感じませんが……ゲイルさんはどうですか?」
「むぅ……自分もゼルートさんと同じだな。この服には硬さを感じる」
「僕もあんまり好きじゃ無いな」
三人の横に並ぶゲイルとラームも先日買った正装を身に着けているが、ゼルートやルウナと同じく慣れない。
しかしラルはアレナと同じく、正装の着心地が悪いとは感じていない。
「にしてもまぁ……皆キラキラジャラジャラしてるな」
「それはそうでしょうね。こういった規模が大きいオークションに参加いて自分の服装を見せつけるで財力の多さを知らしめることが出来る。そしてオークションの最中に大きな買い物をすればそれもまたアピールに繋がる」
「ふ~~~、理解出来なくはないけどそこまでする意味が俺には解らないな」
自分の財力や権力に実力を他者に知らしめたいという気持ちがなんとなくは解かるゼルート。
しかし自分がそれを行いたいかといえば、正直そんな欲は殆ど無い。
「てか、皆あそこまでキラキラジャラジャラいてたら俺達は正装を身に着けていてもなんか浮かない?」
「そうだな。こちらをチラチラと見ている者が多い。やはり私達は浮いているのかもしれないな」
「あぁ……それは少し違うんじゃないかいら? ラーム、周りの人達の会話を拾ってみて」
アレナに自分達の周りの貴族や商人達の会話を拾うように頼まれたラームは即座に聴覚強化を使用。
そしてその会話を拾ったラームはアレナが言いたいことが分かった。
「なるほどなるほど!! えっとね……確かに皆服装が統一してるのに疑問を持っている人もいるみたいだけど、大半の人はゼルートに興味深々って感じかな? 後僕達のことを気になってる人達も多いね」
「俺の事を、かぁ……そっか。大乱戦の件で多少は名が広がったし、正しい外見が広まってるな俺がその大乱戦のゼルートって分かってもおかしく無いか」
「そういう事よ。それにゼルートは大乱戦の前にオークキングを単独で倒してるじゃない。それに王都の貴族学校でもそこそこ暴れたのだし、多くの貴族や商人があなたのことを知っているのが当たり前よ」
そもそもゼルートは大乱戦やオークキングの単独討伐や、貴族からの指名依頼による決闘代理戦による事件よりも前に貴族界でエリート思考が高い者達の心を恐怖で覆う様な件を起こしている。
その件からある程度の月日が経ち、その出来事を忘れかけている者も多くなったが、それでもゼルートという名が再び広がったことでその事件が再び広がる。
「なんかゼルートを自分に仕えて欲しいと思ってたり、指名依頼を出そうかと考えてる人もいるね」
「げっ、どっちも遠慮したい。二つ目は報酬内容によっては受けても良いけど、一つ目はマジで勘弁だ。誰かに仕えるなんて俺の性に合わない」
「それには同感ね。ゼルートが誰かに仕える未来なんて全く想像出来ないわ」
「ゼルートさんが誰かに仕える事など一時的な仕事以外ではあり得ないだろう。寧ろ将来は誰かを従えている立場になっているかもしれない」
「いや、確かに誰かに仕えるなんてまっぴら御免だけど、誰かを従えるつもりも無いから」
仲間達と一緒に冒険して美味い飯を食べて息抜きをしながら冒険者としての人生を楽しむ。
それが今のゼルートの生き甲斐なので、誰かを従える気も無く誰かを従える立場に出世したいとも考えていない。
(誰かを従えるつもりなんて無い。それは本心なんでしょうけど……それはどうなるか分からないわよ、ゼルート)
ゼルートの実力をまだまだ信用していない者も多いが、敵の戦力を正確に把握出来る者ならばゼルートが天才などちんけな言葉で片付けられる実力では無いと解かる。
だが、その戦力を欲する貴族や冒険者クランのリーダー達。果ては国に仕える騎士団するゼルートに興味を持つ者がいる。
そんな状況をゼルートがどう解決するのか。
それを考えたアレナの中には・・・・・・大勢の者を従えるゼルートの姿が浮かんでいた。
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