少年期[516]落ちる金が多い
一日目のギャンブルとは違い、ドキドキ感を得られるだけでは無く、それを消し去るようなテンションが得られるギャンブルを一日中行ったゼルート達。
闘技場では三人とも話し合って同じ人に賭け、レース系のギャンブルでは全員違うエリアを回り続けて賭け続けた。
オッズがそこまで高い訳では無く、闘技場では殆ど増えずに帰ってくる場合もある。
しかしそれでも三人は順調に勝ち続ける。
ここぞという時には大金を賭け、オッズが低くても一般人にとっては大金と言える金額が返ってくる。
そして六人は夕方ごろに休憩という事で、カジノの中に存在する小さなレストランに一旦集まった。
「はぁーーーーッ、普通のギャンブルと違ってテンションが上がるな」
「ゼルートの言う通りだ。普通のギャンブルでは勝負が終わった後に声を出すが、闘技場やレースではギャンブルの最中であっても思いっきり叫びながら賭けたプレイヤーを応援出来る。あれは中々味わえない感覚だった」
「ルウナさんの言う通りです。より深く人がギャンブルにハマってしまう理由が解りました」
ルウナとゲイルは普通のギャンブルに対してある程度の楽しさを覚えたが、闘技場やレース系のギャンブルにはそれ以上の楽しさがあると深く理解出来た。
(前世では学生だったから言ったことが無いけど、競馬や競輪にボートレースとかを楽しんでいる人と同じ感覚だろうな)
だが、ゼルート達からすれば賭けて返ってくる金を得る楽しさは二の次であり、完全に同じかと言えば少々微妙なところ。
「ワイバーンやモンスターのレースは初めて見たけど、あれは確かに興奮せざるを得ないわね。でも……闘技場の方のギャンブルはあれだけど、レース系の方は随分と儲かってそうね」
「だな。闘技場と違ってどっちが勝つか負けるかじゃ無くて、レース系は複数いる中のどれが勝つかだから当然落ちる賭け金の方が多い」
チップを賭ける最低金額も決まっており、レース系のギャンブルは通常のギャンブルと比べて客が落とす金の量も多い。
「まっ、何人か暴れだす客がいたけどな」
「いたねそんな人。もしかしたら十回ぐらい賭けて全部外れたのかもしれないよ」
「かもな。確かに十回とも全部外れたら……それはかなりショックだろうな」
レースによって出場する魔物の数は多少変わるが、最低でも五体はいる。
なので五分の四の確率で外してしまう。
日本の競馬の様に複数の賭け方があるわけでは無いので、一点賭けしか方法が無い。
それ故に当たる確率は五分の一。
それを高いと思うか低いと思うかは個人の感覚によるが、ゼルート達からすればそこそこ高いという感覚だった。
そもそも大半の客はレース系のギャンブルで生活費を賭けようとか、今後の活動の必要な金を使ってしまう様な間抜けでは無い。
しかしそうでない遊び人……ギャンブル中毒者は一定数存在する。
確かに賭け金の最低金額が一般的なギャンブルと比べて高いので当たれば返ってくる金額も多い。
ただ……当たる確率は五分の一かそれ以下なので、当然外れる確率の方が高い。
何度もここに通っている遊び人なら出場する魔物の特徴などを把握し、そこから勝率が高い魔物に賭けられるかもしれない。
だが、完全にドハマりしてしまっている者の頭にはそういった情報が殆ど入っていない。
「まっ、客の中に紛れていた従業員の人にそ速攻で捕まったけどな」
「ギャンブルに良くない感じでハマっちゃったのは本人の責任なのにね」
「ラームの言う事は正しいけど、人は嫌なことや信じたくない事実を自分では無く他人のせいにしたくなるものなのよ」
アレナの言葉にレストラン内にいたゼルート達の話が聞こえていた客達は全員ウンウンと頷く。
その全員が遊び人であり、過去に何度もギャンブルに負けた原因は自分では無く他に原因があると考えた事がる者達だった。
「でもゼルート、オークションの時間までずっとカジノに通うのか? 別にこういった休暇? の様な期間の間はのんびりするのは悪く無いと思うが」
「あ~~~~……確かにそうだな。あんまりカジノばっかりに通うのもよろしく無い、か」
まだ開催予定のオークションまで三日の時間があるので、ゼルートは明日一日は街から出てギルドの依頼をこなそうかと考える。
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