少年期[524]そんな存在がいる

フォレストリザードを無事に捕獲し、他の冒険者達が狙っていたバトルホースを殺さずに済み、用事が済んだゼルート達はのんびりとゴージャルへと戻る。


そして中に入る前からゼルート達はかなり目立っており、門を通る時にも何故フォレストリザードを檻の中に入れているのかを門兵から訊かれた。


「やっぱり結構目立つな」


「そりゃそうでしょうね。ある程度腕が立つ冒険者達ならリザード系の魔物はそこまで珍しく無いでしょうけど、一般市民からすればこんな近くでリザード系の様なそこそこ大きい魔物を見る機会はまず無いわよ」


アレナの言う事は最もであり、そもそも街の中で生活する一般市民が生の魔物を見る機会など殆ど無い。

貴族や商人、冒険者などは先日ゼルート達が通っていたカジノに行けば生の魔物が観られるが、一般市民がそんな場所に入れる程の金を持っている訳が無い。


「そうか……確かにそれもそうだな」


「そういう事よ。ゼルートだって初めて魔物に出会った時は驚いたでしょ」


「それはまぁ……うん、驚くな」


ブラッドオーガのブラッソと雷竜帝であるラガールに出会った時は中々に衝撃的だったことを思い出す。


(いや、ゲイルと出会った時も中々に衝撃的だったか。だって普通のリザードマンとは肌の色が違ったし喋るし……それはブラッソも同じか)


なにはともあれ、一般市民がフォレストリザードを見て驚いているのには納得したゼルート。

そして三人はギルドに到着し、アレナはフォレストリザードが急に起きても対処出来るように外で待ち、ゼルートとラームが中へと入って依頼達成をギルドに伝える。


「……なんか、朝の時より視線が集まってない?」


「俺とラームだけだからな。ぶっちゃけ二人共見た目は子供……ラームに至っては装備らしい装備をしてないからな」


アレナやルウナの様な美人、美少女やゲイルの様な強面イケメンが一緒にれば視線は集まるが、ゼルートとラームの様な実力はプロや一級と言える程のものを揃えているが見た目が子供な二人がギルドにいるのも珍しい。


二人は朝の依頼受理の時に対応してくれた人の元へと向かい、依頼達成を報告する。


「すみません、ちょっといいですか」


「あ、はい。捕獲依頼に関して何か質問ですか?」


受付嬢はゼルート達が既に依頼を達成してるとは思っておらず、捕獲依頼に関して何か質問があるのかと思っていた。

それもその筈であり、そもそも捕獲依頼の魔物の目撃情報があったとしても、一日で捕まえる事などほぼ不可能だ。


ランクBやAの冒険者であればゼルート達ような移動速度で魔物を探すことが出来なく無いが、それでも大きな怪我や殺してはならないという戦いにくさから、運が重ならないと不可能に近い。


ただ、そんな常識を覆す存在が受付嬢の目の前に存在する。


「いや、特に質問は無いです。ただ、フォレストリザードの捕獲が終わったんで見て欲しいと思ったので、依頼完了を行ってくれませんか」


「・・・・・・へ?」


受付嬢の口からは本来口に出さない様な間抜けな声が出てしまった。

しかしそれに気付かず、数秒の間受付嬢の思考は停止した。


「え、えっと……そ、それは本当ですか? 捕獲依頼には基本的に数日は必ず掛かるのですが。それに、ゼルートさん達が捕獲依頼を受けた魔物はフォレストリザードですよね? それに依頼を受けたのは今日の昼手前ですし……も、もう一度確認しますが嘘では無いのですよね??」


「はい、嘘じゃ無いですよ。確かにフォレストリザードがおそらく成長していたこともあって、普通のフォレストリザードと比べれば強かったと思います。でも、俺とアレナとラームがいればフォレストリザードぐらいの捕獲依頼は問題無いですよ」


「とりあえず外に用意してるんだし、見て貰おうよ」


「そうだな。すいません、手間だとは思うんですけど一回確認して貰っても良いですか」


「か、かしこまりました」


受付嬢はカウンターから出て半信半疑な気持ちを持ちながらゼルートとラームの後を歩く。

そして扉を開け、外には・・・・・・ゼルートの言葉通り、檻の中に入ったフォレストリザードが無傷の状態で寝ていた。


「・・・・・・ほ、本当だ」


それが頭がパニックになっている受付嬢が振り絞って出せた言葉だった。

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