少年期[515]お互いに餌として見ているから
SIDE ルウナ
「・・・・・・普通のギャンブルスペースも凄かったが、ここは更に異次元だな」
「同感ですね。というか、よく一つの建物の中にこれだけのスペースを確保出来ますね」
「外見だけでも相当な広さだと分かっていたが、中は更に広いものだ」
国一番のカジノの名は伊達では無く、カジノの中には空間魔法が施されており、外から見るよりも中は広くなっている。
そしてゼルート達が賭けている闘技場とは別の場所でルウナ達はその凄さに驚いていた。
魔物を使ったギャンブルは飛竜、ワイバーンだけでは無く四足歩行の生物のレースも行われており、その広さは尋常では無い。
だが、それを見てルウナはつい反射的にゲイルとラルに尋ねてしまった。
「二人は・・・・・・この光景を見てなんとも思わないのか?」
それを訊いてしまった瞬間、ルウナは訊いてはいけない質問だと、失言だったと思ってやっぱり答えなくて良いと言おうとした。
だがそれよりも先に二人は答えた。
「自分は全くなんとも思いませんよ。魔物だって人を食料として見ている。それに対して人も魔物を食料として見ている。だから……そういった世界で生きている限り、捕らえられてどういう扱いをされても……文句は言えない」
「ゲイルさんと同意見ですね。野生は弱肉強食の世界です。実力が無い冒険者や兵士が魔物に食べられることだってよくあること。それに……ここはワイバーンだけを捕まえてギャンブルレース用に使ってますが、上位のドラゴンを捕まえてレースに出そうとすれば、まずその時点でそれ相応の被害出るでしょう」
ワイバーン以上のドラゴンともなれば絶対にランクはB以上になり、更に討伐では無く捕獲となれば必要な人数は多くなり、下手に強力な技を放てなくなる。
故に国が保有するドラゴンナイトもカジノが用意しているワイバーン達も卵から孵して育てるケースが殆どになる。
「そして卵を奪って育てようとすれば……間違いなく母親の逆鱗に触れる筈です。そうなればどうなるか・・・・・・欲にまみれた人間でもそれぐらいは理解出来る筈です」
ドラゴンの逆鱗に触れてはならない。
戦う者達は先輩たちからよく教えられる言葉だが、それはドラゴンに限った話では無い。
全ての魔物に、魔物にだけでは無く人にだって逆鱗は存在する。
戦争中に親友が殺されたと知った人物がその者の実力からは考えられない程の力で一騎当千の功績を上げたという実はすら残っている。
「暴力の化身と呼ばれる私達の逆鱗に触れれば……流石にこの街も無傷では済まないでしょう」
「そ、そうか……まっ、人は欲深いからそういったドラゴンに潰されている者もいそうだな」
「でしょうな……さて、暗い話しは一旦置いといてさっそくギャンブルをしましょう」
ゲイルの言葉に二人はいつもの表情に戻り、早速レースギャンブルを始める。
四足歩行の魔物のレースや戦いにワイバーンの飛行レース。
三人は自分達の運が分散するのは良くないと思い、以前と同じくバラバラに分かれてギャンブルを行う。
周囲の客達は通常のスペースで行われている遊び人達よりも熱気が激しく、レースの結果次第で怒号が飛び交う。
その熱気に三人とも当てられ、何も知らない遊び人達が運を奪って金を掛ける。
普通のギャンブルとは違い、レースを行う為の準備費や魔物の維持費等でかなり金が掛かるので当然一回に賭ける金の最低金額の値段が普通のギャンブルと比べて跳ね上がる。
しかし三人には今日の朝、昨日の一日で稼いだ金がある。
なので賭けに必要な金は十分に揃っている。
そして約三時間ほど、三人は魔物のレースや戦い系のギャンブルに没頭し……稼ぎに稼ぎまくった。
当然その勝率は九十パーセント以上を誇る。
だが、そんな事を周囲の遊び人は熱狂し過ぎて解かっておらず、前日の様に騒ぎが起きることも無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます