少年期[521]中々減らない魔力
「というか……あのフォレストリザード、少し体が大きい気がするわ」
「普通の個体と比べてって事か?」
「そうよ。リザード系の魔物は基本的に体が大きいけど、このフォレストリザードは普通のと比べて一回り大きい気がする」
「へぇ~……もしかしたら成長した個体なのか、それとも成長中の個体なのか」
フォレストリザードからの攻撃を躱し、防ぎながらゼルート達は目の前のフォレストリザードに対する認識を少々変える。
成長した魔物と言われる個体は通常はその魔物が覚えないスキルなどを扱う個体であり、通常の個体と比べて素の身体能力が強化されている事も多い。
(バカスカと魔法を連発してるけど、中々魔力切れにならないんだな。魔物の中では魔力量が低い方って訳じゃ無いのは知ってるけど……にしてもここまで魔法を連発してなんとも疲れを一切見せないとか、もしかしたらそこら辺も成長している影響なのか?)
魔力切れになれば捕獲するのも上手くいけると考えていたゼルートとしては少々厄介な問題。
するとラームが周囲の変化に気が付く。
「……なんか、周りの木々から生命力が少しずつ消えていってる気がする」
「そうなのか?」
「うん、多分だけど……周囲の木々から生命力をほんの少しずつ吸収して、魔力に変換してるんじゃないかな」
「なるほどな。トレントの類と似たような事をしてるのか」
木の魔物であるトレントは周囲に存在する木々から生命力を吸い取ることで自身の体を再生することが出来る。
ただし、魔石以外にも魔力を司る中核が存在し、そこを潰されると魔力のコントロールを失って再生することが不可能になる。
それはどの魔物にも存在するのだが、よほど感知能力に優れた者でなければそれを見つけるのは不可能に近い。
何も知らない者は魔物ごとに魔力を操作する中核の位置が同じだから簡単に壊せるのではと思うが、魔石と違って中核は個体ごとによって存在する位置が異なる。
「魔力が切れれば捕まえやすくなると思っていたんだが……中核を潰したら依頼主から文句が出そうだし、作戦変更だな」
「どうやって捕まえるの?」
「単純に動けなくするのが一番手っ取り早い。だからまずは二人でそれとなく注意を引いてくれ」
「「了解」」
ゼルートから指示を受けた二人はアレナが前衛でラームが後衛と直ぐに役割を分断し、フォレストリザードの意識を自分達に集中する。
そしてアレナはフォレストリザードが無視できるものでは無いが、防御出来ないことは無いぐらいの威力で攻撃を繰り返し、フォレストリザードの脚を止める。
接近戦は難しいと考えたフォレストリザードは木の攻撃魔法に選択肢を切り替えようとするが、それもことごとくラームに潰されてしまう。
だがアレナ達には完全に攻める気が無く、どう対応すれば良いのか解らず、フォレストリザードの動きが一瞬止まってしまう。
「よし、ロックバインド」
動きが止まったその一瞬を狙い、ゼルートはフォレストリザードの四肢と胴体を岩の鎖で縛り付ける。
だが動きが止まってもそこはドラゴン系統の魔物であり、力づくで崩せないことも無い。
しかしそこからゼルートは更に魔法を重ねる。
「グラビティ」
四肢と胴を縛る鎖に重さが重ねられ、更に身動きが取れなくなる。
「ッ!!!!」
「どうよ、中々キツイコンボでしょ」
岩の鎖は地面にめり込むほど重くなっており、フォレストリザードが身体強化を使っているのにも拘わらず、一向に千切れる気配は無い。
「鎖の強度が元々高かったのもあるのでしょうけど、更に重力魔法が加わって……常人なら死んでしまうでしょう」
「かもな。でも相手はフォレストリザードだ。やり過ぎってことは無いだろ」
「それもそうね。それで……ここからどうするの?」
「雷魔法で意識を失わせようと思ったんだけど……それだとうっかり殺してしまいそうな気がするんだよな」
雷魔法は属性魔法の中で相手の行動を不能にさせる事に向いているが、その分殺傷力も高い。
なのでゼルートは別の方法で捉えることにする。
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